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<<   作成日時 : 2012/07/14 14:00   >>

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ある日、地球に大量の円盤がやって来た。
もしや侵略者だろうか、と人々が震えていると、円盤から穏やかな声がした。

「我々は、サザール星の者である。危害を加えるつもりはない。どうか安心してもらいたい」

危害が加えられることはないようだ、と安心する一方、また人々の胸に不安がよぎった。
ならば彼らは何のために、はるばる地球まで来たのだろう。

「そ、それは、今は殺さないけれどあんた達の星に連れ帰って死ぬまでこき使うとか、何かの実験に使うっていう意味じゃないのか!?」

誰かが叫ぶ。
たちまち人々の間に動揺が広がった。
確かに、サザール星人の言葉はそう取れないこともない。
そう思うと、今にあの円盤から光が差してきて、人間を吸い上げていきそうだ。

すると、また円盤から穏やかな声がした。

「そんな野蛮なことはしない。差別や暴力に苦しむことのない、自然でストレスに悩まされることのない暮らしを約束する」

差別も暴力もなく、ストレスに悩まされずに済む暮らし。
それは人類が長年求め続け、あこがれを抱くものである。
異星人の保護下に入ることでそれが叶うなら……と、何人かのサラリーマンが思い始めた。

「我々は、あなた方を保護するために来たのだ。今後、この惑星であなた方が生きていくのは困難を極めるだろう。捨て置くことはできない。どうか我々の保護を受けて欲しい」

円盤から、柔らかな光が地上に注いだ。
その光の当たった犬や猫が、円盤に吸い上げられていく。
宇宙人の円盤は、移動しながら人間以外のあらゆる生物を吸い上げていった。
それは犬や猫だけではく、小さな羽虫、草木にも至った。

次は人間だろうかと思われたその時、円盤からの光が消えた。
その上、円盤が次々と空高く舞い上がっていくではないか。

「おい、俺達はどうなるんだ」
「人間を忘れてるわよ!」

人々は大声で叫び、円盤を呼び戻そうとした。
するとまた、声がした。

「人間を保護する気はない。我々は、この惑星の人間の文明において、今後いっそう迫害されるだろう彼らを保護するために来たのだ」
「そ、そんな。動物を保護しようとがんばっている人もいるのに」
「我々はもう何百年もの間、成り行きを見守ってきた。だが、その結果わかったことは、人間は他種族を迫害するだけでなく、同族間でも争いをするということだけだ。これ以上良い結果は期待できない」

円盤はその言葉を残し、あっという間に空の彼方へ消えてしまった。
後には、不気味なほどの静けさが残った。
風に枝が揺れる音も、動物の鳴き声も、虫の羽音も――人間以外の生物が奏でる音の一切は、地球から失われたのだ。

あ然と空を見上げるばかりの人々の輪から、さっと一人が抜け出した。
そいつは近くの店に飛び込むと、食料を両手に抱えてどこかへ走り去った。
それを見た別の誰かが、同じように店に入り、商品を持ち出す。

「おい何をするんだ、やめろ……うわあ!」

止めようとする店員を突き飛ばし、殴りつけ――その人数は、しだいしだいに増えていった。

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