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zoom RSS N氏の物語5

<<   作成日時 : 2012/05/02 23:14   >>

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フレッドの提案で、俺達はあの怪物どもの後を追うことにした。
戻るのが遅くなったとしても、食料を持って帰ればそんなにひどい目にはあわせないだろう、ってのがフレッドの意見だった。
もし文句を言って来たなら、「遠くまで行かないと手に入らなくなってきた」ってことにしよう、って俺達は口裏を合わせた。

怪物どもが通った跡は、すぐにわかった。
かき分けられた草の上に、何やらねっとりした液体がついていたからな。
おまけに生臭かったが、それはそんなに気にならなかった。
できるだけ足音を出さないように歩いていると、先頭に立っていたフレッドが、不意に立ち止まった。

「どうしたんだ?」

ひそひ声で尋ねてみると、フレッドがゆっくりひざをつきながら、手を何度か下げた。
かがめ、ってことだろうな。
俺は言われたとおり草の中にかがむと、もう一度フレッドに「どうしたんだ?」と言った。

「できるだけ草から頭を出さないようにして、見てみろ」

そっと顔を出して見て……驚いたよ。
少し先のところには巨大な岩山がそびえていたんだが、その岩山の前に、古代遺跡っていう表現がぴったりくるような、石でできた門があったんだ。
よく見ればその門の向こうの岩肌には洞窟があって、入り口には怪物どものうちの二匹が見張りよろしく立っていた。
それを見て、ピンと来たよ。ここは怪物どもの住みかだってな。

その日はそれで引き返した。
策略を使う時ってのは、何事も慎重に、確実に進めなきゃいけないからな。
予測通り、拳銃を持った男には時間がかかった事をなじられたけど、口裏を合わせておいたから言い逃れができた。

次の日から俺とフレッドは、岩山の門前まで行って、怪物の観察をした。
どのぐらい奴らの感覚が優れているかってことを、探らなきゃならないからな。
毎日こっそり石を投げて、どんな反応をするかを見ていたんだ。
昼間は食料集めの振りをして、夜は皆が寝た後、交代で見に行ったよ。
見張りは昼でも夜でも、いつも二匹だけだった。
同じ二匹がずっと立っているのか、別の奴と入れ替わっているのかはわからなかったが。

そうして観察しているうちにわかったんだが、奴らは自分の体に石が当たらないと反応しなかった。
おまけに視界も狭いようで、投げられた石が遠くに転がっていくと、もうわからない様子だった。
ただし、奴らは感度と目こそ悪いが、ひそひそ声よりほんの少しでも大きい声だと、瞬時に聞き取れるらしくてな。
俺達がちょっと大きい声で話すたび、手に持った槍を投げつけてきたよ。
それが顔や体をかすめて地面に刺さるから、本当に恐ろしくてたまらなかった。
どうして刺さらなかったのかって? そりゃ投げる動きを見せた途端に口をつぐんでいたからな。
馬鹿みたいにしゃべり続けていたら、まともに刺さっていただろう。
あいつらは槍を投げつけただけで満足なのか、確認しに来なかった。

さて、問題は、どうすれば怪物どもをこっちの思惑通りに動かせるか、だ。
拳銃を持った男を移動させるのは、無理だろう。
だから怪物どもをどうにかしておびき出して、拳銃を持った男の元へ連れて行かなきゃいけない。
その上で、そいつが敵だと思わせなきゃいけない。
俺達は、怪物に石を投げつけた後、大声を上げながらねぐらまで走るっていう作戦を立てた。
そうすれば、あいつは拳銃を持っているから、きっと撃つ。
それで怪物どもは拳銃を持った男のことを敵とみなすだろう、ってな。
作戦を決行するのは、昼間って決まった。夜じゃあ暗くて、逃げるのに不利だからだ。
それに、食料調達の振りをしてねぐらを離れられるからな。

ところが作戦決行っていう時に、ガサガサ後ろから草をかき分けてくる音がしたんだ。
俺達ははじかれたように振り返ったよ。

「お前達、こんな所で何してる? 食料集めに行ったんじゃなかったのか」

そこにいたのは、ロバートだったよ。
突っ立って俺達のことを見下ろし、声をひそめもせず、普段どおりにしゃべっている。
……どうなるか、わかるだろう?
次の瞬間にはロバートの胸を、怪物の槍が貫いていた!
ロバートは目を見開いて、口をぱくぱくさせて……どさっと倒れた。
きっと、自分に何が起きたかなんて理解する暇もなかっただろう。

「ロバート!」

俺は思わず叫んだ。
その途端、俺の左肩をごりっと勢い良くこすっていくものがあった。
続いて、どすっ、と目の前の地面に槍が突き刺さった。
怪物の投げた槍が、いつもより深く、俺の左肩をかすめたんだ。
そう自覚したら、槍のかすった所が熱くなって、じくじく痛みだした。

「……おい」

フレッドのかすれ声が聞こえて、俺はもう一度、岩山の方、門の方を見た。
すると、見張りをしていた二匹が、こっちににじり寄って来るところだった。
なんで今日に限って! 俺は心の中で叫んだよ。

一応、ことは初めに計画した通りに進んでいたよ。
このまま大声を上げてねぐらまで逃げ帰れば、計画は完了だろう。
足元にロバートの死体が転がっていさえしなきゃな!
俺もフレッドも、ロバートが目の前で死んだことですっかり気が動転して、体が動かなかったんだ。

と、二匹がそろって足を止めた。
もしかして、このまま戻ってくれるかもしれないって思ったが、甘かった。
二匹はぐるるるるるあああっ、と長く長くほえたんだ。
いつものうなり声とは明らかに違う声だった。
そうしたら、洞窟の奥からぞろぞろと、怪物どもが出てきやがった。
さっきの声は、仲間を呼ぶためのものだったんだ。

「うわあああああああっっ!!」

フレッドが叫んだのか、俺が叫んだのか、それとも二人して叫んだのかはわからない。
だが、その叫びで、俺達はやっと体が動くようになった。
俺達は叫びながら走った。
計画のことなんて、もう頭の片隅にすら無かった。

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