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zoom RSS 「愛してるよ、マリー」 1

<<   作成日時 : 2012/02/25 19:57   >>

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昔、とある小さな町に若い娘と大工の見習いをしている青年がいた。
若い娘はマリー、青年はジョンという名前である。
二人は幼い頃から仲が良く、年頃になった今は恋人という関係になっていた。
ジョンの方は数年前に両親を亡くしているせいか、マリーを大切に扱い、深い愛情を注いだ。
そろそろ結婚か、と尋ねられるたび「見習いのままじゃ貧乏させてしまう。一人前になってからだ」ときまじめに答えるほどに。

「私のこと、真剣に考えてくれてるんだわ」

マリー青年を信じ、いつか来る結婚の日を待っていた。

そんな二人の生活は、戦争で一変した。
ジョンが徴兵されることになったのである。

「絶対に生きて帰ってくる。だから、待っていてくれ」

行かないでくれと引き止めて泣くマリーに、ジョンはそう告げて出発した。

「お願いです。神さま、どうかあの人をお守りください」

マリーはジョンが無事に帰ってくるよう、来る日も来る日も祈り続けた。

戦争が終わったのは、二年後のことだった。
勝ったのはマリーとジョンのいる国の方で、気を良くした王様は国民に恩赦をほどこした。
軽微な罪の囚人は釈放され、貧しい者達には食料も配られた。
国民の誰もが戦勝を祝い、喜ぶ中、マリーは不安で押しつぶされそうになっていた。
何日経とうと、ジョンがいっこうに帰ってこないためである。

すぐには帰れない者は、無事を知らせる手紙をよこしたりもしていた。
それなのに、マリーの元には何一つ届かないのだ。
帰らない上に、何の連絡もない。これで不安がるなという方が無理な話である。

「あの人は、ジョンは一体どうしたの。まさか、死んでしまったの」
「落ち着きなさい。きっと生きてるよ、何か事情があるんだよ」
「生きてるなら、どうして帰ってこないの。手紙の一つもくれないの。まさか、私のことなんて、どうでも良くなってしまったの?」

不安とおそれにさいなまれ、マリーは泣き暮らした。
帰ってきた者と、それを出迎える者の姿を見るにつけ、胸が痛んでまた涙が頬を伝った。
そうして待って、待って、待ち続けて。
終戦から二年と半年後、マリーのもとへ一人の人物がやって来た。
燕尾服を着た白髪の老人で、彼はジョンに雇われた執事であることを告げた。

「しつ……じ?」
「はい。旦那様は戦場での活躍を国王陛下に認められまして、郊外に屋敷を賜り、一生涯の年金を約束されたのでございます」

聞けば、敵に捕らわれ拷問にかけられながらも情報を吐かなかったことで、味方に損害が出ず、それが勝利につながったのだという。
しかしそれが元で大きな怪我を負い、最近になってようやく、口をきけるまでに回復したらしい。

マリーはそれを聞いて、真っ青になった。

「ジョンは、そんなに大きな怪我をしているの!?」

愛する人が生きていたことは喜ばしいが、大怪我をしているのなら心配せずにいられない。
今すぐに会いたい。たとえ誰に反対されようとも、どんなに遠い場所にいたとしても。
何しろ二年半も会えなかったのだ。これ以上待たされるのは、もう耐えられない。
その思いが、マリーの中で爆発した。

「お願いです、ジョンに会わせて下さい! 彼はどこにいるんですか!?」
「お、落ち着いて下さい。私は旦那様に、あなたを屋敷までお連れするよう言いつけられて来たのですよ」
「なら早く行きましょう! ああ、ジョン……」

マリーは両親への報告もそこそこに、執事に連れられてすぐさま彼の屋敷へと向かった。

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