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zoom RSS 姉弟と一羽の鳥

<<   作成日時 : 2012/01/21 22:04   >>

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昔、あるところに姉と弟がいた。
二人の両親は借金を返すため、遠い街へ出稼ぎに行った。
しかし、それ以来音沙汰がなく、今となってはどうしているのかわからなかった。
きっと生きている、帰ってくると信じて、二人はぼろぼろの家で身を寄せ合うようにして暮らしていた。

ある時、一人の男がやって来た。
そいつは「お前達の親の借金なんだから、子供のお前達が払え」と言い、家の中にわずかに残っていた金や、売れそうな物を片っ端から持って行ってしまった。
男はそれでもまだ足りないと言い、二人を金持ちの屋敷で働かせ、もらえる給金を根こそぎ持っていった。
朝から晩までこき使わる上に、食事は粗末、寝るところは馬小屋のすみという扱いである。

「お姉ちゃん。お父さんとお母さんは、ぼくらのことなんて、どうでも良くなったの?」
「そんなはずないわ。いつかきっと、帰ってきてくれる」

ひどい暮らしに泣きながらも、二人は両親のことを信じて耐えた。

そんな暮らしが一年も続いた時、姉は庭掃除の最中、草のかげに一羽の鳥を見つけた。
泥にまみれたその鳥は、お腹を空かせて弱った様子だった。

「まあ、かわいそうに」
「お姉ちゃん、助けてあげようよ」

二人は鳥を洗ってやり、わずかな自分達の食べ物を分けてやった。
洗ってやると、鳥は見違えるほど美しい姿に変わった。
金色に近い黄色い体の、ほっそりした鳥である。

「きれいな鳥だね」
「きっと、誰かが大切に飼っていたのよ」

それからいく日か経ち、鳥はすっかり元気になった。

「そろそろ、飛び立てそうね」
「じゃあ、庭に出してあげようよ」

などと話していると、鳥は体を起こし、翼をふわりと広げた。

「ありがとう、親切な子供達。私は空の神。悪魔との戦いで、疲れて動けなくなっていたんだよ」

鳥がしゃべったことも驚きだが、その内容もずっと驚くべきことである。
まさか、あの鳥が神様だったなどと。
二人は目を丸くするばかりだった。

「さあ、お礼に願い事を一つ、かなえてあげよう。何でも言ってごらん」

二人はおずおずと、お互いの顔を見合わせた。
かなえてほしい願い事といえば、一つ。
両親のことだ。

「あの、それじゃあ、私達のお父さんとお母さんを……」

そこへ、あの男が現れた。

「なんだ、お前ら。鳥なんざ飼う金があるんだったら、こっちに回しやがれ」

姉はいつものように、弟を後ろにかばった。
鳥が男を静かに見すえる。

「何という下品で粗野な輩だ。早々に立ち去れ」
「鳥さん、私達の願い事はいいですから、この人の願い事をかなえてください」

姉ぶるぶる震えながら、鳥にそう言った。
この男を差し置いて願い事を言ったら、きっと後でひどい目にあわされてしまう。
そう思ったのだ。

「何を言っている。私はお前達が親切だったから礼をしたいのだ。この男は関係ない」
「いいんです。ですから、どうか」
「何? 願い事だ? がはは、こいつはいい」

男は鳥をつかむと、馬小屋を出て行った。

「お姉ちゃん! 何であんな奴にゆずっちゃうんだ、あいつなんか死んじゃえばいいのに!」
「お願い、わかって。こうしないと、きっと私達、ただじゃすまないわ」

二人は抱き合い、みじめさと悔しさからすすり泣いた。
さて、男は馬小屋を出ると、さっそく願い事をかなえてもらおうとした。

「さあ。俺の願い事をかなえてもらおうか。 金だ! 一生かかっても使いきれない金を出せ!」
「いいだろう。使い切れぬほどの金貨を受け取るがいい」

鳥がおごそかな声で告げると、空から金貨がポロリ、ポロリ、と落ちてきた。

「おお、おお、こいつはすごい!」

しだいしだいに、その金貨の量は増えていく。
男は笑いが止まらなくなった。

そして。

唐突に、大量の金貨が滝のように降り注ぎ、男を押しつぶした。
大量の金貨は派手な音を立て、屋敷にいた人々の注意を集めた。

「な、何事だっ?」

音を聞きつけた屋敷の人々が、たちまち庭に集まりだした。
人々の前で、鳥は金色の翼を持つ人の姿に変わった。

「この金貨は、馬小屋にいるあわれな幼い姉弟のためのものである」
「借金とやらをこれで払い、残りは二人に与えるように」

そう言うと、人の姿となった鳥は金色の翼をはためかせ、空へと上って行った。

こうして二人は金貨を持って、家に帰れることになった。
家に帰ると、長いこと音沙汰のなかった両親がいて、たいそう驚いて出迎えた。

「ああ、お前達。今までどこにいたんだい」
「お父さん、お母さん。私達、借金を代わりに払えって、働かされていたんです」
「何だって! あの男、病気が治るまでは待ってやるなんて言っていたくせに!」

両親は出稼ぎ先でそろって流行り病にかかり、起き上がることもできなかったという。
ようやく手紙を出せるようになった頃には、子供達は金持ちのところで働かされていたのだ。

「お家にあったお金と、色んなものを持っていかれたんだ。ぼく、こわくて取り返せなかったの。ごめんなさい」
「そんな事はいいんだよ。ごめんね、二人っきりで、今までどんなに心細かったか」

母親と父親はかわるがわる二人を抱きしめ、涙を流した。
こうして家族は再び、四人で暮らすことができたという。

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