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昔、あるところに姉と弟がいた。 二人の両親は借金を返すため、遠い街へ出稼ぎに行った。 しかし、それ以来音沙汰がなく、今となってはどうしているのかわからなかった。 きっと生きている、帰ってくると信じて、二人はぼろぼろの家で身を寄せ合うようにして暮らしていた。 ある時、一人の男がやって来た。 そいつは「お前達の親の借金なんだから、子供のお前達が払え」と言い、家の中にわずかに残っていた金や、売れそうな物を片っ端から持って行ってしまった。 男はそれでもまだ足りないと言い、二人を金持ちの屋敷で働かせ、もらえる給金を根こそぎ持っていった。 朝から晩までこき使わる上に、食事は粗末、寝るところは馬小屋のすみという扱いである。 「お姉ちゃん。お父さんとお母さんは、ぼくらのことなんて、どうでも良くなったの?」 「そんなはずないわ。いつかきっと、帰ってきてくれる」 ひどい暮らしに泣きながらも、二人は両親のことを信じて耐えた。 そんな暮らしが一年も続いた時、姉は庭掃除の最中、草のかげに一羽の鳥を見つけた。 泥にまみれたその鳥は、お腹を空かせて弱った様子だった。 「まあ、かわいそうに」 「お姉ちゃん、助けてあげようよ」 二人は鳥を洗ってやり、わずかな自分達の食べ物を分けてやった。 洗ってやると、鳥は見違えるほど美しい姿に変わった。 金色に近い黄色い体の、ほっそりした鳥である。 「きれいな鳥だね」 「きっと、誰かが大切に飼っていたのよ」 それからいく日か経ち、鳥はすっかり元気になった。 「そろそろ、飛び立てそうね」 「じゃあ、庭に出してあげようよ」 などと話していると、鳥は体を起こし、翼をふわりと広げた。 「ありがとう、親切な子供達。私は空の神。悪魔との戦いで、疲れて動けなくなっていたんだよ」 鳥がしゃべったことも驚きだが、その内容もずっと驚くべきことである。 まさか、あの鳥が神様だったなどと。 二人は目を丸くするばかりだった。 「さあ、お礼に願い事を一つ、かなえてあげよう。何でも言ってごらん」 二人はおずおずと、お互いの顔を見合わせた。 かなえてほしい願い事といえば、一つ。 両親のことだ。 「あの、それじゃあ、私達のお父さんとお母さんを……」 そこへ、あの男が現れた。 「なんだ、お前ら。鳥なんざ飼う金があるんだったら、こっちに回しやがれ」 姉はいつものように、弟を後ろにかばった。 鳥が男を静かに見すえる。 「何という下品で粗野な輩だ。早々に立ち去れ」 「鳥さん、私達の願い事はいいですから、この人の願い事をかなえてください」 姉ぶるぶる震えながら、鳥にそう言った。 この男を差し置いて願い事を言ったら、きっと後でひどい目にあわされてしまう。 そう思ったのだ。 「何を言っている。私はお前達が親切だったから礼をしたいのだ。この男は関係ない」 「いいんです。ですから、どうか」 「何? 願い事だ? がはは、こいつはいい」 男は鳥をつかむと、馬小屋を出て行った。 「お姉ちゃん! 何であんな奴にゆずっちゃうんだ、あいつなんか死んじゃえばいいのに!」 「お願い、わかって。こうしないと、きっと私達、ただじゃすまないわ」 二人は抱き合い、みじめさと悔しさからすすり泣いた。 さて、男は馬小屋を出ると、さっそく願い事をかなえてもらおうとした。 「さあ。俺の願い事をかなえてもらおうか。 金だ! 一生かかっても使いきれない金を出せ!」 「いいだろう。使い切れぬほどの金貨を受け取るがいい」 鳥がおごそかな声で告げると、空から金貨がポロリ、ポロリ、と落ちてきた。 「おお、おお、こいつはすごい!」 しだいしだいに、その金貨の量は増えていく。 男は笑いが止まらなくなった。 そして。 唐突に、大量の金貨が滝のように降り注ぎ、男を押しつぶした。 大量の金貨は派手な音を立て、屋敷にいた人々の注意を集めた。 「な、何事だっ?」 音を聞きつけた屋敷の人々が、たちまち庭に集まりだした。 人々の前で、鳥は金色の翼を持つ人の姿に変わった。 「この金貨は、馬小屋にいるあわれな幼い姉弟のためのものである」 「借金とやらをこれで払い、残りは二人に与えるように」 そう言うと、人の姿となった鳥は金色の翼をはためかせ、空へと上って行った。 こうして二人は金貨を持って、家に帰れることになった。 家に帰ると、長いこと音沙汰のなかった両親がいて、たいそう驚いて出迎えた。 「ああ、お前達。今までどこにいたんだい」 「お父さん、お母さん。私達、借金を代わりに払えって、働かされていたんです」 「何だって! あの男、病気が治るまでは待ってやるなんて言っていたくせに!」 両親は出稼ぎ先でそろって流行り病にかかり、起き上がることもできなかったという。 ようやく手紙を出せるようになった頃には、子供達は金持ちのところで働かされていたのだ。 「お家にあったお金と、色んなものを持っていかれたんだ。ぼく、こわくて取り返せなかったの。ごめんなさい」 「そんな事はいいんだよ。ごめんね、二人っきりで、今までどんなに心細かったか」 母親と父親はかわるがわる二人を抱きしめ、涙を流した。 こうして家族は再び、四人で暮らすことができたという。 |
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