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zoom RSS 泉之国のたぬき娘 十一

<<   作成日時 : 2010/07/17 20:23   >>

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女の格好をした大柄な男と、男の格好をしたほっそりした女。
なんとも奇妙な二人組と関わってしまったものだと嘆きながら、お陽は残りの一日を過ごしました。

その夜は四人で野宿のたき火を囲みました。
夕げは、二人組が持っていた鉄鍋で野草と米を煮込んで作ったおかゆです。

「そうだわ、一緒に行動するんだったら名前ぐらい教えておかないとね。私、大次郎(だいじろう)っていうの」

大柄な男は微笑み、

「俺は花(はな)だ。よろしくな」

ほっそりした女は白い歯を見せました。

(名前は、あべこべじゃないんだなあ)

おかゆをすすりながら、お陽はぼんやり考えました。
まったく妙な話です。
もし本当に別の性別になりたいのなら、名前だって変えてしまいたくなりそうなものなのに。

(ただ、そういう格好がしたいだけなのかなあ)

「僕はカジカといいます」
「あらま、あんな不細工な魚と同じだなんて、珍しい名前だこと」
「文句なら、名前をつけた人に言ってください」

考え込むお陽のそばで、カジカが自己紹介を済ませていました。

「で、お嬢ちゃん、あなたは?」
「えっ、お、お陽です」
「うふふふ。そんなに固くならないで。気楽にいきましょ」
「気色悪い男が相手じゃ警戒もするだろうが」
「んまっ、人を見た目でどうこう言っちゃいけないのよ。ねえ?」
「え、ええ、はい」

本当は「何かちょっと怖い」と思っているのですが、それを馬鹿正直に告げるのも恐ろしく、お陽は力なく笑ってごまかしました。



さて、そうこうしているうちに夜もふけてきました。
今日の火の番はカジカと花が交代でつとめ、お陽と大次郎は眠る側です。
お陽が寝やすいように荷物を平らにしていると、大次郎は荷物から薄布を引き出し、地面の上に広げました。

「あの、何でそんなことを……」

おずおず尋ねてみると、大次郎は目を見開きました。

「何言ってるの、地面に直接寝たら汚れちゃうじゃない! それに、寝心地が悪かったらその分良い眠りから遠ざかっちゃうわ。美貌っていうのは、油断しちゃ保てないんだから!」

(そんなこと、考えたこともない……!)

大次郎の主張に、お陽は我が身を振り返りました。
野宿を始めてからは荷物を枕にして地面に直に眠り、汚れるだとかお肌のことだとかを気にしたこともありません。
生まれついての女性であるお陽よりも、大次郎の方がずっと身なりや身奇麗さを気にかけていると言えるでしょう。

「そうだわ。お陽ちゃん、一緒に寝る?」
「へ?」
「汚れたくなかったら、半分場所を空けてあげようかと思って」

そう言って大次郎が薄布の場所を半分空けてみせたので、お陽はぎゃっと叫びそうになりました。
その面積から考えると、大次郎の提案は「くっついて隣で寝るか?」ということなのです。
お陽にしてみればとんでもない話です。

「いいいいいいです! あたし地面の上好きなんで!」

お陽はもげそうなほど首を横に振り、大次郎の提案を断りました。

「あらそう? じゃあ、おやすみなさい」

大次郎はたくましい手をひらひら振って薄布の上に横たわり、ほどなくいびきをかき始めました。
そのいびきの大きいこと。まるで熊みたいです。

(うう……つ、疲れた)

大きないびきを聞きながら寝返りを打ち、お陽はため息を一つつきました。
歩いてきた疲れに加え、奇妙な二人組と関わったことで、普段とは違う疲れ方をしているのです。
そのうえ、今日もおそらく夢を見ることでしょう。
カジカに殺されそうになる、あの夢を。
そのことを考えると、とたんに気分がふさがります。

(あーあ、何の夢も見たくないなあ)

お陽は取りあえず目を閉じ、やがて見るだろう嫌な夢にそなえました。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
おかしな二人組みかが加わって、賑やかな旅になってきましたねえ!
なにか大きな事件が起きそうな予感(笑)

カジカに殺される夢も気になります。
銀河径一郎
2010/07/20 23:32
男女あべこべ組が加わって、にぎやかさとお陽の負荷が増えました(何)

大きな事件はしばらく起こしません。主に作者の都合で。
ちくしょう、なんでこんなに忙しいんだ!

カジカに殺される夢、真相はもう決定済みです。
ぎくぎくワクワクお待ち下さい。
鈴藤 由愛
2010/07/21 18:55
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