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zoom RSS 足元からの危機(十九回目)

<<   作成日時 : 2008/09/08 23:35   >>

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オレの繰り出した拳は、簡単に……悲しくなるほど簡単に捕らえられた。
しかも、片手で。

「この状況で私に盾突いた度胸はほめてやる」

言うなり、メガネ男がぐるりとオレの腕をひねり上げた。

「いだだだだだっ」

ひー、腕が折れるぅ!
い、今、目の前に星が見えたぞ!

「私は……弱いくせに盾突く馬鹿が、一番嫌いだっ!」

言うなり、若桃に突き付けられていた剣が、メガネ男の手の中でくるりと向きを変えた。

そして――オレの左胸を突き刺した。

その様子が、スローモーションで見えた。

突き刺さった剣が、引き抜かれる。
視界に、真っ赤なしぶきが跳ねる。

その量を見て、本能的に悟った。

あ……ヤバイかも。

「あるじいぃぃーっ!」

タマちゃんの声を遠くに聞きながら、オレはゆっくりと、深くて暗い場所に引きずりこまれた――。





『本当なら喜ぶところなのに、弱りましたねえ』

知らないばあさんの声がして、オレは目を開けた。

――オレは、真っ暗な所にいた。

どこかから、おぎゃあ、おぎゃあ、と赤ん坊の泣き声がする。
一人分にしちゃ、やけにでかい上にエコーのかかった泣き声だな……と思ってると、真っ暗な視界にパッと風景が浮かび上がった。

そけは、木造で囲炉裏のある家の中だった。
テレビも蛍光灯もない、昔話なんかに出てきそうな古めかしい感じの作りだ。

囲炉裏ばたでは、着物を着たじいさんばあさんが、それぞれ赤ん坊を抱っこしていた。
赤ん坊は、腹が減ったのかおむつが濡れてるのか機嫌が悪いのか、どっちも泣いていた。

ああ、だからやけにでかくてエコーの効いた泣き声だったんだな。

『まさか、いっぺんに二人の赤ん坊がうちに来るとはのう』

『困りましたねえ、うちじゃ一人を食べさせるだけで精一杯ですよ』

じいさんばあさんは赤ん坊をあやしながら、困った顔を突き合わせていた。

『やはり……一人は誰かにやってしまうしかないかのう』

じいさんが、ため息をつく。

『兄弟を引き離すのはかわいそうですが、仕方ありませんねえ』

ばあさんが、そう言いながらも辛そうに目を伏せる。

『ひもじい思いをさせるのも、忍びないからのう』

『……どっちを人にやりますか、おじいさん』

そこで、二人とも黙り込んでしまった。

「あ、あの〜」

オレは声をかけてみたが、二人とも微動だにしない。
無視してるわけじゃなく、気付いてない……というより、オレがテレビに向かって話しかけてるような感じだ。

『そうだなあ、じゃあ、こっちの……後から生まれてきた方を、誰かにやるとしよう』

じいさんは、自分の抱いていた赤ん坊を抱き上げると、

『勘忍しておくれ、なあ、これはお前達のためなんじゃ……』

そう言って、申し訳なさそうな顔で、頬を寄せた。

……何だ一体。
少なくとも、走馬灯なんかでは絶対ないぞ。

見回すと、部屋の奥に、二つに割られた巨大な桃が転がっているのを見つけた。

……ええと。
もしかしなくても、これは昔話なんかで聞いた桃太郎の世界だろうか。

変だな。
桃太郎ってのは確か一人っ子だったのでは。
第一、本人だって、兄弟がいるなんて言ってなかったぞ。

じゃあ、オレが見てるコレって……?

見ている景色が、ろうそくの火が消えるようにフッと暗闇に溶けた。

「この時、養い子に出された方の赤ん坊は、ごく普通の人間として生涯を全うした」

「うおわ!?」

出し抜けに男の声がして、オレはめちゃくちゃ焦った。

寿命が三年は縮んだぞ、この野郎!

「その子孫は、後に小崎の姓を名乗った」

よ〜く見ると、暗闇の中からぼんやりとしたものが近付いてくるのがわかった。

「お前は――俺の子孫にして、生まれ変わりだ」

ぼんやりしたものが、はっきりと見える位置にまで歩み寄って来た時、オレはあんぐりと口を開けた。

ど、どういうこっちゃ!?

そいつは……長い髪をくくってるし、着ている物も違うけど、間違いなくオレ、だった。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
小崎君は桃太郎の血をひいていたんですね。暗闇で会ったこのご先祖さま、なんだかカッコイイんですけど。

↑はじめのコメは投稿ミスです。お手数かけますかが消してもらえますか?
つる
2008/09/10 10:57
桃太郎が実は双子でした、というのは昔考えた話です。
その時は読み切りしか書いてなくて、長くなりそうだから書くのを控えてたんですが、今回えいやっと使いました。

桃太郎の双子の兄か弟……ということは、このご先祖様、若桃様のおじちゃんにもあたるわけで。
さらに、ご先祖様を見て「間違いなくオレ」と言ったということは、小崎くんも自動的にカッコイイということに……。
うわああ小崎くんカッコイイ設定じゃないのにぃぃーミスったー!
と、作者が今悶絶してます、はい。

投稿ミスの方は消しておきますね。
鈴藤 由愛
2008/09/10 23:14
足元からの危機(十九回目) プラスマイナス1/BIGLOBEウェブリブログ
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