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zoom RSS 足元からの危機(十七回目)

<<   作成日時 : 2008/09/05 23:34   >>

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「さ。出た出た。陛下の前まで歩いてちょうだい」

檻を開けたオカマが、明るく笑う。
オレとタマちゃんは、オカマの後にくっついて、若桃の前まで歩いた。

「陛下の御前だぞ、頭が高い!」

若桃の前に立ったら、メガネ男に吠えられた。

頭が高い……ときたら、控えおろう、って来るよな。
しゃがむっつーか、座りゃいいのか?

オレは、扉から若桃の前までずーっと敷いてある赤い布の上にあぐらをかいた。
隣に、ストンとタマちゃんが伏せる。

「良い。礼儀は無用だ」

若桃が、片手を軽く上げる。

「いや、いい」

だって、立ってるの疲れたし。

「あるじに礼儀作法が備わっているとは……見直したぞ」

隣にいるタマちゃんが、しみじみ呟いた。

「いや、立ってるの疲れたから」

「……少しでも見直した我が馬鹿であった……」

正直に言ったら、タマちゃんがガックリうなだれた。

そんなに落ち込むことねえじゃん。なあ。

「……して、お前、名を何という?」

う。

若桃の質問に、オレは、ぐぐぐっと口をへの字に曲げる。

名前……。
それって、どーっしても言わなきゃいけねえのかな。

……言いたくねえなあ。

だってオレ、自分の名前好きじゃねえんだもん。

珍名ってわけじゃないんだけどさ、死んだ有名な歌手と同じ名前なんだよ。
漢字も読み方も丸っきり一緒。
しかも名字は、漢字違いで読み方同じ。

つまり、平仮名なら丸っきり同じ!

父さんと母さん、狙って付けたに違いねえ。
二人してファンだもんな。
それがきっかけで知り合って結婚した、って言ってたしな。

しかし、何でこんな名前にしたんだろ。
どう転んだって、その有名人と同じになれるワケねえのに。
名前言うたんびに「歌上手いの?」とか言われるんの、かなり苦痛なんだぞー。

そんなワケで、オレはすっかり自分の名前を名乗りたがらない人間に成長しちまったのだ。

――なんて、ウダウダ考えてたら。

「名は」

あう。
また聞かれた。

「あ……あのさ。別に、名前なんてどうでも良くねえか?」

おずおずと提案してみると、メガネ男の顔色が変わった。

「おのれ、陛下に名乗る名はないというのか!」

「そういう意味じゃねえ!」

おいメガネ! どこまで物騒な頭しとんじゃ!

「では何故名乗らない? やましい事情があるからだと考えるのが普通だろう」

う……確かにそうかも。

「自分の名前が好きじゃねえんだよ……」

ぼそっと正直に答えたら、

「そんな馬鹿な」

メガネ男がふふんと笑いやがった。

ンだとこの野郎!
馬鹿にすんじゃねえぞ!
ああ、そんなに教えて欲しけりゃ教えてやるともさ!

耳の穴かっぽじってよーっく聞きやがれ!

「……おざきゆたか」

決意は熱く、でも実際に口から出て来た声は非常に非常に小さかった。

な、情けねえ……。

「何? 聞こえないが」

自分でも小さい声だって思うぐらいだから、あっちも聞こえなかったんだな。
メガネ男が眉をひそめた。

「小崎 豊(おざき ゆたか)!」

やけっぱちになって声を上げると、

「……その名のどこをそんなに嫌っている?」

「そうよぉ。おかしな名前って気はしないわよぉ」

メガネ男とオカマが、妙なものを見るような顔つきをした。

……あ、こいつら、あの歌手知らないんだ。
地上と地下だから、文化も違うんだな。

「そうか、では、豊」

若桃は、さっさと話を進めるつもりのようだ。

「お前は、余(よ)の父と面識があるようだな。どのようないきさつで父と関わりを持ったのか、話してみせよ」

……正念場、ってやつか。
まあ、正直に洗いざらい話すしかねえな。
オレは、腹の筋肉を引きしめて、気合いを入れた。






*1〜16話はこちらからどうぞ。


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
尾崎豊、好きなんですよ。きっとこの主人公も感受性の豊かな子なんだろうな。
さ、どんな話し合いになっていくんだろう。
つる
2008/09/06 20:08
名は体を現すとも言いますからね、お父さんお母さんが感受性を伸ばす教育をしてるかも。
でも彼はきっとアイラブユーとか盗んだバイクとか聞くとイラッと来るんだろうな。

……にしても、男が主人公だと書き進まないよぅ……。
鈴藤 由愛
2008/09/06 22:25
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