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zoom RSS 足元からの危機(三十六回目)

<<   作成日時 : 2008/09/28 22:26   >>

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……静かだ。
どこからか生ぬるい風が吹いてきて、ひょおおお……と物寂しい音を立てる。

「封印、したんだな」

オレが、見たまんまをつぶやくと、

「ああ」

若桃が深いため息をついた。

……色々、複雑なモンがあんだろな。
何年かは知らんが、長い間ここで暮らしてきたんだもんな。
それに、大勢の鬼の兵士達をまとめてたんだし……。

ま……うわべだけの『陛下』で、結局鬼達に利用されてたんだけどさ。

それ以上、若桃に何を言えば良いのかわからなくて、オレは、タマちゃんのとこに向かった。
タマちゃんは疲れたみたいで、首を垂らしてせわしなく息をしてる。

「……あるじか」

それでもオレに気付くと、しんどそうに顔を上げた。

「いやいやいやっ、いいから、ぐったりしてていいからっ」

見てて気の毒になったから、気遣って言ってやると、

「……楽にしていろ、が正しい言い回しであろう……」

タマちゃんは相変わらず可愛いげのないことを言いながら、伏せをした。
……タマちゃん、どうして君は、どんなに疲れていようと、オレに小言を言わずにいられないのかね。

「あのさあ、聞きたいことあるんだけど」

オレは、伏せをしたタマちゃんの目の前にしゃがんだ。

「……何だ」

「鬼の総大将封印作戦の時、オカマがタマちゃんにも声かけてただろ。『わかってるわね?』って。これ、どういう事?」

「封印作戦……魔法ではない、術だ」

タマちゃんが、また一つ小言を追加してから話し始めた。
察するに、オレ命名の『鬼の総大将封印作戦』にも何か一言言いたかったに違いない。

「あるじ、薬を盛られて眠った事を覚えているか」

「あ? ああ」

ああ……あの時オカマの機嫌を損ねまいと、無理して飲み下した大嫌いなミルクティの味が、口の中によみがえるぅ……。

「その時、我はキジ殿に取り引きを持ちかけられたのだ」

「どんな!?」

実は、とんでもない事を持ちかけられてたりして?

「あるじを殺さぬ代わり、鬼の総大将を封印する計画に協力せよ、という話だ」

「何でオレが寝てる時に、そんな大事なこと決めるんだよ!」

『あるじ』であるオレの意見は関係ないってのかい!

「お馬鹿。アンタの耳には術がかかってたでしょ。一目見て、ちゃーんと見抜いてたんだから。アンタが起きてて話を聞いたら、鬼の総大将に筒抜けじゃない」

オカマの声だ。
振り向くと、オカマが腕組みしてオレを見下ろしていた。

「だったらオレを別の部屋に移動させるとかしてっ」

我ながら往生際の悪いことを言うと、オカマがニッコリと笑った。

「だってアンタ、そういう状況に置かれたら、迷いながらも結局聞き耳立てちゃうタイプでしょ?」

う……それは……確かに……。

「だ、だけどさっ! 封印する前だったら説明してくれても良いだろ! あン時、オレの耳はもう術にかかってなかったんだぜ」

だって、オバちゃんが解いてくれたんだから。

「だからそれはー……」

「封印する術は発動までにとんでもなく時間がかかるもんでね、説明している時間があったら唱えておきたかったんだよ」

あ、オバちゃんが近付いて来た。

「だけど、説明不足になっちまったのは事実だからね、謝るよ」

本当にすまなそうなオバちゃんの態度に、チクッと胸が痛む。
そ、そんな……そこまで真剣に気にされると、ものすんごく悪いことしてるような……。

「い、いや……怒ってるわけじゃないから……」

しどろもどろでそう言うと、

「そうだ。気にする必要はない。あるじは、のけ者にされたようで面白くなかったのであろう」

だーかーら!
タマちゃんよう、オレに忠誠誓ってるはずなのに、何でそんなに尊大な態度を取るんじゃあ〜!

オバちゃんの方が、オレのことずーっと気遣ってくれるぞ。
あーあ。若桃って良い家来持ったよなあ。

「……あれ」

オレは、ここに若桃がいないことに気付いた。
目で探すと、若桃は処刑場の壁に寄りかかって、足元をぼんやり見つめていた。

「――お」

「しばらく、そっとしといて欲しいってさ……」

呼ぼうとしたら、オバちゃんが手をオレの肩に乗せた。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
若桃様はよほどショックが大きかったのですね。呼びかけようとした小崎君はまだ子どもね。肩に手をかけたオバちゃんがいいです。何よりも雄弁だわ。
つる
2008/09/29 22:54
信じてたものが一気に崩れた時のショックは、デカイですからね。
平気だわーって思ってても、案外何かの拍子でガクッと来たりしますし。
こういう時って対応難しいですよね。多少乱暴でも誰かに気持ちを切り替えて欲しいっていう人と、落ちつくまでそっとしといて欲しいっていう人がいるし。
鈴藤 由愛
2008/09/29 23:13
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