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zoom RSS 足元からの危機(三十二回目)

<<   作成日時 : 2008/09/24 08:49   >>

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「お前達はもう用済みだ。私の体に還るがいい」

……何の話だ?

オレは最初、メガネ男の言葉の意味がわからなかった。

わからなくて当然だった。
それは、兵士達に向けられたものだったから。

兵士達が、ぶるぶる震えながらメガネ男に近付きだした。

「ぎゃああああっ」

「陛下、お許し下さいっ」

「消えたくない、消えたくない!」

「あんまりだ、頑張ったのに、ここまで頑張って来たのに……っ」

恐怖に叫ぶ奴。
許しを乞う奴。
悲鳴を上げ続ける奴。
恨み言を吐く奴。

あちこちから、兵士達の絶叫が聞こえ始めた。

でも、口から出る言葉とは反対に、体の方はメガネ男に歩み寄って行く。
どうも、体が勝手に動いてるらしい。
オレのそばを通って行った奴の中には、泣いてるのもいた。

しかしこいつら、一体、何をそんなに怖がってるんだろう。

「安心しろ、殺すわけではないのだからな」

メガネ男が、薄く笑う。

「な、何だこりゃっ」

オレは、思わず身を引いた。

近付いた兵士達が、メガネ男の体にアメーバみたいにくっつくと、取り込まれて消えてしまったのだ。

一人、また一人と取り込むたびに、メガネ男の体がボコッと脈打つようにうごめく。

はっきり言って気色悪い。
夢に見たらうなされそうだ。

その時、ずるり、ずるり、と何かを引きずるような音を聞いて、オレは振り向いた。

「う、うあ、あ……」
「いてぇ……いてぇよぉぉ」

ふんどし一丁の二人組が、血まみれの手をだらりと下げ、足を引きずりながら歩いてくるところだった。

あいつら確か、制服を奪って死体置き場に閉じ込めてきた奴らじゃ……?

「メガネ男……鬼の総大将のやつ、一体何をしようとしてんだ?」

オレが誰にともなく聞くと、

「鬼の兵士達は、元々あいつの体の一部だったのだ。それをまた取り込んで、元の姿……いや、元の能力を取り戻そうという魂胆だろう」

若桃がそう答えた。

「じゃあ、あいつらは?」

オレが二人組を指差すと、オバちゃんがため息をついて頭をかいた。

「おそらく、扉を蹴破るなり鍵を叩き壊すなりして、無理矢理出てきたんだろ。本体である鬼の総大将の意思には、逆らえないからね」

そんな……。

オレは、何故だか無性にやるせない気持ちになった。

あいつらは、少なくとも仲間とかではない。
ただ、変装するために服を奪っただけの相手だ。
会話の一つすら、交わしてない。

それなのに、どうしてか胸が痛んだ。

「おい! 行くことなんかないって!」

思わず呼びかけたんだけど、二人とも人の言葉なんか全然耳に入ってない状態で。
うめき声を上げながら、他の連中と同じように、メガネ男に取り込まれていった。

なんか……なんか……うまく言えないけど、むしゃくしゃするっっ!!

「なあ、今のうち攻撃した方が良いんじゃねえか? だって今、一番無防備な状態なんだろっ?」

イライラしながらのオレの提案に、オカマが首を横に振った。

「今攻撃したら、武器ごと取り込まれるわよ」

「じゃ、魔法とかでビカーッと!」

「跳ね返されるよ。しかも一方向じゃなくて色んなとこに。余計危険だよ」

今度はオバちゃんに却下された。

「……何でそんなに詳しいんだよ?」

二度も却下されて、むくれずにいられようか。
いや、いられまい。

そんなわけでブスッとしてると、オバちゃんが「まあまあ」となだめにかかってきた。

「私らは一度戦ってるからね、あいつと」

あ、そうか。
オカマとオバちゃんは鬼ヶ島まで行ったんだったな。

「じゃあ、あいつの弱点なんかも知ってんのか?」

だったら頼りになるよな、うん。

「弱点は知らないね」

「え゛」

オバちゃんのあっさりした答えに、オレは凍り付いた。

「そうよねえ。あいつ、倒される前に降参してきたんだもの」

オカマが相槌を打ってる。

おいっ!
ダメじゃねえかそれじゃ!

ボス戦ってのは、弱点があるかどうかで難易度がおそろしく変わるんだぞー!

そうこうしてるうちに、メガネ男の体は、すっかり変わっていた。
スリムだった体が、赤銅色の肌の、ムキムキな体に変わってる。
それだけじゃない。
頭には二本の角が生えて、目は血走ってギョロギョロ動き、口は裂けたように大きく開いて、中から鋭い牙がのぞいてる。

――鬼だ。

金ピカの鎧を着てはいるけれど、そこに出現したのは間違いなく本物の鬼だった。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
うわ、メガネ男、どんだけ大きいんだよ!
最後の変身していく様子が、リアルに想像できました。
つる
2008/09/24 22:43
鬼の総大将を名乗るぐらいですから、きっととんでもなくビッグですよ。
もうメガネ男だなんて呼ばせないつもりですね、奴さん。<変身 

……話は変わりますがね。

この話を書き終わって、更新ボタンを押したら、途端にサーバーが混み合って、エラーになって、パッシンとぜーんぶ消えてしまいましてねえ……。
書き上げたやつ、保存なんかしてなくてね……。
大元の元みたいなのはメールに残ってたんですけど、また手直ししたりする羽目になりましてね……。
うふふ……。

だから、今回は珍しく朝方の更新です。
鈴藤 由愛
2008/09/24 23:09
ああ、ありましたありました。ウェブリブログの調子が悪い日。
あの日はわたしも、下書きが保存できなくて、記事の半分をパーにしました。とってもガッカリしました。今までにない美文だった気がするは気のせい?
>うふふ……。
わかる、わかります!笑うしかないでしょ。
つる
2008/09/25 23:21
せっかく書いた記事がパーになると、本気でがっくりしますよね。
「あっ、消えたっ」ってパソコンの前で思わず言っちゃいましたよ、私(普段パソコンいじってる時は無口)
消えた記事の方が良かった気がするの、わかりますわ。
文章を思い出しながら、同じ内容の話を書いているのに、どうしてか全く同じにはなりませんし……。
鈴藤 由愛
2008/09/25 23:48
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