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zoom RSS オタカレ! の2

<<   作成日時 : 2008/07/10 23:24   >>

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* これは以前お題小説で書いた「オタカレ!」の続きっちゃあ続き、っていう話です。


「何やってんのよ」

あたしが言うと、トオルは水を飲むのをやめて、こっちを見た。

これこれ、水が出しっぱなしだよ。
エコエコうるさい世の中だ、水は大事にせんかい。

あたしは蛇口をひねって水を止めてあげた。

「水飲んでました」

トオルは馬鹿正直に、でも誰だって見りゃわかる答えを返した。

バカたれ。
あたしが聞きたいのは、なんでそんなにガバガバ水を飲んでるんだ、って事だよ。

――しかも昼休みに。

今この時間は、昼食をめぐって購買部や学食が戦場と化す時間帯だ。
私は無用な争いを避けるため、毎日弁当を持参している。
今も弁当を持って部室に向かうところだ。

特に用事はない。
そこで一人、誰にも邪魔されずにのんびりしたいだけだ。

あたしは一応『副部長』ってことになってるから、部室のカギの管理はあたしの仕事。
その特権なのだ、昼休みに部室を貸し切りにできるのは。
ま、夏はやたら暑いし冬はやたら寒いんだけど。

その途中だった。
ガバガバガバガバ水を飲み続けるトオルを見かけたのは。

「あんたの大好物って、水だったんだ」

あたしがちょっとイジワルすると、トオルは慌てた。

「ち、違いますよぉ。新作のフィギュア買うために節約してるんですっ」

ま〜た、フィギュアか。

あたしは、思わずあきれ顔。

こいつはガンダムフィギュアをこよなく愛しているのだ。
女の子キャラのフィギュアじゃなくて、機体の方を。
「フィギュア好き」っていうと、大抵は女の子キャラのを好むんだと思われるらしくて、その辺り、トオルは「わかってない!」と熱くなる。

「それっていくらすんの?」

「一万円越えてます」

高っ!
一万あったら、服買うわよあたし。

「で、アンタの昼飯代っていくら?」

「ええと、パンが二つにパックジュース一本だから、だいたい三百五十円ぐらいです」

……それで一万円貯めるつもり?
一ヶ月かかっても無理だわよ。

「バイトした方が早いんじゃない?」

「ヤです」

トオルは即答した。

「なんで」

「『いらっしゃいませこんばんは』とか言えないです」

……まあ確かに、コンビニでレジ打ってるトオルって、想像つかないけど。

「だったらさあ、親に弁当作ってもらいなよ。食べなきゃマズイって。倒れるよ」

あたしの提案に、トオルは、むっつりと黙ってしまった。

……いつもこうだ。
トオルは、親とか兄弟とか、とにかく家庭に関する話題を振ると、こうやって黙ってしまう。
だからあたしは、トオルの家のこと、何も知らない。

ねえ、何か事情あるの?

実は両親が不仲だとか、離婚して片親だとか、死に別れたとか。
それとも両方いなくて親戚のトコに預けられてるとか?
あるいは出来の良すぎる兄弟がいて、肩身が狭いとか?

他のやつなら別に気にならないけど、あんたのことだから、こんなに気になるんだよ。

――好きな人、だから。


ぐぎゅるるる〜。


唐突に、間抜けな音がした。

……あたしの腹の虫じゃない。
トオルの腹の虫だ。

ったく、なーにが節約よ。
食べたくって食べたくって仕方ないんじゃない。

「トオル」

あたしは、弁当箱をトオルの前に突き出した。
途端、トオルの目が輝いた。

わかりやすいなあ、もう。

「くれるんですか?」

あらあら、すでに両手を出してるし。
まるで、おやつを差し出された子犬みたいだ。

あたしは「いいよ」とぶっきらぼうに答える。

「わあ、ありがとうございますっ」

う。

トオルの笑顔を直視してしまった途端、弁当を持ったあたしの手は、すっと頭上高く上がっていた。
小柄なトオルにしてみりゃ、あたしの認識よりもさらに高い位置だ。

「タダであげるわけないじゃない。これはあたしの貴重な食糧なんだからね」

ああ、自分の性分が悲しい。
素直な態度を取られると、ついついイジワルな自分が顔を出しちゃうのだ。

「は、はうぅ」

本気で恨めしそうな顔をするトオルに、ちくっ、と心が痛んだ。
表情一つで人の罪悪感つっつくな、このバカっ。

「そうね〜。部室のゴミ捨てと交換、でどう?」

……ホントは、そんなことしなくたって、あげるつもりなのに。
あたしって、どうしてこんなにひねくれてるんだろ。

「やりますやります! あ、でも……そしたら、ミユキさんの昼ご飯がなくなっちゃう……」

急に申し訳なさそうに小さくなるトオルに、あたしの顔が、勝手ににっこり笑う。

「気にしないで。あんたにあげるの、食べ残したやつだから」

ああ……あたしって、なんて可愛いげのない女なんだ。
『半分あげる』って、間違っても出てこないんだもんな。

「やったあ、ミユキさんと半分こだ」

その一言が、あたしのハートを撃ち抜いた。

き、期待しちゃうようなこと、あっさり言うな、バカー!


――その後。
部室で、あたしが弁当食べてる間にトオルがいそいそとゴミ捨てに行って、帰って来て。

「ほれ」

あたしが突き出した弁当箱を、トオルは大喜びで受け取った。

「ミユキさん」

そのフタを開けたトオルが、首をかしげた。

「半分以上食べ残してますけど、具合悪いんですか?」

ぎくっ。

「う、うっさいわね! 今ダイエット中なのよっ、だまって食え!」

あたし。
本当のことが素直に言えるような、カワイイ女になりたいです。


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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
ここまでくるとツンデレというより「しもべ」ですね(笑)二人ともオイシイキャラだなぁ〜。次回はライバル登場、なんてどうですか?
ia.
2008/07/11 00:22
感想ありがとうございます。

ライバルですかあ、良いですねえ。
ミユキのライバルにするか、トオルのライバルにするか、はたまた両方……。
って、「足元からの危機」も完結してないうちにそんな誘惑をっ!
でもいつか書きます、きっと。
よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤 由愛
2008/07/11 19:32
ふふ。わたしも多分にミユキの要素あるので、ニヤッとしてしまいました。
トオルが語らない家の事情なんかが書かれてるし、これは否が応でも続きを期待してしまいますよ。
男って案外、食べ物で釣れんのよね〜。大変!子供達に言っておかなくちゃ。
つる
2008/07/11 21:24
 \
   \(⌒-⌒)
   (・(ェ,,)・ ) < そんなエサで俺様がクマー!!
    `つ   `つ      (´⌒(´
     ゝ_つ_`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
              (´⌒(´⌒;;
      ズザザザ

ガノタのトオル再来だ!
これはまだ続きそうな雰囲気。長期連載になりそうな予感がします(控えめに催促してみる)。

2008/07/11 22:57
感想ありがとうございます。

つる様>つる様の中にもミユキが!
実は私の中にもいますよウフ。
食べ物でつられるのは危険ですからね〜、気をつけなくちゃ。
……そういえば、ボビー・オロゴンは可愛い子にはアメあげるって言ってましたね。

鯨様>あ、これは巷で噂のアスキーアート!?
長期連載……うああ……「足元からの危機」まだ完結してないのに……あう……悩ましい……書きたいのは山々だけど……うう……。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤 由愛
2008/07/12 09:20
こんな女の子って可愛いよね。
そして天然キャラっぽい男の子との組み合わせは最高ですよ。

ダメダメ男子を放っておけない気持ちわかるわ〜

2008/07/14 23:55
感想ありがとうございます。

好きな人に素直になれない女の子が好きなのです、私。
少女マンガでも、好きな人に積極的にアタックする子の話よりも、素直になれない子の話の方がグッときます。
トオルは今のところダメダメだけど、きっと何かいいところがあるんだ! と言ってみたり……。
でなきゃ、きっとミユキが惚れない、うん。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤 由愛
2008/07/15 21:38
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