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zoom RSS 百話達成記念リクエスト4:「白い部屋とわたし」〜火群様に捧ぐ。〜

<<   作成日時 : 2008/05/18 01:29   >>

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わたしは、気がつくと真っ白い部屋の中にいた。

壁も、天井も、床も……何もかもが白に囲まれた部屋。
ドアや窓は見当たらない。
天井にはめこまれた四角い照明灯が、白さを際立たせている。

どうして、こんな部屋にいるんだろう。
……思い出せない。

困惑して立ち尽くすわたしの前には、ガラスのテーブルがある。
その上には、一丁の拳銃。
調べてみると、銃弾が一発だけ入っていた。

これから、どうしたらいいんだろう。

この部屋を脱出しなきゃいけないのはわかってるけど……そのために取るべき行動がわからない。
とりあえず、この拳銃にだけは用事がなさそうだけど。

――と、不意に、体が勝手に動き出した。

思考は後からついてきた。
何故だか急に、この部屋の壁を叩いて調べなくちゃいけない気持ちになったのだ。
そうすることで、ここから脱出できるんじゃないか……という妙な確信が芽生えてきた。

わたしは、前後左右の壁を手が届く範囲で叩いてまわった。
もし今のわたしを誰かが見ていたら、「頭のおかしな女」と思ったことだろう。
それでも、脱出できる可能性を思うと、もう何も考えられなかった。

――それを、一体どのぐらいの間、繰り返したのだろう。

わたしは、疲れて座り込んだ。
疲労感が、わたしの中に絶望感をじわじわしみこませていく。

壁を叩いてまわれば、何か事態を好転させられるような気がしていたのに、そんなことはなかった。
隠してあるスイッチが出てくるというようなこともなく、壁は壁のまま、存在している。

もう動きたくない。
どんなにあがいても、一生ここから出られないような気がする。
何となく視線を巡らせると……ガラスのテーブルの上にある拳銃が目に入った。

そうだ。
この部屋から脱出する方法は、他にもある。

わたしは、のろのろと立ち上がる。
十歩も歩けばたどり着く距離なのに、テーブルがひどく遠く思えた。
それでも歩いてテーブルにたどり着くと、拳銃を手に取った。

――見た目以上に、重い。

わたしの体は、震えた。

でも、これが、この部屋から脱出する最後の手段、なんだから……。

わたしは引き金に指をかけると、その銃口をゆっくりとこめかみに当てた。





「バッドエンド。ゲームオーバーです」

司会者の明るい声がして、画面が切り替わる。

「正解はB『床を調べる』でした」

テレビ画面には、でかでかと「BAD」の赤い文字が表示される。
文字の後ろには、動くもののなくなった室内が映っていた。

「何だよ〜、もう終わりかよ」

俺は、腹立ちまぎれにビールをあおった。

まったく、Aの『壁を調べる』を選んだやつの気が知れない。
部屋の中にいるアンドロイドは女性型で、あまり背が高くないのだから、壁に脱出のための仕掛けがしてあったとしても、手が届かない可能性があるのだ。

たがら俺はBを選んだのだが……世間の人達はその辺まで考えて選択しなかったらしい。

俺が見ているのは「アクション」という深夜番組だ。

視聴者参加型の番組で、ドラマ仕立てになっているが、要所要所で視聴者の投票によって選択肢を決め、進行していくという内容になっている。
出演者は全員アンドロイドだから、プライバシーやら人権やらの問題は出ない。

だが、この「視聴者の投票によってアンドロイドの取る行動を決める」というところが、番組の最大の楽しみにして最大のネックである。

所詮は多数決であり、時たま、間違った選択肢が採用されるからだ。

その場合は容赦なくゲームオーバー。
今回みたいにアンドロイドが「死」を選んだりすることもざらにある。
最近ではわざと悪い方向に誘導する選択肢を選ぶ視聴者がいて、バッドエンドが増えている。
番組のコミュニティが、この問題を巡ってもめることも多いらしい。

「では、次回は無人島に漂着した男の物語をお送りいたします。またこの時間にお会いしましょう……」

――来週は無人島でのサバイバル生活の話か。
緊迫した展開が期体できそうだ。

俺は、ビールの空き缶をつぶし、テレビを消した。










* * * * * * * * * *


百話達成記念リクエスト第4段にして最終話は、火群様です。
では、ここで以前頂いたコメントに返事をしたいと思います。

1.「アンドロイドの出てくるSFって、そういえばちゃんとしたの書いたことないなあ」と思いながらいろいろ設定やら何やらを考えました。
サクッとかるーいソフトなSFにしようと思ったのですが、どうしてか「これ、SF?」みたいな話に……。
私はアンドロイドが書けない呪いでもかけられているのかと考えたほどです。
余談ですが、調べてみたらアンドロイドって普通は男性型を指すんですってね。

2.「王様の料理」ですか。あれは実は「王様のブランチ」っていうタイトルにしようとしてたんですよ。
でもまんま番組名じゃーん、ということに気付いて変えました。
今思うと、パンにも毒を入れて登場させたかった。

3.秘訣ですかー。私、人に言わせるとだいぶマイペースな性分らしいですよ。だからのたのたなペースでも書いていられるんじゃないかと。
でも毎週ネタ作りにはひっじょーに苦労してますよ。
今回の話は、六回書きかけてほったらかしになってるのがケータイに残ってます。。




これにて百話達成記念リクエストは全て終了です。
リクエストしてくださった皆様、本当にありがとうございました!

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
テレビっていつかこういうこともやりそうですね(笑)次回無人島ってことは、究極の選択がありそうですね。「あたりくじ」のような。困ったなぁ。この番組、観たくなってきちゃった(笑)
風刺も効いてて面白かったです。展開もわかり易くて読み易いし、ホント由愛さんの書かれるストーリーが楽しみです。
ia.
2008/05/18 03:31
わたしもこの番組観たい。
SFやアンドロイドをどう料理するのかと思ったら、見事に現代に取り込んでるんだもの。やられた。文章も引っかかりなくスラスラ読めます。いつもあっちゅうまに終わってしまう。
今日は本文の他に、
>六回書きかけてほったらかし
ここ、気になりました。というより安心しました。わたしもある部分にこだわると、どうにも行き詰っちゃう時があります。書き直しちゃった方がやっぱり早いのね。すごく参考になりました。
つる
2008/05/18 21:45
感想ありがとうございます。

ia.様>実は、私自身がこういう番組見たくて書いてたりして……。
視聴者の選択でお話が変わる、みたいな。
将来アンドロイドが出てきたら、こういう「人間にやらせるのは問題ありだけど人間と同じ姿をした物にやらせるのは問題なし」っていうことが増えそうな気が。
お褒めの言葉をもらって、ただ今舞いあがっております。わひょーい。

つる様>このやり方でいいのかどうかわかんないで書いてますが、参考になったのなら嬉しい限りです。
書けなくて気分が腐ってきたら、一から出直した方がいいですよね。
ほったらかしたやつは、後々別な機会に参考にして書けるかもしれないし。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤由愛
2008/05/18 22:29
どーも。リクエストに応えてもらって、ありがとうございます。いいかげんなお題で困らせちゃったかな。
けっこう重たい話で、間違えば読後感が悪くなりそうだけど、そうならないのは、鈴藤さんの文体に透明感と軽やかさがあるからか。
……そうか、なるほど。マイペースで、コツコツ試行錯誤しながら書くのが、秘訣なんですね。
。・゚・(ノД`)・゚・。ウエエェェン、でも忍耐と根性が僕には無いんだよぉぉ(笑)
火群
2008/05/19 20:06
感想ありがとうございます。

SFを今まで書いたことがなかったので、慣れてなかっただけですよぅ。
SFってなんだ! サイエンスファンタジーか!(違います)
どうも私が書くと話が重くなりがちで、ちょっと考え物ですね。
そういう話ばっかり思いつく頭をなんとかすればいいのか。

忍耐と根性は私にもないですよ。
だから六回も書きかけてほったらかしにしてるんですよ。
今、ケータイには未送のメールが11通もありますよ。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤由愛
2008/05/19 22:37
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