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zoom RSS 足元からの危機(十三回目)

<<   作成日時 : 2008/04/12 21:42   >>

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オレは、目の前をにらんだ。
顔の真ん前にあるのは、ふっさふっさのタマちゃんの尻尾。
それがゆらゆら揺れる度に顔にくっつくから、メチャクチャくすぐったい!
つーか、かゆい!

「タマちゃんっ」

オレは、たまりかねて尻尾をつかんだ。

「なんだ、あるじ」

タマちゃんが肩越し……というか尻尾越しにオレを見る。

「これ何とかならねえ? 顔かゆい」

オレがつかんだ尻尾をゆらゆら振ると、タマちゃんは馬鹿にした感じでフンッと鼻を鳴らした。

「何なら立って歩けばよかろう」

「できるわけねーだろっ」

即座にツッコミを入れるオレ。

「だいたい、なんでこんな狭っ苦しいトコを通らにゃならんの!?」

オレは今、四つん這いの恰好ですんごく狭いところを進んでいる。
映画なんかで、主人公が敵から逃げる時やこっそり侵入したりする時に通気口とかを通るシーンがあるが……今、オレはその状況にある。

通路をしばらく歩いた後、通気口の入り口らしいのを見つけたタマちゃんの提案で、こんなことになってしまった。
タマちゃんいわく、通路を通るよりも、ここを通った方が見つかりにくいと言うんだけど……。

そりゃさ、タマちゃんは良いよ。
普段から四つん這いだもん。
ちょっと姿勢を低くすれば、あとは普段とほとんど変わりなく行動できるし。

だけどな、オレは普段二足歩行で! 直立歩行なんだよ!
こんな姿勢が長いこと続いたら、くたびれるよ!
事実、すでに手の平とひざと足首が痛い。

「確か言ったはずだが? あのまま通路を辿るだけでは、いつか鬼どもに囲まれてしまう、と。そんなことになれば、対抗措置をほとんど持たない我々は窮地にさらされるだけだ。だからこそ、このような安全策を取ることが重要なのだ。わかったか」

いつも通り偉そうに語ってくれるタマちゃん。

「豆ぶつけて追っ払えば大丈夫だろ」

オレが言うと、はああ……と、今度は呆れた感じのため息をついた。

「あるじ。ザコ相手に強力な道具を乱用するものではないぞ」

「……へーい」

ま、一理あるわな。
オレは黙って、またタマちゃんの後をついて行った。

しばらく進んだら、前の方から石鹸の匂いがしてきた。
それと、かすかな鼻歌。

「何だ?」

「む……何者かが湯浴みをしているようだな」

な、何ですとっ?
ぐだぐだだったオレの神経が、急にシャキッと立ち直る。

「あるじ……まさか見ようなどと下劣な考えをしていないだろうな」

ぎくっ。

「ひ、ひどいやタマちゃん! オレがそんなことするように見えるっ!?」

「見えぬ者にそんな発言をすると思うか?」

オレを見るタマちゃんの目は、ひっじょーに冷たい。
あう……そこまでタマちゃんの信頼を損なうようなこと、したかな?

何はともあれ、また進んでいくと、下に金網の張ってある所に来た。
たぶん、ここが誰かが湯浴みしているとかいう所の上なんだろう。

「あるじ、早く来い」

「わかってるよ」

返事をしつつ、オレの目はついつい金網の方へ……。

見てみると、金網越しに、誰かが泡風呂に入ってるのがわかった。
長い金髪をアップにまとめて、泡風呂から出した足を組んでいる。
その足は細くて長くて……その……きれいだ。

ここから見る限り、年上のお姉様かな?
なんてセクシーなんだ!

オレは、金網に顔を押し付けた。

だって、オレは健全な男だぜ?
女が風呂入ってるのなんか目撃しちゃった日にゃ、もうたまらん!

も、もう少し、もー少し、もーちょい近くで見れないか!?

「あるじ、やめろっ。みっともない!」

オレが着いてこないのを不審に思ったんだろう。
引き返して来たタマちゃんが、オレの服をかんで引っ張る。

「うるせえ、見るったら見る!」

タマちゃんを押しのけるオレ。

「馬鹿者、ここへ来た目的を忘れたかっ」

ぐいぐい引っ張るタマちゃん。

そんなこんなで、金網から遠ざけようとするタマちゃんと、見ようとするオレは、もつれあった。
こんなクソ狭い所でもみ合いになれば、当然、窮屈だ。
体勢を崩したオレは、金網に手をかけた。

――その手が、がくっと傾いた。
ネジとかでガッチリ固定してあると思った金網が、手の重みで傾いたのだ。

「どわあああっ!」

オレは、金網ごと落ちた。
よりにもよって、お姉様が入浴中のバスタブに。

「やだっ、何よ?」

お姉様のとまどったような声がする。
その声は、ハスキーだった。

や、やばい!
オレはじたばたしながらバスタブから飛び出した。
ああ、全身ビッショビショ……。

「あら坊や。アタシに何か御用?」

お姉様の声が腰に響く……。
って、それどころじゃない!

オレはがばっと土下座をした。

「す、すいませんっ! ほんの出来心です、許して下さいっ!」

許してもらえるとは、思えないけどさ……。

「んふふ。そんなに怖がらなくたって良いのよ。驚いたけど、怒ってやしないわ」

妖しく微笑みながら、お姉様がバスタブのふちに手をかけて、出ようとした。

うおおっ?
そ、そんな、お姉様!
男の前でそんな無防備な!
タ、タオル、タオルはどこじゃーっ!

オレが慌てふためいて(でも実は喜んでたりして)目をそらしてると、お姉様がひたひた近寄ってくる気配がした。

「だぁいじょうぶよ。裸を見られたぐらいで、アタシは生娘みたいに取り乱しやしないわ。許してあげる」

裸を見られたぐらいでキャーキャー悲鳴上げたりしないなんて、ああ、さすが大人の女は違うぜ……。

じゃ、お言葉に甘えて……。

ドキドキしながら顔を向けて、オレは固まった。

お、およ……?

見上げたお姉様の胸は、ちーっともふくらんでなかった。
その代わり……というか何と言うか、下の方に余計なモンがくっついてる……!?

「うわあああっ!」

オレは、ずざざざっと壁際まで逃げた。

こいつ……お、お、男かーいっ!!

「なぁに、坊や。アタシの美貌にそんなに驚いた?」

お姉様……じゃない、オカマだ、オカマ……に、うふん、なんてウィンクを飛ばされて、オレはぞわわっと鳥肌が立った。

「いや……打ちのめされてんの……」

ああ、再起不能。
見たくもねえモン見ちまった……。

「まあ、アタシの美貌に腰砕けってわけね」

いや、違うんですけど……。
物を言う気力もなくなったオレを尻目に、オカマはバスローブを羽織った。
ああ、悲しいぐらい、その姿はまるっきりセクシーなお姉様そのもので……。

「失礼する。貴殿もしや、キジ殿ではないか?」

すると、それまで静観してたタマちゃんが、オカマの前に進み出た。
オカマはその頭をなでた。

「あ〜ら。どこのワンちゃんかと思ったら、あなたひょっとして神犬の末裔じゃなくて?」

「いかにも。お初にお目にかかる」

見つめ合うタマちゃんとオカマの間に、ちょっとした緊張が走っていた。






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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
あ〜そでしたそでした。お供をgetsするなんて忘れてました。キジがオカマ、すととサルは何に?想像がつきません。鬼もたくさんいそうだしまだまだ緊張は続きそうですね。
動揺する「あるじ」とタマちゃんの対比が楽しいです。
つる
2008/04/13 20:16
感想ありがとうございます。

キジは男の方が派手ですから、オカマか、キンキラキンなド派手男のどっちかしかない!と思いまして、オカマ採用です。
会話の文体がかぶらないし。
猿は……じつはもう考えてあるのですよ、むふふ。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤由愛
2008/04/14 06:44
あ、オカマさんはお供になるのですか☆古武士風の犬に、キンキラのキジ!猿はなんだろ?うわあ、楽しみ!
ia.
2008/04/15 20:59
感想ありがとうございます。

うふふ、オカマがお供になってくれるかどうか、まだわかんないですよ。
猿はただ今考え中です。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤由愛
2008/04/16 06:40
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