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zoom RSS あたしと魔法の皿〜恋、しちゃう?編〜

<<   作成日時 : 2008/04/30 22:54   >>

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家の食器棚を整理していたら、奥から汚い皿が出て来た。
茶色い汚れがべったり張り付いていて、正直あまり触りたくない。

でも、手頃な大きさで重宝しそう。
捨てるなんて、ちょっともったいない。

あたしは、取りあえずつけ置きしようと流し台の前に立ってから、こないだとある店のオープン記念にもらった粗品のことを思い出した。

確か、水だけで頑固な汚れもよく落ちる、というスポンジみたいなやつだ。

いい機会だ、使ってやろう。

ポンジを濡らして軽く絞ってからこすってみる。

すると、ぺったり張り付いていた茶色い汚れが取れてきた。

すごいなあ、現代の科学。

ひそかに感動していたら、いきなり、もくもくもくもくと白い煙が立ち上った。

えっ? 何よ、火事?

驚いて動けずにいると、煙の中から大男が現れた。

「お呼びでございますか、ご主人様」

大男は、あたしに向かってうやうやしくお辞儀をする。

「あ、あんた誰よっ」

「私は皿の魔神でございます。何なりとご用をお申しつけください」

……開いた口がふさがらない。

皿の魔神って。
アラビアンナイトに出て来るランプの魔神じゃあるまいし。

でも、願い事をかなえてくれるみたいだし……。

「ねえ、どんな願い事でも叶えてくれるの?」

あたしは試しに聞いてみた。

「もちろんでございます」

それじゃあ早速、願い事を叶えてもらおうじゃないの。

「じゃあ、あたし、ステキな彼氏が欲しい!」

笑いたい奴は笑え。
あたしは三年前に失恋してから、彼氏ができないのだ。
いい加減、新しい恋がしたい。

「はあ……彼氏、ですか」

魔神は困った顔をしている。
あたし、そんなに難しい事頼んでるかしら?

「失礼。ステキな彼氏……というと、具体的にどのような方を望んでいらっしゃいます?」

「そうね〜」

あたしはしばらく頭の中でイメージをまとめてから、口を開いた。

「背が高くって、カッコ良くて、優しくって、でも男らしくって、あたしを守ってくれる人」

魔神は、あたしの説明に苦笑いした。

「肉体的特徴がずいぶん曖昧ですね」

笑われてる、と思うと、ちょっとカチンときた。

「じゃあ詳しく指定するわ。身長は百八十センチ以上で体つきはやや筋肉質、手足は長くて……」

説明しながら、あたしは、ふと目の前の魔神を見た。

がっしりした大男とばかり思っていたけど、割と……というか、かなりの美男子だ。
太くてきりりとした眉と、切れ長な目元、通った鼻筋、形のいい唇、褐色の肌、長い手足。

今時の線の細い美形とは違う、何て言うか、男らしい感じの美形だ。

……見ているうちに、あたしの頭に別の願い事が浮かんできた。

「……願い事、変更するわ」

「はあ」

魔神は文句を言わなかったけど、妙な顔つきになった。
今まで、願い事を変更する奴なんて、めったにいなかったんだろうな。

「あんた、あたしの彼氏になってよ」

あたしは、はっきり伝えた。
今目の前にいる魔神だって、なかなかあたしの理想に近い男だ。
わざわざステキな人を別に用意してもらうまでもない。
――だけど、まるっきり本気っていうわけじゃない。
半分ぐらいいたずら心、半分ぐらいは「そうなったらいいな」ぐらいの軽い期待で、あたしは唇に言葉をのせた。

「な、なんですって!?」

魔神が、顔を真っ赤にしてうろたえる。

……なんか、妙にかわいい。

「何よ、そういう願い事はダメなの?」

そういえば、『アラジンと魔法のランプ』に出てくる魔神は、「人の気持ちを変えたり、生き返らせたりはできない」って言ってたな。

「い、いや、そうではありませんが……」

「あー」だの「うー」だのうなりつつ、魔神が頭を抱えてる。

……もしかしなくても、物凄く嫌がってる?

「あたしが好みじゃないって言うんだったら、別にいいわよ」

頭を抱える様子があまりに深刻そうで、見ていて申し訳ないような気持ちになって、あたしは取り下げることにした。

「え、ええっ!?」

魔神はますます混乱した顔であたしを見る。
……ゴメンね、そんなに悶絶させるつもりはなかったの。

ただ、ちょっといいかなー、って思っただけで……。

あたしは、無理矢理気持ちを切り替える。

「じゃあ、もう一回最初から条件言うわね。えーと、身長はひゃく……」

言い終えないうちに、魔神の大きな手が、あたしの肩をがしっとつかんだ。
鼓動が、ちょっと不規則に乱れた。

あたしを見る魔神の目には、戸惑いと不安と、それからちょっとした興味みたいなものが見えた……気がした。

「そ、その、では……友達からということで……」

――かくして、あたしには魔神の友達ができた。




たぶん、完。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
これは意外だったわ。すごく新鮮に感じました。だって「魔神」といったら読み手は誰だって同じようなイメージがあるわけでしょう。それを裏切ったんだもの。これ、いいわあ。
つる
2008/05/01 00:09
感想ありがとうございます。

ランプの魔神を引き合いに出した日にゃ、普通はでぶっちょな魔神を思い浮かべますよね。
なんで特に描写してなかったんですが、主人公とラブコメちっくな雰囲気の話を書くにあたり、美男子にしました。
頭にイメージした時、読み手が「おえっ」てならないように。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤由愛
2008/05/01 11:06
こういった人間臭い話、好きです。
魔神って、そういえば男性のイメージが強いですよね。
反面、斧を投げ入れた湖の精は女性しか思い浮かばないし。(さっき、七花さんのとこに行ったから?)

>たぶん、完。

思い出した頃に出てくると、面白いかもしれませんね^^
けビン
2008/05/03 19:23
感想ありがとうございます。
女の魔神って、あまりピンと来ないですね。
斧を投げいれて湖から精が出てくる話は、元々はヘルメスっていう男の神様の話だったらしいですが。
ちなみに、うちでも女神様出てます。

「たぶん、完。」はあくまでも「たぶん」ですからね、あり得ますよ。
二年後ぐらいに書いたりして。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤由愛
2008/05/03 22:38
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