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<<   作成日時 : 2008/02/01 22:37   >>

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「おじさんが、戦に連れて行かれてしまうのよ」

ある日、お母さんがそう言った。
僕は、驚きと悲しみで声も出なかった。

おじさんは、僕のお父さんの兄だ。
僕のお父さんは、僕が小さい時に戦に連れて行かれて、そのまま帰って来なかった。
おじさんはそれから、お父さん代わりになってくれた。
速く走る方法を教えてくれたのも、重い物を運ぶ時の足のふん張り方を教えてくれたのも、おじさんだった。

そのおじさんが、戦に連れて行かれてしまうなんて!

僕はおじさんの所に走って行った。

おじさんはぼんやりと、夕焼け空を眺めていた。

「おじさん!」

僕が呼びかけると、のんびりした動きで振り返る。

「おぉ、どうした、ぼうず」

「おじさん、やだよ! 戦に行っちゃやだよ! お父さんの時みたいに、帰ってこれなくなっちゃうよ!」

「ぼうず、別に今生の別れってわけじゃないから、安心しな」

「本当?」

「ああ。また会えるさ、きっとな」

おじさんはそう言うと、静かな目で僕を見た。


次の日、おじさんは連れて行かれてしまった。
僕はそれから、おじさんが連れて行かれた方向を見ながら暮らすようになった。

今日、おじさんが帰って来るんじゃないか。

そう思いながら、毎日、朝早くから夜遅くまで見ていた。
あんまり見ているから、周りの奴らに笑い者にされたけど、ちっとも気にならなかった。

だけど、何日待ってもおじさんは帰って来なかった。

――おじさんも、帰ってこないんだ。

僕は悲しくて、涙をこぼした。


おじさんが戦に連れて行かれた日から、一年ぐらいが過ぎた頃。

ついに僕も戦に連れて行かれる日がやってきた。

それを聞いたお母さんは元気をなくして、寝込んでしまった。

「お願いだから、どうか無事で……」

「うん。きっと帰って来るよ。だから待っていて」

僕の言葉に、お母さんは弱々しく微笑んだ。



戦場に送り込まれた僕は、思いがけない出来事に遭遇した。

おじさんと再会したのだ。

おじさんはどこかに怪我をしているわけでもなく、故郷にいた時よりもがっしりして立派な体つきだった。

「おじさん!」

僕が呼びかけると、のんびりした動きで首をめぐらせ、こっちを見た。

「ぼうず……なつかしいな。こんな再会の仕方をするとは思わなかったが」

おじさんが、どこか悲しげに呟いて目を細める。
見つめる僕も、きっと悲しい顔をしているに違いない。


僕とおじさんは再会した。
いつかまた会える、という言葉は現実になった。


でも、僕はこの再会を喜べなかった。



だって。


だって、僕とおじさんは敵として戦場にいるのだ!



「ぼうず、ここは戦場だ。身内も恩義も関係ない。これが俺達の、軍用馬の宿命なんだよ!」



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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
いやあ、これは読めなかったですねえ。まさか僕とおじさんが軍用馬だったなんて。
そう言えばおじさんが僕に教えてくれたことって速く走る方法だったり、重い物を運ぶ時の足のふん張り方だったりとあれ?と思わせる伏線が張ってあったんですもんね。うん。その意外性とあとその宿命の物悲しさと二重に楽しめるお話でした。
つる
2008/02/05 00:22
こんばんは^^なるほど!馬だったのか……読めなかったです(笑)読み返すと伏線が張られてますね。企画ご参加ありがとうございました。お祭りですから楽しみましょうね♪
レイバック
2008/02/05 00:25
>つるさん
感想ありがとうございます。
今回はひっそりと伏線を張って、オチを読ませて「ああ!」って納得してもらえるような話を目指しました。
ラスト付近に来ないと、僕とおじさんが馬だってわからないように展開させていくのが難しかった……。
よろしければ、またおいで下さいませ。

>レイバックさん
感想ありがとうございます。
ええ、馬です。
伝書鳩にしようか迷ったのですが、馬にしました。
話は変わりますが。
他の方の企画に参加するのは初めてなので、不慣れなところもあると思いますが、ゆるーく見守ってくださいませ。
現在、まだ書けていません(涙
よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤 由愛
2008/02/06 22:36
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