プラスマイナス1

アクセスカウンタ

zoom RSS ピンポン

<<   作成日時 : 2007/10/05 22:17   >>

トラックバック 0 / コメント 2

ピンポン、と玄関のインターホンが鳴らされた。

私は「はあい」と返事をし、玄関に行く。
いつもなら、よほど気が向かないと応対に出ないのだが、今日はとても退屈していたので出てみる気になった。

ドアを開けると、妙ににこやかな若い女がいて、

「恵まれない子供達のためにご寄付を」

と言われた。

私だってそんなに恵まれているわけじゃないんだが、まあ、自分より未来がある者を助けてやるのは良いことだろう。

私はふところから一枚取り出し、渡してやった。
一万円札だが、仕方ない。
今はこの種類以外持っていないのだ。

「マニグマ様があなたに幸福をもたらすことでしょう」

金を受け取ると、そう言って女は去って行った。

マニグマだかアライグマだか知らないが、これぐらいのことで幸せにしてくれるのなら、世の中はもう少し明るいのではないだろうか。
私は部屋に引っ込み、お茶を飲むことにした。

すると、またもピンポンと音がした。

ドアを開けると、スーツ姿で人相の悪い男がいて、何やらつまらない品物を勝手に並べた挙げ句、

「買わないと帰らない」
「買わないなら別の客を紹介しろ」

とドスのきいた声で脅し始めた。

無礼にも程がある。
武力でもって叩き出すことも考えたが、それが元で警察のご厄介になるのも面倒だ。

私はまた一枚取り出して渡してやった。

男は品物を全部置いて、上機嫌で去って行った。
こんなもの一枚で感情を大きく動かされるなんて、病気じゃないだろうか。
私は、取りあえず男が置いて行った物を片付けた。

しばらくすると、またピンポンと音がした。

ドアを開けると、困り果てた顔の若者がいて、

「故郷にいる父が危篤だが、帰るための交通代をすられてしまった」

と嘆いた。

目の前で今にも泣きそうな顔をされてはたまらない。
かわいそうというよりも、うっとうしい。

私は、また一枚取り出して渡してやった。

目を輝かせてお礼を言い、若者は去って行った。
ドアを閉める間際、そっと目をやると、彼の行く手に明らかに品行方正とは言いがたい若者が数人いて、彼が、

「やったぜ」

と笑いをこらえていた。

たかだかこんなもの一枚のために父親を危篤にするとは、恐れを知らない奴だ。
私は、彼の父親に同情した。

そうこうしているうちに、日が暮れた。
私はテレビをつけ、どっかと腰を降ろした。
今日は……三枚使ったな。
まったく、金がらみの話ばかりの一日だった。

私は、尻尾の毛づくろいに専念することにした。

私に金をもらった奴ら、今頃どうしているだろう。
上手くかすめ取ったといい気になっているだろうか。
まったく、馬鹿馬鹿しい。
明日になれば、あの金は全て葉っぱに変わるというのに。

明日はあちこちで混乱が起こるかもしれないが、そんなこと、私の知ったことではない。
そもそも、タヌキ相手にたぶらかそうとするから、痛い目にあうのだ。
自業自得である。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。
わたしもでないですむなら電話と玄関先の応対は辞退したいです。ほんと間の悪い時ばかりそれはやってきます。
そうか。狸になればいいんだ。
つる
2007/10/07 02:26
感想ありがとうございます。
私も電話応対と玄関先の応対、どっちも嫌です。
なるべく出ないようにしています。
たまーに運悪く自分が出るしかない状況で、しかも相手が怪しいセールスとかだったりすると死にたくなります。
電話の時みたいに子供のフリしてごまかせないし。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤 由愛
2007/10/08 22:32
ピンポン プラスマイナス1/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる