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zoom RSS それ見たことか

<<   作成日時 : 2007/06/29 23:31   >>

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ある日のこと、彼は、夢を見た。

それは、世界が破滅する夢だった。

突然、空から雨が降ってくる。
しかし、ただの雨ではない。
その雨粒に当たれば、人は、たちどころに皮膚がただれ、聞くに耐えない断末魔の声を上げながら絶命していくのである。
それならば建物の中に逃げ込めば安全と思われそうだが、その雨は恐ろしいことに、建物すらも溶かしていく。
逃げ惑う仲間達。
それを容赦なく飲みこんでいく雨。

彼はその光景に恐怖し、うなされ、ようやく目を覚ました。

(あれは、ただの夢なのだろうか)

起きたばかりの頭で、彼は真っ先にそう考えた。
ただの夢とは思えない、何か、真に迫るというか、妙に現実味を帯びている気がしてならないのだ。

(あれは、もしや正夢なのではないか)

彼は、そう結論付けた。
正夢と思われる以上、彼はじっとしていられなかった。
夢の中で見た仲間達の顔を思い出すと、胸が痛むのだ。
彼は、笑われてもいい、知らせることであんな事態を避けられるのなら、知らせるべきだと考えた。

彼はすぐさま仲間達のところに走り、見た夢のことを話した。
しかし、当然というべきか、仲間達は皆、彼の言葉を信じようとはしなかった。

「寝ぼけてんじゃねえよ。そんな雨、降るわけねえだろうが」
「そうよ、ただの夢じゃない」
「お前さん、夢と現実を混ぜこぜにするのはやめなさい」

「でも、あれがただの夢だなんてどうしても思えない。きっと、何かが警告しているんだ」

信じてくれない仲間達に食い下がっていると、仲間グループ内でのリーダー格が苛立ったように立ち上がった。

「てめぇ、せっかく皆が楽しい気分で盛りあがってるっていう時に、つまんねぇ話しやがって。今すぐその話をやめないと、痛い目にあうぜ」

リーダー格にすごまれ、彼は思わず怖じ気づく。

「でも、もし本当に起こったら……」

ぎろり、とリーダー格は彼を睨む。

「じゃあ、本当に起こるっていう証拠があんのかよ」

そう言われると、彼は黙らざるを得なかった。
彼が見たのは、第三者に言わせれば「ただの夢」でしかないのだから。
証拠を見せろといわれても、見せられるものではない。

――彼は、侮蔑の視線と嘲笑を投げつけられ、すごすごと仲間グループの元から立ち去ることになった。

笑われてもいい、と決意して話したことなのに、現実にそんな態度を取られると、心は深く傷つくものだ。
とぼとぼと道を歩きながら、彼は少しばかり泣きそうになっていた。

「あれがただの夢だなんて、どうしても思えない。でも……」

信じさせるに足りる証拠がなければ、どうしようもない。
彼は落胆するより他になかった。

と、不意に彼はチリッとした痛みを頬に感じた。

なんだろうと思って頬に手をやると、指先にぬるりとした感触があり、さらに痛みの度合いが増した。
わけもわからず立ち尽くしているうちに、痛む箇所が、しだいに増えていく。
驚いて辺りを見渡していると、足先のアスファルトに落ちてきた水滴が、ジュッと音を立てて、水の当たった範囲を溶かした。

その瞬間、彼は悟った。

――降ってきた。

それも、ただの雨などではなく、彼が夢の中で見た、人も物も溶かしてしまう、あの恐ろしい雨が。

悲鳴があがる。

最初は数人のものだった悲鳴が、だんだん人数を増し、音量を増して満ちていく。
――さながら、雨音のように。

その中に、聞き覚えのある悲鳴があることに気付いて、彼の目にギラギラとした光が浮かぶ。
口元が、引きつるようにして笑みの形を作った。


「ほら見ろ! 僕の言った通りじゃないか! 僕が言ったことをちゃんと聞いていれば、痛い目にあわずに済んだかもしれないのに、今頃慌てやがって、このマヌケどもが! 僕はちゃんと教えてやったんだからな、悪いのはお前らだからな!」

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