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zoom RSS ウソのラブレター from 私 to B君

<<   作成日時 : 2007/04/26 09:30   >>

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わたし、今、とっても悩んでるの。

同じクラスに、B君っていう男子がいるんだけど……このB君が、わたしにイジワルばかりするから。

席替えでわたしの前の席になれば、前から渡されてくるプリントを回してくれないし、後ろの席になれば、わたしが差し出したプリントを受けとらなかったり。
仕方ないから、そういう時は、わざわざB君より後ろの席の人に言って、プリントをよこしてもらったり、受けとってもらったりするのよ。
目立っちゃうし、何より悲しい。

どれだけわたしのこと嫌いなのよ? って思うわ。

他にも、わたしの持ち物を取り上げてひやかしたり、授業中に小さくちぎった消しゴムのカスを投げてきたり、わたしがいない間に机の中にクモやカエルを入れておいたり……。

中学生にもなって、子供みたいなイジワルの仕方よね。
そう思っても、ツライものはやっぱりツライ。

女子がみんなでB君に注意をしてくれたり、見かねた先生が注意したりしてくれたけど、ちっとも効き目ないの。

わたし、だから、決めました。
イジワルなB君に、きっちり仕返しをしてやろう、って。

仕返しって言っても、暴力をふるうわけじゃないのよ。
叩いたり蹴ったりなんか、したくないもの。
だから、恥をかかせて、こらしめてやるの。
ウソの名前を使って、ウソのラブレターを書いて、机の中に忍びこませてやるの。
書く文章だって、もう決めてるんだから。

『B君へ
 
 とつぜん、こんな手紙を出して、ごめんなさい。
 B君のこと、ずっとずっと、好きでした。
 もし良かったら、今日、公園の前に来てください。
 お話がしたいです。
 待ってます』

……こんな感じ。


それと、文章は、そのまま手書きにしたら、わたしの文字だってばれてしまうかもしれないから、パソコンで文章を打って、紙に印刷して、その紙を封筒に入れるの。
封筒には何も書かないで、そのまま出すわ。

学校帰り、電車でちょっと離れたところのお店で、使う封筒を選んで……これで、準備オッケー。

家に帰ったら、ご飯とお風呂をすませて、部屋で作業。

これを見たB君は、一体どんなマヌケ顔をするのかしら。
慌てるのかしら、照れるのかしら。
本気にして、公園に行っちゃったりして?
確認のために、公園前をさりげないフリして通ってみなくちゃね。

そう考えながら作業をしていたら、あっという間に終わった。

――これで、完璧。

わたしは、きっちりと封筒に封をして、カバンに入れた。
あとは、これをB君の机に忍びこませるだけ。

ああ、明日、学校に行くのがとても楽しみ。

わたしは、わくわくしながらベッドに入った。



次の日は、いつもより三十分以上も早く、学校に行った。
だって、誰かが先に教室にいたら、この手紙をB君の机に忍びこませることができないんだもの。
誰にも見られないうちに、この計画を完了させなきゃ、意味がないの。
わたしは、誰にも見つからないように、ってドキドキしながら、B君の机の前に立った。

すう、と深呼吸して、B君の机の引出しを開ける。
男の子の机の引出しの中って、もっとぐちゃぐちゃなものだと思っていたけど、B君の場合は、そうでもなかった。

わたしは、引出しの中にウソのラブレターをそっと入れると、素早く、だけど音をたてないように気をつけて、戻した。
それから、もう一度、あちこちを見回す。
――誰もいない。
ふう、緊張したわ……。

あとは、オープンスペースになってる図書室の隅で本を読みながら、時間をつぶした。
皆が来る時間帯になってから、わたしは、ついさっき学校に来たかのようにカバンを持って、教室に入った。

すると、B君の周りに、男子が大勢集まってた。

「すっげー、ラブレターかよ」
「モテモテじゃん!」
「誰からだ?」
「見せろよ!」

周りで騒ぐ男子達を、B君はじろりとにらむ。

「……うっせーな、あっち行けよ、バカ」

な〜んだ、つまらない反応。
わたしはちょっとガッカリして、席についた。
今のわたしの席は、B君から何列か離れた廊下側。
プリントを回してもらえなかったりとか、授業中に消しゴムのカスを投げつけられるなんてイジワルをされる心配がないから、安心。
……実は、この前の席替えでくじを引いた時、B君の隣の席になっちゃったのを、半泣きで変わってもらったの。
あの時はもう、本気で人生に絶望しちゃったわ。

「B君にラブレター出すなんて、シュミわるーい」
「B君って、本気でイジワルなのにね」

女子の何人かが集まって、そんな話をしてるのを聞き流しながら、教科書とノートを引っ張り出してると、チャイムが鳴って、先生が入ってきた。

「はいはい、みんな、どうしたの? 席につきなさーい」

手を叩きながら先生が言うので、皆、お話をやめて、それぞれの席についた。

授業中、ふと、視線を感じて顔を上げると、B君がわたしを見ていた。
別に、珍しいことじゃないわ。
馬鹿にしてるのがよーくわかる、にやにやした顔でこっちを見てたり、口の動きだけで悪口言ってたりすることもあるから。

……だけど、今日のB君は、何もしなかった。
わたしと目が合いそうになると、急いで視線を逸らしたり、顔をどこかに向けたりしていた。

ああ、きっと、あの、ウソのラブレターのせいね。
自分のことを好きだっていう女の子のことで、きっと、混乱して、変な行動とか取っちゃうんだわ。

ちょっとひかえめでつまらないけど、まあ、いつもと違うB君が見れたから、仕返しは一応成功、かな?


――放課後、B君のその後の行動を確かめるべく、公園をめざして歩いていると、

「おい!」

後ろから、B君の声がした。

……えーと。
何の用事だろう。
まさか……あのウソのラブレターがバレちゃったのかしら……?
そ、そんなはずないわ、だって、絶対にわたしだってわかるはずがないもの。

「聞こえてんだろうが、バカ!」

仕方ないから、わたしは振り向いた。
B君が、大股にずかずかと歩み寄ってくる。
……ちょっと、怖い。

「何……?」

B君は、頭をボリボリかくと、ちょっと困ったような、赤い顔で、

「バカじゃねえの、お前」

ぼそ、とつぶやいた。

「……え……?」

一体、何がどうして、いきなりそんなことを言われなきゃいけないんだろう?

固まってると、B君が、あのウソのラブレターをつきつけてきた。
ギクリ。
一瞬固まってしまった。

「こ、これが……?」

あやうく正直に言いそうになって、わたしは考え直した。
冷静に考えると、まだ、バレたとは決まってない。
そうよ、そうだわ。
だって、このラブレターのどこにもわたしの名前なんかないし、封筒だって何も書いてないんだから。
その証拠に、今B君が見せている封筒の表側には何も書かれていない。

「これが、どうしたの?」

シラを切ってみせると、じれったそうにB君は封筒を引っくり返して裏側を見せた。

「な……」

B君がつきつけた封筒の裏には、私の名前がしっかり書いてあった。
私の文字で。

…………………こ、これって……?

真っ白になった頭の中に、不意に、ウソのラブレターを作っていた時の様子が、浮かんできた。

パソコンで文章を打って、印刷して、それをたたんで、封筒に入れて――

入れて――?

…………。

ああっ!

郵便に出す時の感覚で、封筒の裏に、自分の郵便番号と住所と名前を書いちゃったんだ!

わたしのバカ! ドジ! マヌケ!


「ううううウソウソウソ! これウソ! 返してーーっ!」


……ああ、神様。
悪いことはするもんじゃない、ってことでしょうか。

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