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zoom RSS 新入りさんいらっしゃい

<<   作成日時 : 2007/03/31 22:56   >>

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「皆さん、初めまして。新入りですが、よろしくお願いします」

「ま、可愛い坊やだこと。遠慮しないで、こっちいらっしゃいよ」
「は……はあ」
「恋の相手が見つからないからと言って、新入りをからかって遊ぶな」
「何か言った? この前花屋のお嬢さんにフラれた、やもめ男さん」
「うぐぐっ……」
「あっはは〜、これで何連敗だい、おっさん」
「おっさん、頑張ってくれよ。おいら、『いつかおっさんの恋が実る』っていう方に賭けてるんだ」
「貴様ら、私の恋をネタにして遊ぶな!」
「これこれ。新入りが除け者にされて困っておるではないか。気を使ってやりなさい」
「い、いえ、別に除け者にされたなんて思ってるわけじゃ……」

「いやいや。その場に不慣れな新入りを気づかうのは当然のこと。それができないのでは、まだまだ未熟という証拠。まったく、近頃の若い者はなっとらん。昔は、年輩の言うことに素直に従い、仲間同士、力を合わせて助けあい……」

「……また、じい様の説教が始まったよ……」
「始まると長いのよねぇ。嫌になっちゃうわ」
「ああ言ってるけどな、たぶん自分の若い頃だって、今のオレらと変わんねぇぜ」
「まったくだ」
「ってことは、おいらも年取ったら、あんな風にやたら愚痴っぽくなるのかなあ」
「だろうな」
「やだなあ。おいら、もっと気楽に生きたいよ。ね、そう思うでしょ?」
「え、えぇと……」
「じい様のことは気にしなくて良いよ。君もこっち来ておしゃべりしようよ」
「でも……放っておくなんて、何だかかわいそう……」
「気にすんな。何せ年取ってっからよ、説教してるうちに寝ちまうのさ」

「ああ、昔は良かった。礼儀など、教わるまでもなく自然に身についたものだ。それが今では……いちいち言われないと……むにゃ……ぐー……」

「……ほらな」
「………………」

「じい様が起きた後で、『感服しました』とか『感動しました』とか適当に言っとけばいいのよ。ああいうのを上手くあしらうのも、世渡りの一つね」
「はあ……」
「深く考えなさんな。ハゲるぞ」

「ところで、君はどこから来たの?」
「西の地区からです。この辺りって、西の方とは違ってビルとかが多いし、車も多いし、なんだか、うまくやっていけるか心配で……」
「大丈夫よ。慣れるまで、あたしが面倒見てあげるわ」
「……お前に頼むと、高くつきそうだな」
「何言ってるの。これでもかってぐらい色々と優しく教えてあげるわよ」
「……新入り。この年増には近寄るな」
「違う意味でイロイロ教えられちまうかもしれねぇしな」
「その可能性が高いな」
「……あんた達、黙って聞いてれば……!」
「まあまあ、新入り君は皆で面倒みようよ」

「こらあ! 何してやがるっ!」

唐突に、でかい声が響き渡った。
新入り以外の顔色が変わる。
新入りは何のことか分からなかったが、他の連中のと怯え方に、ただならぬものを感じて警戒した。

「うわ、ヤベ!」
「あらやだ、うるさい奴が来ちゃったわ」
「じい様起きて! 緊急事態だよ!」
「……むにゃ……およ? わしは確か……」
「今はそれどころではない、あいつが来た。逃げなければならないぞ」
「何っ、それは大変!」
「あの……逃げる、ってどういうことですか?」
「そのままの意味だ。一刻も早くここを去らなければ、恐ろしい目にあう」
「え、ええっ?」
「無事に逃げて、また明日、ここで会おうね!」
「は、はい!」

慌ただしく、全員が散り散りになって、その場を逃げ出した。




一方、怒鳴り声を張り上げた側。

「ったく、また野良猫が集まってやがったな……ションベンだのクソだのしやがったら、ただじゃおかねぇぞ」

作業服姿の男は、廃工場の中で一人、怒りをはらんだ口調で呟きながら、先ほどまで猫たちがたむろしていた場所を睨むのだった。


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