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zoom RSS 砂漠の歌

<<   作成日時 : 2007/03/21 22:50   >>

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やあ、こんにちは。
退屈なら、僕の話を聞いて行かないかい?
もちろん、無理にとは言わないよ。
嫌になったなら、すぐさま無視してどこかに行ってしまっても良いんだから。

じゃあ……『砂漠の歌』の話をしようかな。
あ……『砂漠の歌』って言っても、歌謡曲じゃないよ?

……似たような雰囲気の歌が、昔、あったんだ。
まあ、知らないかな。


その昔、砂漠の中に一つの国があった。
その国は砂漠地帯にも関わらず、大きな川が国の中心部を通っていたから、水の心配がいらなくて、大いに栄えていたんだ。

その国に、一人の漁師がいた。
漁師と言っても海じゃなく、川で魚を取るんだ。
彼は、いつも父親や兄達と共に漁をしていて、なかなかの腕前だった。

ある日のこと。

彼は、その日、珍しく一人で川へ出かけた。
家では父親と兄達が網の破れ目を直していてね、本当なら彼も手伝ったほうが良さそうなもんだけど、昼飯用の魚が必要だったもんだから、彼が指名されたわけ。
彼は川べりに立つと、ばさあ、と網を投げて、それをたぐり寄せ、網を広げた。
その中には泥とか小石とか、魚以外の物も結構混じってたんだけど……一つ、そこにあるのは明らかに不自然極まりない物があった。

何だと思う?
……銀の笛さ。

突然目の前に現れた高そうな品に、彼は驚き戸惑った。
こう言ったかもしれないね。

「やや。これは一体、どういうことだろう」

こんな銀の笛が、ほいほいと落ちているとは考えにくいよね?
どこかの金持ちか王族が、川に落としてしまったのか。
はたまた、泥棒がこれを盗みだし、追われて逃げきれぬとみて川に投げたのか。

……どっちだと思う?
まあ、答えは後で教えるけどね。

彼は、善良な人だった。
ネコババなんて考えず、彼は警備の兵の詰め所に出向いたんだ。
落し物にせよ、泥棒が盗んだものにせよ、自分のものではないのだから、届け出なければと思ったみたいだね。

「ちょっとすいません、今、川で網を投げたらこんなものがかかりまして……」

なんて言ったのかもしれない。
ただ……その誉められるべき行動が、彼に悲劇をもたらすのだから、人生っていうのは何なのか、ちょっとわからない。

警備の兵は、どういうわけか彼が盗んだものと決めつけた。

違うんだと言っても信じてくれない。
事情を話しても聞く耳を持たない。

あわれ、彼は砂漠のど真ん中に打たれた杭に繋がれ、ひからびて死ぬまで放置されるという刑罰を受けたのさ。

「ひどい話だ、正直者が馬鹿をみたのか」って?

まあまあ、まだ続きがあるんだよ。

彼が死んだ後、砂漠では妙な現象が起きるようになった。
ボー、というか、オー、というか、何とも悲しげな、恨めしげな声みたいなものが聞こえるようになったんだ。
それだけじゃない。
その音が止んで、静寂が戻った後には……猛烈な砂嵐が襲ってくるんだ。
そのすさまじさといったら、粗末な作りの家なんかは、簡単に吹っ飛ばされてしまうぐらいのものだった。

何度か砂嵐に見まわれているうちに、人々の間で、噂が広がった。
砂嵐の前に聞こえる恨めしげな声みたいなもの……あれが、どうも処刑されたという漁師の声に似ている、と。
そこから発展して、「あの漁師は無実だったんじゃないか」って新しい噂が立つのに、時間はかからなかった。

それで念の為と調べなおすと……なんと、漁師を泥棒と決めつけた、あの警備の兵が盗んだ真犯人とわかったんだ。

金持ちの家からこっそり持ち出したのを川底に隠しておいて、後で回収する予定だったのを、あの漁師に発見されたので、罪をなすりつけることにしたんだって。
全く、あくどいことをするものだね。
国では真犯人である警備の兵を処刑して、あの漁師の骨をきちんと供養して事態を収拾しようとした。

……ところが、漁師の骨は砂中深く埋もれているのか、どうしても探せなかった。

おかげで砂漠はいつまで経っても砂嵐の恐怖から逃れられなくて、結局、王国は砂に飲まれて滅んじゃったんだ。
砂漠の歌っていうのは、砂嵐の前ぶれに聞こえる、恨めしげな声みたいなもののことだよ。
いつからか、そう呼ぶようになったらしい。
濡れ衣を着せられて死んだ漁師が、無念さと恨みつらみを歌ってる、ってことなのかな。


……と、僕の話はこれでオシマイ。
どう? 退屈しのぎになったかな?

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