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<<   作成日時 : 2007/02/27 23:29   >>

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私は、遊園地の入場門の前にいた。
門の向こうには噴水があり、そのまた向こうにメリーゴーランドが見える。
観覧車やジェットコースター、お化け屋敷にゴーカートなんかもあるのだろう。

私は、頭をかいた。

一体、何故私はこんな所にいるのだろう。
出勤時間に遅れそうで、愛車を飛ばしていたはずなのに。

立ち尽くしていると、後ろから子供が数人、キャアキャアと楽しそうに歓声を上げて私を追い抜いて行った。

……もしかして、仕事に疲れたあまり、私は無意識でここに来てしまったのだろうか。
そういえば、最近仕事の量が急に増えて、しんどい思いをしている。
今日、出勤に遅れそうになったのだって、連日の深夜までの残業疲れのせいだ。
眠っても疲れが取れなくて、なかなか起きられないのだ。
……最近の猛烈な仕事振りを振り返ると、途端に会社に行きたくなくなった。
携帯で会社に連絡し、体調不良(他にうまい言い訳が浮かばなかったから)を理由に休む事を伝えると、上司は何やらぶつぶつと文句だか小言だかを言いながら、了承してくれた。

私は、入場券を買い、遊園地の中に入ってみた。
風船を配っている着ぐるみのマスコットとすれ違い、若いカップルを遠巻きに眺め……何に乗ろうかとウロウロしていると、巨大なテントが目に入った。
何かイベントでもやっているのかと覗いたら、黒い燕尾服にシルクハットのおじさんが奥のステージで手品をやっていた。
観客の数は、はっきり言って少ない。

「あ、今入ってきた方、あなた、ステージに来てください」

指名され、私はおずおずとステージに上がる。

「では、こちらの方に箱に入っていただきます」

なんだ、箱の中に人を入れて、あちこちから剣を刺すマジックか。
私が箱の中に入ると、おじさんはフタをしめた。
――私の世界が、窮屈で真っ暗なものになる。

「さてさて、それでは皆さま、ご覧あれ」

その声の後、あちこちから剣が刺しこまれた。
剣は私の体をかすめる位置を通る。
これで食べているのだもの、失敗なんてするはずがない。

そう思っていたら、一本が足に突き刺さった。
――痛い。
私は声を出して、おじさんに刺さっていることを伝えようと思った。
しかし、どんなに口を開けようとしても、口は開かなかった。
そうこうしているうちに、剣はもう片方の足に刺さり、脇腹にも突き刺さった。

痛い。痛い。痛い。
本当に、痛い。
激痛が、脳みそを焼き尽くしそうだ。

私は、どうにか叫ぼうとあがいて――目を覚ました。

どうも、車の運転席で、ハンドルに突っ伏して寝ていたらしい。
やれやれ、どうやら夢だったらしい。
私は、全身がだるくて力が入らず、またハンドルに突っ伏した。

……それにしても、なんだか寒い。
それに、わき腹が痛い。
なんだか、腸が潰れるような感じだ。
私は、そこに手をやった。

指先が、ぬちゃ、と濡れた。

気になってさらに指でまさぐると、固い金属の棒に触れた。
何故、車内にこんなものがあるのだろう。
私は、視線を腹部に落とした。

ドアを突き破った鉄パイプが、私の脇腹に刺さっている。
両足が、潰れた車体の前方部分とシートの間でぐちゃぐちゃになっている。

「大丈夫か!」
「早く、救急車呼んで!早く!」
「しっかりしなさい、きっと助かるから! 希望を捨てるんじゃないぞ!」

徐々に騒がしくなってきた世界の中で、だんだん傷の痛みが激しくなってきた。

――私は、うめき声を上げようとした。

だけど、夢の中で箱に入っていた時のように、口がどうしても開かなかった。

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