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zoom RSS 節分異聞

<<   作成日時 : 2007/02/01 23:05   >>

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黒い布の上に細かいガラスをばらまいたように、いくつもの星がきらめく宇宙。
その中に、巨大な銀色の宇宙船が浮かんでいた。

「それでは、次はあの星を支配下に置かれるというのですね」

その船長が、巨大なモニターに映る人物と会話をしていた。
相手は、彼のボス、総統である。
彼らはどちらも角と牙を持ち、皮膚は赤く、体つきは巨大で筋肉隆々としている。
――彼らの星では、これが普通の体格である。

「ああ、あの青い星……そこに住む連中は『地球』などと呼んでいるが、地中に貴重な資源が埋まっている。それに奴らが気付けば、たちまち使い果たしてしまうだろう。そうなる前に我々が頂くのだ。抵抗さえしなければ、地球人達の命は助けてやろう」

「だからと言って、野放しになさるわけでもありますまい」
「当然。彼らには現地での労働力となってもらう」
「さすがは総統。で、いかにして侵略しましょう。この船にも武器を積載していますが」

総統は、船長の態度を落ちつかせるかのように片手を前に出した。

「まあ待て。そう事を急いてはいかん。まずは連中の幼体をさらってきて、成長の様子や肉体の構造を調べるのだ。奴らの弱点を調べ尽し、最小限の労力であの星を手に入れる」
「では……早速、幼体を捕獲する任務を、部下に命じましょう」
「うむ。任せたぞ」
「お任せください、総統」

かくして、船長に命じられた部下三名は、地球に降り立った。


「船長、報告したいことがございます」

派遣された部下達が戻ったのは、翌日のことだった。
全員、身体中に焼けただれたような炎症がある。
激痛が絶え間なく襲ってくるのか、部下達は時折、短くうめき声をあげていた。

「どうした、何があった」

船長の質問は、当然であった。

「船長……あの星は手出しをなさらぬ方が賢明かと……」

部下達の中で一番落ち着いた雰囲気の者が、意見を口にする。

「何故だ。良い、話してみろ」
「はっ。実は、我々はとある島に潜入したのですが……街のいたる所で、あの恐ろしい毒の実を売っていたのです!」

言い終えて、その恐ろしい光景を思い出したのか、部下達は身震いをした。

「なに、あの、素手で触れるとたちまち体が腐りだすという、毒の実を?」

船長は思わずといった様子で椅子から身を乗り出す。

「……それだけではありません。幼体を捕獲しようとある建物に侵入したところ、そこにいた大勢の幼体が、毒の実を素手でつかみ、集団で投げつけてきたのです!」
「我々の体をご覧下さい。携行した武器を使う暇すらなく、一方的にやられたのです」

船長は、もじゃもじゃのあごヒゲをなでる。

「うぅむ。地球人に毒の実への耐性がある、ということか。それは知らなかったな……」
「船長、我々は幼体を捕獲する任務に失敗しました。是非、罰してください」

表情を引き締め、頭を下げる部下達に、船長はあごヒゲをなでる手を止めた。

「いや、それには及ばん。お前達は重要な情報を持ち帰ってくれたのだ。よくやってくれた。お前達は今すぐ処置室に行って治療に専念しろ」

部下が部屋を出ていくのを見届けると、船長は、長いため息をついた。
総統に報告しなければならない。

――毒の実への対処法がない以上、地球への侵攻は、見送るべきである。



一方、彼らに侵入された地球の建物内にて。

「今年は市役所の人、気合い入ってたわねぇ」
「ホントよね。体なんか赤く塗っちゃってさ。角とか、牙とか、金棒とか、なんか本物みたいだったよね」
「すごい迫力だったわね。子供達に豆を投げられて逃げ回るところなんか特に」
「……でも、予定よりやたら早く来たからビックリしたわ」
「そう言われると、そうね。それに、いつもなら、真っ先にこっちに挨拶に来るのに、今回はいきなり園児室に来るんだもの」
「でも、不意打ちの方が盛り上がって良いんじゃない?」
「……ねえ」
「どうしたの?」
「今、市役所の人から電話あったんだけど……豆まきの鬼役の人、今日、インフルエンザで来られなくなったんだ、って……」

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