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zoom RSS 好奇心は何を殺すか

<<   作成日時 : 2016/03/05 14:15   >>

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「船員ナンバー4、貴様を惑星調査の任務上の重大な規則違反で拘束し、母星へ送還する」
「ま、待って下さい船長。どうして僕が。身に覚えがありません」
「……発展途上惑星調査法の規則、第三条を言ってみろ」
「は、はい――第三条、発展途上にある文明惑星に対し第一条第二項に基づき高度な文明を持つ惑星からの干渉を禁ずる」
「なぜ禁止だと思う」
「自力で生み出し発展させた文明だけが、維持できるものだからでしょう。高度な文明惑星から干渉を受けた文明は、一足飛びに発展しますが現地住民が自力で維持するのは困難です」
「維持できない文明をもたらされた惑星の末路は知っているか」
「植民地となるか、滅亡するか……」
「貴様、そこまでわかっていながら発展途上惑星の住民に我々の惑星産の物質を与えたというのかっ」
「そんなことは断じてしていません! 一体何の話なんですか、濡れ衣はやめて下さい!」

「……どうやら嘘ではないようだな……ということは、あれはこっそり持ち出されたということか」
「何を、ですか。だいたい、宇宙船の中の物を持ち出されないよう、徹底して調べているはずですよ」

「前回の調査のことを覚えているか」
「前回というと、第三惑星の件ですね」
「貴様、職務中に菓子を食わなかったか」
「……空腹でしたので、小さい物を」
「それだ」
「は?」
「連中のうち誰がそうしたかはわからんが、貴様の食べていた菓子の空き袋が持ち出されたんだ。一部、小さくちぎってな。小さかったので見落とされたらしい」
「そんなことが……」
「彼らはその物質を自分達なりに分析し、自分達の文明に取り込んでしまったのだ。その結果、あの惑星の文明レベルは飛躍的に進化した。飛躍的なんて言葉では甘いほどのものだ。君はつまり、発展途上にある惑星文明への干渉を行ったことになる。ことは重大だぞ」

壁一面に、青い惑星が大写しにされる。
あっという間にそれは地表の状況へと切り替わった。
そこには、彼らにとっての菓子の空き袋――だがその星に暮らす者達が自力では生み出すことのできなかったそれは、薄くて丈夫な装甲となって住民の身体を包んでいた。
彼らは互いに激しく撃ち合いをしており、傍らには装甲をまとわぬ者や装甲を損傷した者の死体が積み上がっていて、平和な暮らしとはほど遠いことがうかがえる。

「なんてことだ」

船員ナンバー4はつぶやき、うなだれた。
そして、ちらりと思い出す。調査のためにランダムに選び出し、この宇宙船へと捕獲した住民達のことを。
彼らは自分達に対して怯え、船内のあらゆる物に対しておっかなびっくり触れてみたりしていた。
未知の物への恐怖と好奇心に揺れる姿は、まるで幼子のようでほほえましくもあったのだ。

彼らの身体や持ち合わせている知識のばらつき、あるいは共通している部分を調べた後、宇宙船に捕獲されたという記憶を消し、何か持ち出そうとしていないかという身体チェックを行い、元の場所へと帰した。
だが、こっそり菓子の空き袋の一部を持ち帰った者は、記憶がなくとも見たことのないそれが手元にあるのをいぶかしんだのだろう。好奇心に手を引かれるがまま、調べたのだろう。
そこから、全てが狂ってしまったのだ。

壁に映された映像の中で、装甲をまとった住民達の足下がいきなり爆発を起こす。
その上空には金属の塊としか言いようのない飛行体が滞空していた。おそらくあの飛行体から、何らかの爆発物が投下されたのだろう。
あの飛行体に使われている外装も、あの菓子の袋から応用された物だろうか。

「母星に送還された後、貴様はしかるべき場所に拘束される。貴様の弁護をする者は政府によって手配されるだろう」

船員ナンバー4はもう、船長の話など聞いていなかった。
なお殺戮の続く映像に、ただただ涙を流すだけだった。

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