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zoom RSS 無理解なコンタクト

<<   作成日時 : 2014/10/25 14:14   >>

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ある日、地球に異星からの宇宙船がやって来た。
「すわ侵略か」と色めき立つ地球人の前に姿を現した異星人は、まず初めに侵略目的ではないこと、敵意もないことを伝えてきた。
それならばと地球側は生物に影響を及ぼさないため砂漠地帯への着陸を提案し、彼らもそれを承知した。
こうして地球に降り立った宇宙船から姿を現した異星人は、地球の人間とほぼ変わらぬ姿だった。
ただし顔つきはとても神経質そうで、愛想笑いすら浮かべなかった。
「これは機嫌を損ねたら厄介そうだぞ」と誰もが思ったほどである。

ともあれ、人類が生まれて初めて迎える来訪者には違いない。
地球側は大急ぎで代表を立て、交流を試みた。

「地球へようこそ!」

地球側の代表者は笑顔で歓迎の意を伝えた。

「挨拶は無駄です。初めにこちらへ来た時に敵意はないと伝えたでしょう」

異星人の代表である宇宙船の船長は、すげなくそれを切り捨てた。
代表者は内心「なんだこいつは」と腹を立てたが、顔には出さずに済ませた。

「そうでしたね。これは失礼しました」
「私は怒っているのではなく、事実を指摘したまでです。謝罪の必要はありません」
「そ、そうですか。いやあ、あなた方は心が広いのですね」

代表者が笑みを浮かべると船長は「やれやれ」と言わんばかりに頭を振り、ため息をついた。
「無駄なことを」とあきれている様子である。
どうやら愛想も社交辞令も無駄と切り捨てているようだ。
あちらの惑星では、さぞ事務的な態度と会話をする人ばかりだろうな、と代表者は思った。

「で、地球へはどういったご用向きでいらしたのでしょう?」
「我が王の命令で、あなた方が我々と文化交流を持つにふさわしいかどうか、数日かけて見極めよ、と派遣されたのです」
「なるほど」

これは地球にとってまたとない機会だろう。
このままでは資源を食い尽くすのも時間の問題と言われ、正直なところ頭打ち状態の文明レベルが、一気に飛躍するチャンスだ。
これを機に本格的に宇宙に出ることができれば、未知の資源が手に入り、慢性的に抱えている様々な問題も解決できるかもしれない。

「それはぜひ! いやあ、地球の文化はまだ未熟ですし、そちらの高度な文明に触れることで――」
「決めるのは私ではなく王ですので」

そこでその日の面談は終わった。
代表者はこの案件を持ち帰り、地球と交流を持つことで得られるメリットをアピールするため、各地の名所巡りを計画し、芸術品を選りすぐり、各国の美味しい料理を提供できるよう腕の立つコックを何人も呼び寄せ、万全の態勢で臨んだ。

だが全ては空振りに終わった。
異星人達は見るもの聞くもの触れるもの全て、「無駄なことをしている」と取ったのだ。
名画を見ては絵の具の山とみなし、音楽は全て騒音と言い切り、器は大中小あれば充分、料理は必要な栄養が効率よく摂れれば良いのだから見た目にこだわるのは無意味――とまあ、そんな具合で地球側の文化はことごとく否定されたのである。
唯一否定を食らわなかったのは、大自然の風景ぐらいのものだ。それも「ああ、これが地球の原風景ですね」とあっさりしたコメントをくれただけだったが。

このままではとても、交流を持ってくれそうにない。しかし一体何をアピールしたら良いのだ。
代表者も周囲の人間も大いに悩み、頭を抱え……そうこうしているうちに、彼らの滞在期限の日が来てしまった。

「そちらの文化は詳しくわかりました」

もうあきらめ半分の気持ちで、代表者は力なく笑って「はあ」と答えた。
結局、異星人達を感激させることはできなかった。あちらの星の王様は、きっと地球と交流を持とうなどと考えないだろう。
きっとこの失敗は歴史に残るだろう。傍らに自分の名を添えて……代表者は悲観的に予想していた。

「おそらく結果が出るのは次の世代のことでしょう」
「次の世代、ですか」

ということは数十年後に結果がわかるということか。
その間自分は色々言われ続けるのだろう。代表者はさらに滅入った。
後処理が終わったら、もう山奥にでもこもって人付き合いを絶とう、とひっそり決意するほどに。

「こちらの時間に換算すると、およそ三年ほどでしょうね」
「は!?」

思わぬ発言に、代表者はぽかんと口を開けた。

「我々はこちらの時間に換算して三年ほどで一生を終えますので」
「なんと! あなた方はたった三年しか生きられないのですか!?」

代表者が思わず大声を上げると、異星人達が一斉に驚いた表情を浮かべた。
地球に来てから初めて見せた表情の変化だった。

「たった三年? 何を言うのです、それだけ生きれば充分でしょう。成長し、子を成して成体になるまで育て切るだけなのですから」

代表者はやっと、彼らが無駄なものを嫌い、排除する性質を持つに至った理由を理解した。
時間がないのだから、余計なことに手をかけていられないのだ。
それにしても三年とは。自分だったら、三年でどれほどのことができるだろうか、と代表者はちらりと考えた。

「地球人は一体何年ほど生きられるのです?」
「人や居住地域で差もありますが、長い人は百年以上生きることもあります」
「あり得ない、何という寿命の長さだ」

船長が感嘆した様子で息を吐く。
どうやら寿命の長さは、地球人が唯一彼らに自慢できる点のようだ。
この点をアピールすれば、地球と交流を持つべきと考えてくれるかもしれない。

だが船長は、代表者が何かを言う前にこう言った。

「何故そんなに寿命が長いのです? 何のためにそんなに生きなくてはならないのです?」

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
読ませていただきました。

いかにもファーストコンタクトの難儀さが出てますね。異星人随分とせっかちなんでしょうね。
何のためにそんなに生きなければならないのか?それを考えるため、でどうでしょう。異星人納得してくれるかなあ。
火消茶腕
2014/10/26 23:37
感想ありがとうございます。

連中には受け入れがたいかと<それを考えるため〜
そもそも考えが違い過ぎるので交流は無理、ってな方向で書いた話です。
効率的にとうるさく言われて思い付いたのがきっかけという裏話が……ゴニョゴニョ。

またお暇な時にいらして下さい。
鈴藤由愛
2014/10/27 06:06
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