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zoom RSS 侵略者現る

<<   作成日時 : 2014/01/18 21:14   >>

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ある日、地球に宇宙船の集団が接近してきた。

「あれは一体何だ?」
「さあ……」

さっそく世界各国の代表が集まり、今後起きうる事態のシミュレートと対応策を練った。
その部屋には世界各国からの通信が届くように機器が設置され、状況がいち早く分かるようになっていた。

「彼らが地球に来た目的は何だ」
「一体どこの惑星から来たんだ」
「敵意はあるのか」

彼らはとにかく意思の疎通を図ろうと、宇宙船に向けてメッセージ付きの通信を飛ばすよう指示を出した。
しかし通信が届いていないのか、あるいは言語が違うため理解されていないのか、応答は一切なかった。
そうして相手について何もわからぬうちに、宇宙船は地球を取り囲んでしまった。
各国の主要な都市全ての上空に宇宙船が浮かぶこととなったのだ。
即、付近には立ち入り禁止の通達が出され、民間人の避難誘導が開始された。
まるで威圧するかのような宇宙船を見上げ、陽気な人々はあれぞ救い主と言って崇め出し、悲観的な人々は地球が終わるのだと言って恐怖を抱いた。

異変が起きたのは三日後の朝だった。
突然、宇宙船が各地を同時に攻撃し始めたのだ。
船の底から光線を放ち、懐中電灯よろしくそれを
光線に当たると建物はちりと化し、人間も形を一切残すことなく消え去った。
そのような武器は地球にはない。
科学力、軍事力全ての面において力の差は圧倒的で、地球側の軍隊は出撃もままならぬ有様だった。
この事態に人々は地下シェルターへと殺到したが、中はすでに金持ちや権力者で満員だった。
入れない事を悟ると、人々は呪いの言葉を吐きながら光線の死角を縫うようにして逃げ惑った。

「もう駄目だ。おしまいだ」

人類はこのまま訳もわからず滅ぼされるのだ、と誰もが覚悟を決めたその時。
キュイイン、キュイイイン、と妙な金属音がして、突然宇宙船の動きが止まった。

「はい、定期訓練終了です。お疲れ様でした」

宇宙船から声がする。
しいん……と辺りが静まり返った。
人々が久々に感じた静けさだった。

そこへ、世界各国の代表の集まる場所に通信が入った。
回線を開くと、備え付けのモニターに青い髪に異様なほど切れ長の目、とんがった耳の、おそらくは宇宙船に乗っているであろう異星人が映る。

「いけませんねえ、前回より判定が下がってますよ。避難の速度は下がっていますし、誘導も出来ていませんし、避難場所も指定されてらっしゃらない。ああ、でも撃退能力は多少上がってらっしゃいますが……」
「ど、どういうことだっ!?」

代表のうちの一人が吠える。

「ですから、異星人に侵略された場合にそなえての訓練ですよ。ご契約にのっとって、今回参上した次第でして……」

各国の代表者達は、ふと、一人の男に注目した。
世界でも軍事大国として知られた国の代表者である。
そんな大それた事をするのはこの国ぐらいだろう、と直感したのだ。
事実、その国は異星人と交流しているという噂があった。
誰も本気になどしていない与太話ではあったが。

「そ、そんなものを取り交わしたという記録はないっ!」

軍事大国の代表者がつばを飛ばしながら食ってかかる。

「いいえ。取り交わしてございます。こちらの時間で言いますと一万年ほど前になりますが、あなた方の先祖の方が万一の時に備えて、と」

一万年と聞いて、その場にいた代表者全員の気が遠くなった。
それは自分の先祖どころか、人類全般の先祖と言った方が正しいような遠い存在である。

「し、しかし、そんな重要な話なら、何かの形で残っているはずだが」
「前回の訓練の際、口伝では限界があるということで石の壁に現地の言葉で刻みつけたとのことです」
「……そもそもそれは一体いつの話なんだ」
「前回の訓練はおよそ五千年ほど前のことになるかと」

石の壁。
現地の言葉。
様々な古代文明の遺跡のことが代表者達の脳裏をよぎる。
あの時代にも一応、文字はあったはずだ。
ただし今の言語とは似ても似つかぬ代物で、解読には難儀しているのだが。

「それにしたって、何かの応答があってしかるべきだろう!」
「侵略者が、意思疎通を図るとお思いですか」

冷静に指摘され、代表者達は黙り込んだ。

「改善すべき点は後々通信でお送りしますので。ではまた、五千年後にお伺いします」

モニターの画面が黒一色に切り替わる。
ほぼ同時に、宇宙船が一斉に地球から去って行ったと興奮気味な口調の連絡が次々と入ってきた。

「次は五千年後、か」

代表者の一人がつぶやく。

「五千年後の人類を混乱させないよう、情報を記録、保存させる技術を開発しなければ」
「いや」

別の一人が青ざめた顔で首を振る。
彼は先ほどから別の通信機器から送られていた音声をヘッドホンで聞いていた。

「それまで人類の方がもたないかもしれないぞ」

彼はヘッドホンのコードを通信機器から引き抜いた。
たちまち、けたたましい大勢の人間の声が室内にあふれ出す。
宇宙人が去った喜びの声ではなく、怒りと憎しみに捕らわれた声だ。
それはシェルター近くの音を拾ったものだった。

「地下シェルターの入り口に民衆が殺到しています!」
「殺気立っていて危険な状況です、あっ、シェルターの扉が!」
「おいやめろ! シェルターから離れるんだ!」

悲鳴、怒号、制止の声。
さまざまな人のさまざまな声が、濁流のように室内に垂れ流される。
何が起きているのかなどと聞くまでもない。
シェルターにこもっていた人間達を引きずり出し、怒りに任せて暴虐の限りを尽くそうとしているのだ。
自分達だけ助かろうとした事への制裁のつもりなのだろう。
いきなりやって来て『訓練』とやらで甚大な被害を及ぼした異星人よりも、身近な所に彼らは敵を見出したのである。

「……何と言うことだ」

世界各国のあちらこちらから似通った情報が続々と寄せられ始め、代表者達はうなだれた。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
読ませていただきました。
今回はさらにブラックさが増してるように思います。素晴らしい。
できればシェルター内にも武装集団がいて、市民を機関銃で乱射している風だと私的にはもっと好みでしたかも。
次回も楽しみにしています。
火消茶腕
2014/01/18 23:10
感想ありがとうございます。

書き始めるまでは違う内容だったんですがね、書き上げてみたらこうなってました。

シェルターは安全地帯のイメージだったので武器は持たせてませんでした。
中から攻撃するのもアリだとは思いますが。
銃声の一発もとどろかすべきだったか、うーん。

またお暇な時にでもいらして下さい。
鈴藤由愛
2014/01/18 23:44
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