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zoom RSS 毛布の下で

<<   作成日時 : 2013/12/28 18:23   >>

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今日は寒い日。雪の降る日。
私は毛布の下で、考え事。

……いつからこうしているんだっけ。もうわからないや。どうでもいいや。
何を考えようと、最後はいつも同じところに行き着くのだから。
そう、結局いつも最後はあいつにたどり着いてしまう。
あいつ……私が最後に付き合った男。

私は両親に先立たれた後親戚の家に引き取られて、とにかく傷つけられて育った人間で。
あいつは両親から虐待されて育った男で。
お互い、暴力というものへの憎しみとか恐れとか、そんな共通点があって、なんとなくくっついた。
二人で一緒の部屋に住んで、私がご飯を作って、その間、あいつは大人しくテレビを見てたり、本を読んでたり……そんな地味ながらも平和な生活が、私は気に入ってた。
このまま二人で年取ってくのも悪くないって、私、そう思ってた。

でもあいつは……変わってしまった。
職場の先輩だか同僚だかに連れていかれたキャバクラのお姉さんに大ハマリした挙句、給料をあらかた貢ぐようになってしまった。
二人でお金を出し合うからどうにか成り立っていた暮らしは、たちまち行き詰ってしまった。
生活に必要な諸々の費用は、私が普通に働いていたんじゃ厳しい金額だった。
そのうち飽きてくれるって、戻ってきてくれるって思ったから、私は色んなものを我慢してやりくりすることにした。
美容院に行く回数を減らして、食べたいお菓子を我慢して、欲しかった靴も洋服もあきらめて。
それでどうにかやりくりしていたのに、あいつはとうとう私のお金まで持ち出してキャバクラのお姉さんに貢ぎ始めた。
そんなに良かったんだろう、キャバクラのお姉さんというのが。
そのお姉さんはあんたじゃなくて、あんたのお金にしか用事がないっていうのに。
お金がなくなったら、あんたなんか絶対相手になんかしないのに。

とにかく。
私は二人で生きていくために必死に働いているわけで、キャバクラのお姉さんにお金をあげるために働いているわけじゃないのだ。
だから私はあいつに言った。
見損なった。人の金まで使ってキャバクラのお姉さんに良いかっこしたいのか、と。
あいつの答えは、暴力だった。
あいつが私に暴力を振るうのは、初めてのことだった。
両親から痛めつけられ続けて、そういうのは大嫌いだと言っていたあいつが、真っ赤な顔で目を見開いて、何かをわめきながら、拳を振り下ろし続けた。

悲しかった。
私がされたくないと知っているはずの行為を、あいつがしてきたから。
痛かった。
あいつの拳が、昔どこかで味わった痛みを思い出させたから。
怖かった。
あいつの表情が、「お前が我慢すればそれで済むだろうが!!」と言った誰かと同じだったから。

私はわめき散らした。
暴力から逃げたくて、頭の中も顔もぐちゃぐちゃになりながら、頭に浮かんだことを片っ端から口にした。
今にして思うと、隣や上下の部屋の人はだいぶ迷惑していただろうな、と思う。

あいつとの最後の思い出は、ドライブだ。
私を後部座席に乗せて、あいつはどこからか調達した車を運転した。
あいつが黙りこくって運転する姿を、私は後部座席から見ていた。
妙に冷静な気持ちで、免許を持ってるなんて知らなかったな、なんて思ったりしながら。
運転してる姿を見たのは、それが最初で最後だった。

あいつ、今頃どうしているんだろうな。
キャバクラのお姉さんのところへは、さすがに行っていないだろうな。お金、本気で厳しいだろうし。
私にしたことを思い出して、部屋で一人、震えているのかな。
警察が来ないところを見ると、自首はしてないんだろう。
隠し通すつもりでいるのかな。
……しょせん、無理なのにな。

あのさあ、この辺って人が来ないから大丈夫って思ったんでしょ?
でもいつかは気付かれちゃうんだよ。
人間ってさ、気まぐれだから。
犬を飼ってる人が、今日は散歩コースを変えてみようっていう気を起こしたりすることがあるんだよ。

ほら。
はっはっはっはっ……犬の気配が、もう、そこまで。


『今日のニュースです。
 午前十時ごろ、○○県○○市の雑木林で一部白骨化した遺体が発見されました。
 発見したのは犬を散歩させていた付近の住人で、遺体は毛布に包まれて遺棄されていたということです。
 警察によると――』

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
読ませていただきました。

今年最後と思われるお話はむごくて悲しいものですね。ヒーロー、ヒロインは幾つくらいなんでしょうか。なんか現実にありそうな話ですよね。

ダメ男はさっさと見切るスキルが必要なんでしょうけどね。
多分、毛布が外され、この女の人は考えることから解放されたんでしょうか。

次回作も期待しております。
火消茶腕
2013/12/28 21:03
感想ありがとうございます。

年末にこんな話を書いて良いんだろうかと思いつつ、思いついたので仕上げました。
雪が降るともの悲しくて、つい思考がこちら方面に偏りがちに……。
作中の二人は二十代前半ぐらいかな。
若いカップルをイメージしてます。

来年はもう少し楽しい話を書きましょうか。
ストックしといたネタを引っ掻き回してきます。

ではよいお年を。
鈴藤由愛
2013/12/28 21:19
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