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zoom RSS 友達ゲーム

<<   作成日時 : 2013/10/12 14:52   >>

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「友達ゲーム!」

出し抜けに可愛い女の子の声がした。
で、気がつくと派手な電飾だらけのやたらファンシーな小物の並んだ部屋の中にいた。
ああ、これは夢だ。こんな目の痛くなるような部屋、俺の部屋のはずがないし、知ってる奴の部屋でもない。

「ねえねえ、友達ってどんなものか、あなたはわかる?」

なんだその小馬鹿にしたような口調は。
だいたいお前はどこにいるんだ。姿を見せろ。

「……わかるよ」

俺は無愛想に答えてやった。
要するに仲良しこよしってことだろう。

「じゃあ、ゲーム開始ー! 今から色々なシチュエーションを見せるから、友達かそうでないか選んでいってね!」

一方的に話を進めるんじゃねえぞ、こら。
ポン、という音と一緒に俺の前にモニターが現れた。
しばらくすると、モニターに映像が映し出された。
交通安全教室とかで見せられるような、いわゆる子供向けのデザインの映像だ。

「あなたは、太郎くんのことをお友達だと思っています」

モニターの中では、実にシンプルな色合いと作りの二人組が教室で授業を受けていた。
片方の奴には太郎と書かれているから、もう一人の無地の奴が俺ってことなんだろう。
……あ、今、モニターの中の俺が、太郎くんにチョップをお見舞いした。
おお、太郎くんも負けじと俺にヘッドロックを……。

「ある日、太郎くんが不注意で教室の花瓶を割っちゃいました! 太郎くんは先生に怒られるのが嫌で、あなたの仕業にしてしまいました。あなたは自分じゃないと言いましたが、先生には信じてもらえず、罰として居残り掃除をさせられました」

目撃者というか、教室には次郎くんとやら以外いなかったのか、それ。
先生もひどいなおい。

「問題! あなたにとって、次郎くんは友達って呼べる?」

A:呼べる
B:呼べない

これはあれか。AかBか選べってことか。
まあ、自分の罪をなすりつけたらいかんだろう。友情もぶっ壊れるわ。
俺はBを選んだ。

「ふうん、この二人は友達じゃないんだ」

モニターの中の太郎くんに変化が起きた。
太郎くんの頭上に巨大なハンマーが出現したのだ。
おもちゃのピコピコ音を立てるやつじゃない、鉄製の重たそうなやつだ。

「友達じゃないなら、死んじゃえ!」

女の子の物騒な発言と同時に、巨大なハンマーが振り下ろされた。
次郎くんは「ぎゃあっ!!」と妙にリアルな悲鳴を上げ、叩き潰された。
下から、じわじわと赤い血が広がっていく。

「じゃ、次の問題ね」

何事もなかったかのように、女の子は明るい声を出す。
モニターにはすでに切り替わり、別の場面を映していた。

その後ずっと、同じ調子で俺は女の子の出す『問題』に答え続けた。
さまざまなシチュエーションを見せられ、それに関して相手が友達と呼べるかどうかを答えさせられるのだ。
たとえ作り物でも、人間の形をした物がハンマーで叩き潰されるのは気分が悪い。
だから『呼べる』を選択したこともあったのだが、その場合は女の子がキレて、「でも私、こいつ嫌い」とハンマーが振り下ろされた。
どう答えても相手は叩き潰されてしまうのだ。
俺はだんだん感覚が麻痺してきて、早くこの夢が覚めてくれないかと思うばかりだった。

「じゃあ、最期の問題ね! ラストクエスチョン!」

その声がした途端、俺はほっとした。
やった。これで終わりだ。ずいぶんしつこくて微妙な悪夢だが、見続けたいものじゃない。

「あなたは――」
「もしもし! 終点ですよ!」

その声と一緒に体を揺すられて、俺はハッとした。
気がつくとそこは人気のない電車の中で、目の前には車掌がいた。
ああ、そうだ。
そういえば塾に行った帰りで、シートに腰かけてからうとうとしてきたもんで、どうせ終点まで乗るからって開き直って目を閉じたんだっけ。
あんな変な夢を見たのは、そのせいなのかもな。

「ど、どうもすんません」

電車を降りると、ホームの向こう側に人を見つけた。
見覚えのある背格好のそいつは、同じクラスの友達だった。

「おーい!」

俺が声をかけると、友達がやけに慌てた様子でこっちを見た。
よく見ると、友達の隣に誰かが……女の子がいる。
見慣れたセーラー服。くせのない黒いロングヘア。
こっちに背中を向けてるから顔はわからんが、手どころか腕まで組んでやがるのはしっかり見えた。
この野朗……さんざん「もてない」「彼女が欲しい」って俺と一緒になって騒いでおいて、こっそり彼女作ってんじゃねえよ!
だから俺に見つかって慌ててるんだな。ちっ。

俺と友達との間に流れる空気に気付いたのか、女の子がこっちを向いた。

あ……。

俺は、自分の足元が崩れたような気がした。

その女の子は、俺がずっと片思いしていた子だった。
おい、なんでお前、その子と一緒にいるんだよ?
俺がその女の子に片思いしてるってこと、知ってるだろ!?
何回か相談にも乗ってくれたよな!?
なのに何で、何でだよ!!

「あなたにとって、彼は友達って呼べる?」

頭の中で、いや、もっとはっきりと近いところで、あの声が聞こえた気が、した。

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