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zoom RSS カルネ村にて 23

<<   作成日時 : 2013/08/10 19:33   >>

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墓場の入り口にある門は、カレンの身長を超える高さの、重たげな鉄製の造りだった。
両開きの鉄扉には取っ手があり、南京錠付きの鎖がぐるぐる巻きに巻かれている。
さらに墓場を同じ高さの鉄柵がぐるりと取り囲み、飛び越えることもよじ登ることもできそうになかった。
小さな村の墓場にしては手の込んだ囲いようである。

「ずいぶん頑丈そうね」

クララが門を見上げ、つぶやく。

「これでは毎日お墓に通うのも一苦労じゃないかしら」
「そう頻繁に墓参りをする人はいなかったそうですよ」

手斧を担いだリーザが、門の前に立つ。
彼女は手斧で鎖を断ち切る役目を引き受けているのだ。
この鎖の錆び付き具合なら、新品を断ち切るより多少楽かもしれない。

「ハンナという人のご両親は、それほど薄情だったというの? 哀れな一人娘のことを思ったら、毎日お墓に通いそうなものだけれど」
「この門は、事件の数年後に作られたそうですから……それまでは毎日来ていたんじゃないでしょうか」
「そういえば、この門の鍵は村長の管轄下だったわね」
「ええ」
「最期に鍵を貸したのは誰だったのかしら?」
「先ほどの家のご夫婦です。『村での生活が落ち着いたから、夫婦そろって墓参りがしたい』って言っていました」

クララがけげんな顔をしてリーザを見る。

「それ、いつ頃のことか思い出せる?」
「村がこうなる少し前のことです。私が村に来て、すぐのことでした」

クララは大して興味もなさそうに「そう」と答えると、何やら考え込み始めた。

その二人のやり取りを、カレンは黙って聞いていた。
正確には、持参したシャベルを地面に突き立て、その持ち手部分に両手とあごを乗せてぐったりしながら、である。
シャベルは結局、台所と外の二箇所にあった。
選んだのは外にあったシャベルである。
外にあったシャベルの方が、先のとがった土を掘るのに適した形をしていたからだ。
ただしこちらの方が重かった。

(つ、疲れた……)

出るのはため息ばかりである。
肩掛けのカバンにシャベル持ちなので、二人よりも荷物が多く、その分疲れたのだ。
この後には穴を掘って遺髪を埋める作業も待っている。
そのため、会話よりも疲労回復を優先したい身の上だった。
休憩がてら、カレンはそれにしても頑丈そうな門だ、とぼんやり思った。
実を言うとカレンがこの墓場に来たのは、だいぶ久方ぶりのことである。
幼い頃に一度、顔も知らない祖父母の墓参りに来た事があるだけなのだ。
その頃のことを思い返せば、そういえばこんな門をくぐったような気もする。
……父親と母親の間で、それぞれと手をつないで。
あの時どんな会話をしただろう。
ふと考えそうになって、カレンはその思考を打ち消した。
今はひたっている場合ではないのだ。

考えを別の方向に向けようと、カレンは門に注目する。

(墓場ぐらい、自由に出入りさせたって良さそうなのに)

門を見ていると、つくづくそう思う。
村長というのは、そこまで管理しなければならないのだろうか。
大きな町の墓場なら不自然な話でもない。
規模の大きさから手入れが行き届かず、さらに墓にいたずらをしたり遺体を盗んだりする不届き者から墓場を守る必要もあるからだ。
わざわざ管理する人間を置く所もあるほどだ。
だが、ここはほぼ身内しかいないような小さな村だ。
やはりそこまでするのは行き過ぎのような気がしてならない。

がしゃん、と鈍い金属音がしてカレンは我に返る。
見れば、リーザが鎖に向かって手斧を振りかざしているところだった。
先ほどの音は一撃目ということだろう。
金属音は二度、三度と続いて響き、何度目かの響きの末、南京錠をつけたままの鎖が地面に落ちる。
さあいよいよだ。
カレンはシャベルにあごをのせた姿勢をまっすぐに伸ばした。

「開けますよ」

リーザが緊張した声で告げ、門の鉄扉に手をかける。
ゆっくりと重い扉が開いてき、徐々に墓地の様子が明らかになっていく。
待ち受けるのは地面を這う大量の幼虫か、それとも別の化け物か。
あるいは――事件の犯人、ギールの姿か。
カレンはシャベルを持ち直し、表情を引き締めた。

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