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zoom RSS 光る竹

<<   作成日時 : 2012/06/16 15:23   >>

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昔、あるところに竹取りを生業とする老人が暮らしていた。
竹を取って細工をしても大した稼ぎにはならないが、毎日こつこつと働けば年老いた妻一人を養うぐらいはできる。
そんなわけで、老いた夫婦の暮らしは実に慎ましやかなものだった。

ある日、老人がいつものように竹を取りに山へ入ると、どこからかピカピカと光が差した。
この光は一体なんだろうか。
興味を持った老人は光の元を探して歩き、やがて一本の竹にめぐり合った。
光を放っていたのは、この竹だったのだ。
老人は、長い竹取り生活の中で、こんな竹を見たのは初めてだった。
ついでに言うと、光り物を見たのも初めてだった。
そんな老人が率直に抱いた感想は、ずばり「怖い」だった。
その光る竹は、理解の範疇を超えた、何か得体の知れない物の怪のように映ったのである。

「お、お、おおおおおっっ!」

老人は家に飛んで帰り、妻に打ち明けた。

「ば、ばあさまや。たたたた竹が、竹がひ、ひっ、ひかっ!」
「落ち着いてくださいな。ささ、水でも飲んで」

水を汲んだひしゃくを渡され、老人は勢いよく飲み干す。
そして、せきを切ったようにしゃべり出した。

「竹が光っておったのじゃ! わしゃ、あんな妙なものは見たことないぞい」
「まあ、竹が光るなんて聞いたことありませんよ」
「本当じゃ。わしはこの目でしかと見たんじゃ。ああ、何と恐ろしい!」

翌朝、老人の知らせを受けて近隣の若者が集まり、見に行こうということになった。
もし物の怪の類なら退治せねばと、刀や弓矢を持参しての物々しさである。
老人の案内で竹林に分け入ったた若者達は、光る竹を見てどよめいた。

「おお、本当だ。確かに光っとる」

その場に居合わせた全員が固唾をのんで、光る竹と周囲に目を光らせた。
だが、彼らはすぐに、確かに面妖な光景ではあるものの、物の怪がいるような気配は無いことに気付いた。
若者達はそのうち警戒を解き、話し合いを始めた。

「害はなさそうだが、どうする?」
「そうだなあ」
「切って中を見てみないか。お宝でも入っているかもしれんぞ」
「馬鹿言え。竹の中にどうやってお宝を入れるんだ」

いくら話し合っても答えは出ない。
そこで今度は神社の神主が見に来ることとなった。
神主は光る竹を見るなり、こう告げた。

「これは、山の神が舞い降りたものであろう。切るなどととんでもない。神社を建ててお祭りせよ」

それを聞いた人々は、わっと喜んだ。

「おお、山の神様の竹じゃったか」
「ありがたや、ありがたや」
「あやうく切ってしまうところだったわい」
「いやあ、早まったことをせんで良かったのお」

こうして、光る竹を祭った神社が建てられることとなった。
管理をするのは竹取りの老夫婦である。
参拝者は後を絶たなかった。
光る竹は珍しく、また神秘的でもある。
それを見れば、神がおわすという話も素直に信じられるほどに。
これで人が押し寄せないはずがない。
熱心な参拝者は日に日に増え、竹取りの老夫婦の家を初めとした近隣は、急速に潤い発展していった。

しかし、ある日のこと。
その日、老人は妙な夢を見た。
見目麗しいとても小さな女性が、じっとこちらを恨めしげににらんでいる夢だ。
女性は唐突にぷちんと潰れ、後には真っ赤な血だまりが残った。
とにかく気味の悪い、嫌な夢だった。
目を覚ました老人は、何だか胸騒ぎがして光る竹の様子を見に行った。

「や、やややっ」

老人は、驚いて目を見張った。
何と、いつも光を放っていた竹が、今日は光るどころか黒ずんでいるではないか。
汚れているのかと思って布で拭いてみたが、黒ずみは取れず、光りもしない。
老人は慌てて神主を呼び、見てもらった。
現われた神主は竹を見て肩を落とし、静かに告げた。

「どうやら、山の神はお帰りになられたようじゃ」

もう神社に祭るものはない、ということだ。
竹が光らなくなった、山の神が帰ったと聞くと、参拝者はぱったりと途絶えた。
老夫婦も相次いで亡くなり、近隣の家もしだいにどこかへ移っていった。
後に残されたのは、竹林に取り囲まれ朽ち行く神社だけだったという。

時折、竹林を吹く風に混じって、恨めしげな女性の声が聞こえるというが……。

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