プラスマイナス1

アクセスカウンタ

zoom RSS 不老不死になった王様

<<   作成日時 : 2012/02/18 20:25   >>

トラックバック 0 / コメント 0

昔、あるところに、不老不死を求める王様がいた。
王様の治める国は豊かで、周囲にも脅かす存在はいなかった。
だから、王様は自分の統治でさらに国を繁栄させるべく、不老不死を求めたのである。
世継ぎとしては王子が一人いたのだが、王様は彼の能力を憂いていた。

しかし、不老不死などというものは、求めて簡単に手に入るものではない。
王様は怪しげな薬草や、どこぞで採れたという水、儀式などを片っ端から試していった。
その結果は、いわずもがな。

「ああ、わしはいつになったら不老不死になれるのだ。方法がわかったとしても、年老いてしまってからでは遅いというのに」

王様はその日のために肉体を若々しく保とうと、食べ物に気をつけ、運動をする毎日だった。
そんなある日、王様が日課の運動をこなしていると、視界に影が入り込んだ。

「あんたかい。不老不死になりたい王様ってのは」

目を向けると、そこには黒い体に黒い翼の、伝え聞く悪魔そのものの姿をした生き物がいた。
王様は驚きながらも、震える声を絞り出した。

「そうじゃ。お前は不老不死になる方法を知っておるのか」
「知ってるも何も、俺が不老不死にしてやってもいいんだぜ」

悪魔は真っ赤な口を開け、目を細める。

「な、ならば頼む。わしを不老不死にしておくれ」
「かまわねえよ。だが……」

悪魔は一拍置くと、王様に顔を近づけ、目を細めた。

「そんな大層な願い事を叶えてもらおうってんなら、お前にも何かを差し出してもらうことになるぜ」
「かまわぬ。何を差し出せばよい? いけにえか? 美しい乙女か?」
「そうだな……お前の国で、これから生まれてくる連中の寿命をもらうとするか」
「こ、殺してしまうのか!?」
「まさか。全員、ちょっとばかし寿命が短くなるだけさ」

寿命が削られる程度なら、問題ないだろう。
王様は了承し、その日から、王様は不老不死の体になった。

とはいえ、病気になって苦しむことはあるし、怪我をすれば血が流れ、痛みもする。
だが死なない。どんな大病だろうと大怪我だろうと、時間が経てば必ず治る。
死への恐怖を克服した王様は、何者にも臆することなく国の繁栄に力を尽くした。
何せ、多少無理をしたとしても死につながることはないのだ。
王様は超人的な仕事ぶりで、国内外から称賛された。

その二十年後に異変が起きた。
二十歳を迎えた者ばかりが、ばたばたと死んでいったのである。
それから、王様の国では、二十歳になった者は必ず死ぬようになった。
病気を抱えていようが、健康体だろうが関係なしにである。

「ううむ。寿命をもらうと悪魔は言っていたが、二十歳までしか生きられないとは」

王様は驚いたものの、致し方ないことだと割り切った。
何せ、それと引き換えに不老不死を手に入れたのだ。
人がそれを聞いたら、心象が悪くなるのは必至である。
黙っていた方が良いだろう、と王様は考えた。
その分も国の繁栄に尽くせば良い、と。

だが、人々は年月が経つにつれ、死ぬ若者達と引き換え、年を取らない王様を怪しむようになった。

「王様は確か、もう六十を超えているはずだろう。なのにどうしてあんなにお若いんだ」
「お若く見える、って言うのも不自然よ。二十年間、年を取っていないようだわ」
「こんなの変だ。このままじゃ、僕より年下の世代がいなくなってしまうぞ」
「もしかして、王様がいつまでも若いままなのって、若者達の命を吸い取っているから、とかじゃないのか」

国民達はひそひそとうわさをし、やがてそれは、王様を排斥する動きに至った。

「王様は悪魔だ」
「若者達を犠牲にして、自分が若いままでいるんだ」
「そんな王様がいてたまるか」

国民だけではなく、我が子我が孫を失った家臣や兵士達までもが、その動きに加わった。
先鋒に立ったのは、今や見た目だけなら王様と変わらなくなった王子である。

「さあ父上、いいや、父の姿をした悪魔め、この国から出て行け!」
「な、何を言う。わしはこの国のためを思い、今まで繁栄に力を尽くしてきたではないか」
「若者達の未来を奪っておいて、何が繁栄だ!」

王様は全てを奪われ、国を出ることになってしまった。
こうなっては、不老不死も慰めにならない。
王様は何十年という月日を、放浪して過ごすこととなった。

「ん? お前、こんなところで何をしているんだ?」

ある晩、木陰で寝ていた王様は、いつか聞いた覚えのある声に顔を上げた。
すると、不老不死を与えたあの悪魔が身を折り、覗き込んでいるではないか。

「お、おのれっ」

王様は頭に血が上った。
元はといえば、こいつが不老不死にしてやってもいい、などと言い出したせいだ。
繁栄に尽くしたというのに国を追われた屈辱は、何十年経とうと消えやしない。

「おいおい、何だっていうんだ」
「良いかよく聞け! お前のせいでわしは、散々な目にあったのだぞ!」

王様は興奮しきった口調で、これまでのことを話して聞かせた。
すると、いきさつを聞き終えた悪魔は、ふ、と小さく笑って肩をすくめた。

「それは災難だな。だが、遅かれ早かれ、こんな目にあっていたはずだ。お前は元々、そんなに良い王様じゃなかったからな」
「何じゃとっ?」
「お前は、後から生まれる連中の寿命をいただくって言った時、断らなかっただろう。良い王様なら、そこで断っているはずだぜ」

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

不老不死になった王様 プラスマイナス1/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる