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zoom RSS ○○に告白されました

<<   作成日時 : 2011/12/31 12:05   >>

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「お、俺は、お前が好きだ。その……一目見た時からお前のことが忘れられなかった」

ビルの屋上で、唐突に、思いもよらない相手から告白された。

「もし、想う相手がいないのなら、恋人になってもらえないだろうか」

「ええーっ!」
「マジかよおい!」
「す、すごい」

その告白に一呼吸置いて騒ぎ出したのは、周りにいた人達の方で。
私はただひたすら、目を真ん丸くして息をするのも忘れていた。

「お……俺は本気だ」

相手は、ひたすらもじもじしている。

「返事、返事してやんなさいっ」

知らないおばさんに肩を叩かれて、我に返った。
返事……返事って。
私は冷静に状況を判断し、答えを導き出した。

「気持ちはうれしいんですけど、私、あなたとは付き合えません」

きっぱり言うと、周りから「ええーっ?」とブーイングじみた声が上がった。
非難するような視線がぐさぐさ突き刺さる……。
あのね、付き合って欲しいって言われてるのは私だから。どうするか決める権利はこっちにあるでしょうが。

「お互いのこと、よく知らないし。それに」

私は、今しがた告白してきた相手を見る。

「大きさ、全然違うじゃないですか」

そう。
私に愛の告白をしてきた相手というのは、今私がいる高層ビルに匹敵する身長の持ち主なのだ。
さらに細かく特徴を述べるならば、銀色の体に青いラインの入った、ほぼ人間と変わらないスタイルだ。
ただし頭はヘルメットでもかぶっているのか、それとも元々そんな形なのか、顔のパーツが不明だ。
特撮の、「デュア!」だか「デュワ!」だか叫ぶ巨大な異星人に似ている気がしないでもない。
今の私は、高層ビルの屋上で、真正面にある相手の顔を見ている状態だ。

当然ながら、この巨人は元々地球にいた人物じゃない。
ここ最近……二ヶ月ぐらい前から地球に現れるようになったのだ。
私はその頃のことを思い出した。

今から二ヶ月ぐらい前、地球に巨大な円盤がやって来た。
円盤から姿を見せた宇宙人(っぽい。体のラインがビール瓶みたいだった)はイビルガリア星人とか名乗り、「人類を滅ぼし、この星を支配する」と宣言した。
その後、円盤からそいつの手下らしい巨大な怪獣が現れて、大暴れをした。
軍隊じゃどうにもならず、地球が終わるんだと思っていたら、怪獣と同じぐらいの大きさの巨人が現れて、怪獣を撃退した。
それが、今目の前にいる巨大な異星人なのだ。

その後も、イビルなんたらは度々怪獣をよこした。
巨人はその度に怪獣と戦い、地球を守った。
特撮の世界そのままに、地球のために戦う彼を、人々はヒーローと呼んで称えた。

巨人が、なーんか去り際に毎回、こっちを見てるような気がしたのは気のせいじゃなかったんだなあ。
しかし、よく私なんぞを見初めたもんだな。
あっちからしたら豆粒みたいなもんだろうに、顔の造作なんかわかるもんなんだろうか。
いや、顔に惚れたのかはわからないけど。

「……そうだな」

巨人が、こっちに背中を向けてうなだれた。
く、空気が重い。

「よく考えたら、同じ星の人間どうしでも恋人になるのは難しいというのに……俺は何を考えていたんだろうな」

暗い声でつぶやきながら、巨人が近くのビルに手をかけて、ふうっとため息をつく。
ビシ、という音。
……ん?
よく見たら、手のかかったところにヒビが入っている。

「おっ、おい、君!」 

知らないおじさんが詰め寄ってきた。

「あのビルは私のビルなんだ、壊れたらどうしてくれる!」
「いや……確かそういうのって国が補償してくれるんですよね?」

イビルなんたらが攻めてきた後、そんな法律が作られた。
巨大なもの同士の戦い、やっぱり周りの物は大なり小なり破壊されてしまうのだ。
そんなわけで予算を組み、異例のスピードで可決された法案である。

「戦闘以外で破壊された場合は保証されないんだよ!」
「そ、そうなんですか」
「とりあえず、嘘でもいいから良い返事をしてやってくれ」

良くないよ! そういうのって相手にとって一番傷つくことでしょうが。

「もし告白を断ったせいで、地球を守ってくれなくなったらどうするんだ」
「そうよ。失恋って辛いんだからね。今後の戦いに影響するかもしれないでしょ!」

周りにいた人達が、私を取り囲んでやいのやいの責めてくる。
なんでこんな目にあわなきゃいけないんだ。

「もう、あなた、この娘さらってっちゃいなさい! そうすれば、あきらめていつか受け入れてくれるわよ!」

いやいや、良くない良くない良くない!
おばさん、勝手にヒートアップしないで!

「そうだわ、二人がお付き合いするかどうか、国連議会で決めてもらえばいいじゃない!」
「世界中の人間に投票してもらえばいいんじゃないか?」
「二人っきりにすれば、きっと考えも変わるさ。まず結婚させてしまうのはどうだろう」

どんどん周りが変な方向に突き進んで行く。
このままじゃ危ない。
周りが、というより、私の身が。

……やりますか。その場しのぎ。

私は、ザッと片手を上げて、「発言します」アピールをした。
気付いた人達が、一斉に黙り込む。
とりあえず、静かになってもらって、と。
私は人をかき分けて、屋上の、巨人に一番近い柵まで歩いていって、身を乗り出した。

「あの!」

大声を上げると、巨人がちらりとこっちに顔を向けた。
何というか、しょげた子供そのものの態度だ。

「お」

……こんなこと、今時言わないんだけどな。
そう思ったらちょっと恥ずかしくなった。

「お互いの事を知る、っていうところから始めませんか」
「お互いを知る?」
「その、お友達から、ってやつです。いきなりは付き合えませんけど、仲良くなってくうちにもしかしたら好きになるかもしれないですし」

ま……どうなるかはわかんないけど、ね。

「そ、そうか!」

ワーッと周りから歓声が上がった。

「ははははは、やったぞー!」

巨人が両手を挙げて大喜びしてる。
こんなオッケーなんだか駄目なんだか微妙な返事で喜ぶんだから……やっぱり、本気なんだろうな。

「いやあ、良かった良かった」
「巨人さん、がんばんなさいねえ」
「うまくいくといいね!」
「おめでとう!」

周りにいた人達に囲まれて、もみくちゃにされる。
あの、おめでとうって、まだ恋人になったわけじゃないんだけどな。
まあ、いっか。
とりあえず、この選択で不幸になる人はいないみたいだし。










……余談。

「うわああああ私のビルが、私のビルがあああ!!」

おじさんのビルは、巨人が手を上げた時に勢いあまって遠くに放り投げられました。

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