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zoom RSS アリ達の愉しみ

<<   作成日時 : 2011/12/03 15:58   >>

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太陽がジリジリと照り付ける、まぶしくて熱い夏。
アリ達は今日も、冬にそなえてせっせと食べ物を蓄える仕事に精を出す。
食べ物を探しに行く列と、探してきた食べ物を持ち帰る列に別れ、道を行き交う。

そんな、黙々と仕事に励むアリ達の列を道ばたで見ているのが、一匹のキリギリスだった。
黒一色の地味なアリ達とは違い、キリギリスは薄緑色の服を着て、朝から晩まで歌ったりギターを鳴らしたりしていた。
地道に働くアリ達とは、何から何まで正反対である。
キリギリスは働き通しのアリ達を一瞥し、ふん、と馬鹿にしきった笑みを浮かべた。

「あんた達、つまんない生き方してんだね。何が楽しくて朝から番までそうやってんだか」

アリ達の列は乱れない。歩みも止まらない。反論する者もいない。
キリギリスはそれを、持論が通っのだたと捉え、得意げにギターをかき鳴らした。

やがて秋も近付いた頃、キリギリスは都会からやってきたスカウトマンに歌とギターの腕前を買われ、歌手としてデビューすることになった。

「生まれてきたからには、華々しく生きないとな。神様がくれた才能ってのは、活かすべきだぜ」

キリギリスは、相変わらず働いているアリ達をあざ笑い、都会へと旅立っていった。

そして、冬がやって来た。
白い雪が降り積もり、外は別世界と化す。
こうなると、アリ達はもう外には出ない。めいめいの家にこもり、春を待つ。

ある日の夜、アリの家族の父親は、家のドアをノックする音を聞き付けた。
誰かと思って開けてみると、そこにいたのはキリギリスだった。
コートや帽子に雪を載せ、こびるような笑みを必死に浮かべている。

「おやキリギリスさん。都会へ行って歌手になったのではありませんか」

キリギリスは、決まり悪そうに眼を伏せる。
実はデビューしたものの、一曲も売れなかったのである。
歌が上手い、ギターが上手い奴は都会にも大勢いて、その輪に入ってみたら、キリギリスのレベルはそう高くはなかったのだ。
努力はしたがどうにもならず、ついに田舎に帰ってきたというわけである。

「どうしたんですキリギリスさん」
「その……何か、食べ物をくれませんか……」

ぼそぼそとしゃべる様子は、あの、夏場に歌っていた頃のキリギリスと同じとは思えない。
世の中には「惨め」という言葉があるが、それを体現しているかのようだ。

「あなた、夏の間は何をしてたんです」
「そ、その……歌を歌って、ギターを鳴らして……」
「なら、冬の間は踊ったらいかがです」

アリの父親は言い放ち、ぴしゃりとドアを閉めた。

「あのキリギリス、やっぱり駄目だったんだね」
「都会から逃げ帰ってきたのって、あのキリギリスで何番目かしら」
「いちいち数えちゃいないから、もう忘れたよ」

アハハハハ……アリ達が笑う。

春夏秋と地道に働き続けるアリ達の、ひそかな楽しみ。
それは、同じ季節にいい気になって遊んでいたキリギリスが、冬になってから落ちぶれ果てる様を見ること、なのである。
春夏秋と味わった苦労も労働の疲れも、キリギリスから受けた屈辱も、その瞬間に、すーっと消えていく。

「やっぱり、地道な生き方が一番だ」
「そうとも。うわついた考えじゃ、足をすくわれるぞ」
「毎日コツコツ働かないとね」

そうしてアリ達は地道な生き方の正しさを確信し、これからも勤勉でいることを誓うのだった。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
お久しぶりです。

アリとキリギリスにこんな一面があったとは(笑)
でもわかる気がする。
メジャーリーグに挑戦して大した成果もあげずに帰ってきた野球選手にもこんな思いを抱きますよね。
ラストのアリたちの言葉が効いて面白かったです。
ia.
2011/12/26 02:06
おおっ、お久しぶりでございます!

アリ側から見たらきっとこんな具合だろうな〜ってのがこの話です。
いや、挑戦することは素晴らしいですよ。
結果が出ないのはしょうがなかったりもしますから。

ただ、でかい口叩く奴はいかがなものかと思いますね。
メジャーに限らず、芸能界でも、ビジネス業界でも。
「その態度が、後々てめえの首しめんのやで〜」ってな心境で生ぬるい目で見てますな。
鈴藤 由愛
2011/12/26 20:21
アリ達の愉しみ プラスマイナス1/BIGLOBEウェブリブログ
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