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zoom RSS 世界崩壊その後で

<<   作成日時 : 2011/10/29 17:42   >>

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某月某日。世界中の国々の政府が、一斉にあることを発表した。
それは「近々地球に巨大な隕石が落ちる。もはや手の打ちようがない。地球はこの隕石で滅亡する」というものだった。
当然、科学技術や軍隊、兵器を結集してどうにかしろという意見が相次いだ。
しかし、既にそれらは全て秘密裏に行なわれたことであり、その上でこの結果なのだと知るや、今度こそ人々はパニックに陥った。

こうして、日常を覆っていた、退屈だが最大のより所でもあった社会秩序はあっさり崩壊した。

あきらめて自ら命を絶つ者、物資の奪い合いをする者、全てから目と耳をそむけてひたすら享楽におぼれる者。
宇宙人だか神様だかが助けてくれるだの、どこかに政府関係者とその家族だけが入れるシェルターがあるだの、水に入っていれば助かるだのと、出どころも真偽も不明な噂が飛び交い、多くの人が翻弄された。


「おい!」

かつては商店街だった所。
歩いていた男は、声をかけられて振り向いた。
そこには、ナイフを握りしめたジャージ姿の若者がいた。

「……何だね、一体」
「お前っ、拳銃を持ってンだろう。よこせ!」
「ナイフなんか向けて、おだやかじゃないな」
「おとなしく渡しゃあ、痛い目見なくて済むンだぜ、おっさん」
「おっさんっていう年じゃあ……どこで拳銃のことを知ったんだ?」
「はン、昨日見たんだよ。あんたが拳銃を買うところをな。一緒に弾丸も買ってただろう」
「ああ、あれか。買ったんじゃない、頭痛薬と交換したんだよ。君も知っているだろう、今となっちゃ、金なんか何の価値も……」
「ウダウダぬかしてねえで、さっさとよこせってンだよ!」

「動くな」
「っ!」

シャツのすそをめくったと思ったら、男の手には拳銃が握られていた。
引き金に指をかけ、若者の眉間を狙っている。

「とりあえず、ナイフを捨てろ。頭の後ろで手を組んで、ゆっくり下がれ……そう、そうだ。そのままひざをつけ」
「くそっ」

若者は舌打ちをしながら、渋々言うとおりにする。

「興味ついでに聞いておこう。拳銃を手に入れて、何に使うつもりだ」
「決まってンだろ、拳銃でシェルターの見張りをぶっ倒して、皆が入れるようにすンだよ!」
「シェルター?」
「政府関係者とその家族だけが入れるシェルターがあンだよ! あいつら、自分達だけは助かる手段を残してやがる!」
「噂は聞いたが……確かなのか?」
「間違いねえ。俺は場所も知ってる。仲間とそこを襲って解放する予定だったのに、くそっ」

男は捨てられたナイフを拾い上げ、興味なさげに刃先を見つめる。
さび付いて、ところどころ刃が欠けている。

「その後、どうするつもりなんだ?」
「何?」
「シェルターに入って隕石をやり過ごして、その後の生活はどうするんだ。いつまでもシェルターにこもっているわけにもいかないだろう」
「適当な頃合いを見て、外へ出て生活するに決まってンだろ!」
「それで? その後の生活設計を聞かせていただこうか」
「シェルターの中に植物の種や水を浄化するシステムがある。そいつを使って畑を作って、まずは自給自足を……」
「耕作に適した土地が、きれいに残っていればいいがな。おそらくは、土地を開墾するところから始めなければならないだろう」
「皆で力を合わせればどうにかなる!」
「シェルターには何人入れるつもりだ?」
「入れる限り受け入れる。救えるだけの人間を救うンだ!」
「作物ができるまでの間、食料はどうする」
「シェルターの中にも備蓄がある、それを使えば……」
「一体何人分、何年分だ? 開墾する人手は多ければ良いだろうが、その分食料の減りも早いぞ。それに作物が全て実るとは限らない」
「皆で分け合えば耐えられないわけじゃない!」

男は若者に歩み寄り、銃口で頭頂部をごりごりと押した。

「皆で生き延びて新たな地獄を見せるというわけか。罪深いことだな」
「何言ってやがる! 俺は皆を救おうと……」
「君は人を救わない。皆で、皆で、皆で……結局他人頼みだ。正直に言え、自分が助かりたいから他人を巻き込んで見張りを襲うと」

「……じゃあ、じゃあ、あんたは何で拳銃を買ったンだよ。他人をぶっ殺して、生き延びるためじゃねえのかよ!」

銃口が、若者の頭から離れる。

「隕石衝突で死に損なったら、こいつで自分の頭をぶち抜くためさ」

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