プラスマイナス1

アクセスカウンタ

zoom RSS ぱくぱくむしゃむしゃ

<<   作成日時 : 2011/05/01 11:39   >>

トラックバック 0 / コメント 2

夜の森を、ヘンゼルとグレーテルという名前の二人の子供がさまよい歩いていた。
「兄さん、お家はどこ? 帰りたいわ」
「泣くなよグレーテル。きっとどうにかなるから」
ああ、この前のように道しるべに白い小石をまくことができたら、今頃は家に帰れていたはずなのに。
でも仕方ない、石を拾いに行くことができなかったのだから。
(きっと、あの継母が邪魔をしたんだ)
ヘンゼルは意地悪な継母のことを思い出し、ぎゅっと唇をかんだ。

さて、二人がしばらくさまよっていると、不意に甘い臭いがただよってきた。
「まあ、何かしらこの匂い」
「食べ物だ! あっちから匂いがするぞ」
たちまち元気を取り戻した二人が草をかき分けて匂いのする方へ駆けていくと、何と、そこにはお菓子でできた家があった。
壁はビスケット、屋根はチョコレート、窓は飴を薄く引き延ばしたもの……といった具合で、見ているだけでよだれが出てくるような家である。
たまらず二人は駆け寄った。
「わあ、お菓子の家だわ!」
「おいしそう、本物かな」
ヘンゼルはビスケットの壁を少しだけ割って、口に放り込んでみた。
「おいしい! 本物のビスケットだ!」
「本当? じゃあこのドアは何かしら」
グレーテルはドアの端を割って、口に入れた。
「ドアはチョコレートだわ。ああ、なんて甘いのかしら」
いったん口に入れてしまったら、もう止まらない。二人は無言で、ぼりぼりとむさぼり出した。

そうして、どのぐらい食べていただろう。
「お前達、そんなに腹が減っているのかい?」
――誰かいる!
二人はびくっと身をすくませ、おそるおそる振り返った。
見ると、しわだらけのわし鼻の老婆が、にこにこと笑っている。
このお菓子の家の持ち主だろうか。
「ご、ごめんなさいっ、僕たち、とてもお腹が空いていて……」
「別にいいさ。そんなに腹が減っているのなら、うちへおいで。ごちそうしてあげよう」
老婆は親切にも二人を自分の家へと招き、パンやシチューを振舞った。
あれだけお菓子を詰め込んだにも関わらず、またもや二人はパクパクパクパクよく食べた。
「お腹がふくれたら眠くなっちまっただろう? 奥の部屋にベッドがあるからお休み」
「ありがとう、おばあさん!」
ふかふかのベッドにもぐりこんだ二人は、たちまち眠ってしまった。
老婆は眠ったことを確認すると、にたりと笑って部屋を後にした。
「やれやれ。ようやく念願かなったよ」
暖炉の前の安楽椅子に腰かけ、老婆はつぶやく。

老婆はサーカス団の団長だった。
さまざまなショーを見せて回るうち、ふと、大食いをショーとして見せるのは面白いのではないかと考えた。
しかし、大男がやるのではつまらない。一見して小食そうな人間がやるからこそ、意外性があって面白いのだ。
そう考えてあちこち回って人材を探したのだが、どうもうまくいかなかった。
そこで老婆はお菓子の家を置き、これぞと思う人間が現れるのを待つことにしたのだ。
甘いお菓子を選んだのは、甘さゆえにすぐ満腹感が出て、さほど量が食べられないから。
それでも大食いできるなら、見所はあるだろうと考えたのである。
子供達の食べっぷりを思い出すと、にやけが止まらない。まったく、良い人材が転がっていたものだ。
むろん、今のままではショーとして成立しない。
これからもっと胃袋を鍛えて、誰しもが「小さな子供がこんなに食べるのか」と驚くように仕向けなければ。

今後が楽しみだ、と安楽椅子に揺られながら、老婆はにやりと笑うのだった。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
世知辛い世の中ですね〜。
子供まで金儲けに利用するとは。
でも子供のお使いや大家族なんかが視聴率を稼ぐんだから、いつかはこんなことも……。

お菓子の家っていいですね。
罠がありそう、と思ってもワクワクしちゃう!

余談ですが、ジャイアント城田ってすごいですよね。皿まで食べそう(笑)
ia.
2011/05/02 02:35
悲しいですが、番組に子供と動物を出すと、手っ取り早く視聴率が取れるらしいですからね。
このヘンゼルとグレーテルも、さんざん見世物にされた挙句体を壊してしまいそうな……。
そういやアメリカあたりだと、賞金目当てに無茶をやらせるっていうので、子供ネタの投稿ホームビデオはボツにするらしいですが。

お菓子の家、一度はあこがれますよね。
私としては、お菓子の家にしょっぱい部分が欲しいです。ポテチとかプリッツとか。なんならビーフジャーキーとか(お菓子じゃねえ)

私が初めてジャイアント城田を見た時は「でけえな」と率直に思いました。大食いと言われて納得ですよ。そりゃ食うだろ、みたいな。
鈴藤由愛
2011/05/02 12:34
ぱくぱくむしゃむしゃ プラスマイナス1/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる