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zoom RSS ママハハノキモチ

<<   作成日時 : 2011/01/05 14:51   >>

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あたしは小さい頃、母親を亡くした。
その後、父が再婚して、継母ができた。
継母は、あたしのことを嫌った。
自分の子供が産まれると、それはさらにはっきりした。
あたしは汚れた服を着せられて、小間使いのように扱われた。
……いや、「ように」なんかじゃない。あの女からすれば、あたしは可愛がるべき子供ではなく、小間使いだったのだ。
小間使いを小間使いとして扱うことに、良心の痛む事などあるだろうか。
父は、家庭内のぎすぎすした空気に感づいていたのだろう、仕事を言い訳にして家に寄り付かなくなった。
それからほどなく――あたしは継母に家を追い出された。

「あんたの稼ぎじゃ、親子四人で暮らしていくなんてできやしない。このままじゃ、全員飢え死にしちまうよ」

さすがに悪いと思ってか、引きとめようとした父は、そう告げられて黙り込んだ。

行くあてもなく歩きながら、あたしは幼い頭で考えた。
必死に、必死に考えた。
どうしてこんなに辛くて悲しくて惨めで悔しい思いをしなければならないのだろう?
あたしが悪い子供だから?
いろんなことをがまんして一生懸命家事をこなしてきたあたしが、どうしてこんな目にあわなければならないのだろう?

そのうちに、あたしは答えを見出だした。
そうだ。世間の継母というのは、こんなものなのだ。
継子を冷淡に扱い、食いぶちを減らす必要があるなら平然と捨てる。
そして、父親というものは、家庭の問題から出来るだけ遠ざかりたいのだ。面と向かい合うのも面倒だから、女に家庭を押し付けるのだ。
そう、だから、あたしは継母と継子としては実に平均的な扱われ方をしたのだ。
異常なことなど何一つない。これが、継母としての、普通。
そう悟ると、すうっと胸が楽になった。

その後、どうにか大人になるまで生き延びたあたしは、木こりの男に結婚を申し込まれた。
いよいよ一緒に住むという段階になって、男はあることを切り出した。

「実は俺、前の女房との間に子供が二人いるんだ」

男が言いにくそうにしていたのは、こぶ付きだと知れると、女が逃げるからだろう。

「かまわないよ。あたし、継母ってものがどんなものか、よく知っているから。上手くやってけるよ」

あたしがそう言うと、男は安心したように笑った。

そう。
あたしは継母ってものがどんなものか、よく知っている。
継子をどう扱うものか、その身にしみて知っている。

だから――あたしは。

「あんた、明日には子供達を森に捨ててこよう。このままじゃ、全員飢え死にしちまうよ」
「な、なんて事を言うんだ、お前は!」

あたしの言葉に、夫は目をむいて椅子から立ち上がった。
何か、常識を疑われるような事を言っただろうか、あたしは。
継母が、食いぶちを減らすために子供を捨てる。それが、そんなにおかしな事なのだろうか。
まあ、家庭の面倒ごとから逃げたがるのが男というものだし、理解しろというのも無理な話か。

「じゃあ、どうするのさ。どんなに切りつめても、もう親子四人で暮らすのは無理なんだからね」

夫が黙り込み、うなだれる。
しょうもない人だ。あたしが計画を練らないと。

「子供らを森に連れて行って、昼寝をさせよう。遠くの方で木を切っていると思わせるように、ちょいと細工をしておくのさ。なあに、夜になっちまうまで放っておけば、もう帰ってこれないだろうよ」

食いぶちを減らすために、継子を捨てる。
これは、継母としては普通のこと。異常なところは何一つない。
あたしだって、そうされたんだから……。

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