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zoom RSS 小人達のクリスマス

<<   作成日時 : 2010/12/04 12:08   >>

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*このお話は、矢菱虎犇様主催の「メリークリスマス! クリスマス競作やりましょう!」に寄せたものです。

朝、寝返りを打とうとして、体が動かないことに気付いた。
金縛りかと思ったが、指先や首は動かせるし、違うようだ。
首を限界まで上げて見ると、ガリバーよろしく体の上に細いロープが渡され、固定されているのがわかった。

「な、何だ!?」

強盗か、それとも俺に恨みのある奴の仕業か。
驚いていると、胸の上に小さな物がわちゃわちゃ集まって来た。
よく見ると、それは人間の姿をしていた。全員、緑色のとんがり帽子に緑の服、ブーツをはいている。
絵本で見かける小人そのものだ。

「やい、この悪党め!」

リーダー格らしい奴がきいきいわめき、俺の鼻を蹴飛ばした。
痛くはないが、かゆい。

「我々から奪った物を返してもらおうか!」

そんなことを言われても、身に覚えがない。

「知らん」

率直に答えたら、リーダー格が眉を吊り上げた。

「何だと! しらを切るつもりだな、悪党め!」
「いや、だから身に覚えがないんだって」
「おのれー!」

だから鼻を蹴るな。かゆい。

「我々の大切な道具を返せ!」
「返せ!」
「返せ!」
「返せ!」
「かさえ!」

……おい、間抜けが一人いるぞ。

「で、その道具ってのはどこにあったんだ?」
「あそこだ。大切に隠しておいたのだぞ」

そう言ってリーダー格が指差す方角にあるのは、タンスだった。
あー……そういえば、この前掃除した時に、タンスの裏にビーズの鎖みたいな物があったような……。
もしかして、あれのことだろうか?

「すまん。ゴミだと思って捨てた」

正直に答えたら、小人全員が「何コイツ信じられない」と言わんばかりの顔をして俺を見た。

「ご、ゴミだと〜!?」
「我らの大切な道具をゴミ呼ばわりとは、許せん!」
「報復だ!」
「我らの痛み、思い知るが良い!」
「いてまえー!」

小人達による、鼻を蹴飛ばしたり髪を引っ張ったり、それは容赦のない攻撃が始まった。
相手が小人だから良いものの、これが人間だったら……洒落にならない。

「いて、いて、いてて」

やめろっ、鼻毛を引っ張るな。

「わ、わかったわかった、弁償する、弁償するから勘弁してくれ!」

とにかく鼻毛を引っ張るのをやめさせたくて、俺は叫んだ。
すると、リーダー格が片腕を上げて仲間の攻撃を制し、俺の顔の前に立った。

「弁償するのだな」
「ああ」
「同じ物を用意できるのか」
「それは……」

そういえば、その大切な道具とやらは何で出来ていたんだろうか。
見た目通りビーズなら百円ショップで買って来て、ちょいと作ってやることもできそうだが……まさかダイヤモンドだの水晶だの、宝石だったりして……。

「その、大切な道具ってのは何だったんだ? 俺にはビーズの鎖にしか見えなかったが」
「そんな物ではない。あれは、夜つゆの粒をクモの糸でつないで作った鎖だ」

さらっと人知を超えた発言をされた。
夜つゆの粒とクモの糸なんか、どうこうできるか!

「我らはクリスマスの日にピカピカした物で長い鎖をこしらえ、地面に輪を作るのだ。そしてその中で火をおこし、神に祈りを捧げ、仲間達と飲食をする。それが我らのしきたりだ」

ピカピカした、ねえ……。
光ってれば何でも良い、ってことか?
それなら……。

「頼む、ロープを外してくれ」
「何故だ」
「代わりに使えそうな物が家にあるから、それを出してくる」

小人達が俺に背を向け、ひそひそ相談することしばし。

「わかった。外してやる」
「もし嘘をついていたら、今度は容赦しないぞ」

へいへい、わかりましたよ。
晴れてロープから解放された俺は、押し入れをあさった。
中にあるのは、むなしい男の一人暮らしのために無用の長物と化したツリーの箱。
それを持ってきて、中から電飾を引っ張り出して小人達に見せる。

「これならどうだ?」
「駄目だ、ピカピカしてない」
「まあ見てろ」

俺はコンセントにつなぎ、スイッチを入れてみせた。
赤、青、緑、黄色……色とりどりにライトが点滅する。
中でも一際まぶしい光を放つのは、ツリーのてっぺんに取り付ける、大きな星の形をしたライトだ。
見ていた小人達が、いっせいに「おお……」と、どよめいた。
何だかほほえましい。
さっき喰らった容赦ない攻撃のことも忘れてしまいそうだ。

「うむ、ピカピカしているな。これなら文句はない」
「ただ、こういう所にここをつながないと、光らないぞ」

俺はコンセントとプラグを交互に指差し、軽く説明した。

「なるほど、わかった」

全員が納得したようなので、電飾を外して渡してやると、小人達は一列に並び、電車ごっこの要領で電飾を持ち上げた。

「確かに弁償してもらったぞ。では、さらばだ」

リーダー格が片手を上げたのを合図に、奴らはとたとた歩き出した。

まあ、いろいろあったが、一件落着だな。
良かった良かった、さて、もう一眠りするか。
布団に戻ろうとした俺の耳に、小人達の会話が遠ざかりながら聞こえた。

「今年の聖夜は特別だな」
「盛大に祝えるな」
「後は料理と酒の調達だな」
「おいらは火をおこしておくよ」
「やったね、親分。大成功だ」

……ん? 大成功?
俺は、電飾を運んでいる小人達の方に顔を向けた。

「まさか、こんな上等な物が手に入るとはな」
「縛りつけてちょっと脅せば良いんだもんな、人間なんてちょろいもんだぜ」
「ピカピカ〜ピカピカ〜」

おい。どういうことだ。お前ら、俺を騙したのか。
ハナから何か騙し取るつもりで、大切な道具を奪われたなんて話をでっちあげたのか。
電飾はどうでもいいが、罪悪感にとらわれた俺が馬鹿みたいじゃねえか、この野郎!

「待てやこらああああ!」
「まずい、気付かれた!」

俺は小人達を捕まえようとしたが、奴らはとんでもない素早さでタンスの裏に逃げこんでしまった。
逃がすもんかと急いでタンスをずらしてみたが、ほこりがあるばかりで、小人の影も形もない。
結局、一人も見つけられなかった。

……というわけで、これを読んでいる貴方、この時期に小人を見かけたら、騙されないよう注意して欲しい。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
なんて微笑ましいお話でしょう!
僕は頭の中で実写みたいに楽しんでしまいましたよ。絵の雰囲気は子供の頃、図書館で借りて愛読した安野光雅さんの絵本の小人たち。小人たちのなんか悪戯っ子みたいな雰囲気がステキでしたぁ。
鈴藤さん、ありがとうございます。
僕もそろそろもうひとつ・・・といいつつ、他の妄想に走ってクリスマス以外の記事を書いてしまう矢菱です。
矢菱虎犇
2010/12/05 22:16
すみません、その方は存じ上げません<安野光雄
絵本は作者より題名で覚えてるので。「ぐりとぐら」とか、あとは「アイウエ王とカキクケ公」あたり(マニアック)

小人達はこれで悪ぶってるつもりなんですよ。
クリスマスに小人が来たら、ローストチキンを与えて観察していたいな、私としては。

妄想があるなら、それは片っ端から形にしてしまうのがよろしいと思います。
妄想できるのは、生きてる間だけなんですのよ!
鈴藤 由愛
2010/12/06 22:41
クリスマス競作企画、盛り上がってますねえ
メルヘンなんですけど、ちょっとした描写が大人って感じで笑えますね。
>痛くはないが、かゆい。
このへん、なんとも想像できちゃいます(笑)
ヴァッキーノ
2010/12/12 00:12
ええ、なんか向こうのブログにお邪魔したら毎日投稿なさってる方とかがいて「真似できん……」ってつぶやいてしまいましたよ。
みんな、すごいなあ。<盛り上がり

大人の男が小人を見たら、たぶんこんな反応じゃないかなと思います。
女子供とは違って、喜びも驚きも控えめ、的な。
鈴藤 由愛
2010/12/12 08:17
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