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zoom RSS 約193万人

<<   作成日時 : 2010/11/13 11:40   >>

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「ようやっと見つけたぞ、わらわの愛しい人」

帰り道、後ろから女の人に声をかけられた。
振り返ると、着物の上に薄い布を羽織った黒い長髪の女の人が、目をうるませていた。
愛する人、と言われたけど、身に覚えがない。
第一、全くの初対面だ。誰、この人。

「わらわのことを思い出せるかえ? わらわとそなたは千年前……」

そこまで言って、女の人は「んん?」と首をひねった。

「は、いや、これは……」

何だ、急にへたりこんだりして。一体どうした。

「な……なんと、これはおなごではないか。ああ、また人違いであったか……」

女の人は、袖で顔を隠して、しくしく泣き出した。
何て言うか……せわしない人だなあ。

「あの、どうしたんですか」

何が何だかさっぱりわからないので、聞いてみた。
すると、女の人は涙をふきふき説明してくれた。

女の人は人間ではなく、この神社の神木の精で、千年前、人間の男と恋に落ちたそうだ。
だけどそれは神様にとって許されざる関係だったようで、二人の仲を裂こうと、あの手この手を使ってきた。
それでも二人の気持ちが変わらないと知ると、神様は男の人を殺してしまった。
そして女の人……神木の精は罰として、千年間、木に封印されることになった。
男の人は死ぬ寸前、神木の精に言ったそうだ。
「今より千年の後、我が家系の末裔に生まれ変わってくる。その時こそ結ばれよう」と。
神木の精はその言葉だけを支えにして、封印が解ける日をじっと待ち続けた。
で、千年経って封印の解けた今、神木の精は生まれ変わっているはずの男の人を探している、というわけだ。

「まあ、何ていうか、ロマンチックな話だね」
「ろまん……?」
「あー……素敵な話だね、ってこと」

そうか、カタカナ語は通じないんだな。ちょっと発見。

「誰かに話を聞いてもろうたら、少々気が楽になったわ。探しに行く気力も出て来たえ、そろそろ行くかいの」

神木の精は、目の端に残った涙を袖でそっと押さえると、私に微笑んで見せた。
泣いていた人が笑ってくれると、見ている方もホッとするよ。

「早く会えるといいね……。あっ、ねえ、その人の名前とか、わからないの?」

案外、神木の精が探している人って、私の知り合いだったりして。
そう思って聞いてみた。

「うむ。あやつは藤原家の出でな、佐藤という一族の者じゃ。では、さらば」

え。
私が声に出す前に、神木の精は消えてしまった。
花のような良い香りを後に残して。

神木の精さん、あなた、今の日本に何人の佐藤さんがいるか、知らないのね……。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
タイトルの「193万人」ってそういう意味だったんですか!オチを読んで思わずニヤッとしてしまう上手いタイトルですね。
こんなサイトを見つけましたよ。
変わった苗字ランキング http://vote3.ziyu.net/html/bayaphy.html
せめて山本さんくらいだったらねぇ……(笑)
ia.
2010/11/24 01:29
今回のタイトルはそれを狙ってつけました<オチ

最初は鈴木さんで書いてたけど、由来調べて「なんか説明がくどくなりそう」って考えて佐藤さんに変更しました。

あ。かわった苗字といえば、私は「目」という苗字の人に会ったことがあります。
鈴藤 由愛
2010/11/24 07:19
約193万人 プラスマイナス1/BIGLOBEウェブリブログ
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