プラスマイナス1

アクセスカウンタ

zoom RSS うさぎ物語〜かちかち山異聞2〜

<<   作成日時 : 2010/01/31 14:12   >>

トラックバック 0 / コメント 4

かくて、孤独な身の上となった幼い子うさぎの、新たな生活が始まった。
頼れるのは自分だけという生活は、それはそれは過酷なものだった。
幸せそうな他の子うさぎをうらやんだことは、数え切れぬほどあった。
大人のうさぎにいじめられ、つまらない誤解からのけ者にされて泣いたことも、一度や二度ではない。

そんな時、子うさぎはおばあさんうさぎのことを思い出し、己を奮い立たせた。

(大きくなって、絶対、おばあさんの仇を取るんだ!)

いつしかおばあさんうさぎの仇討ちへの執着が、子うさぎの生きる支えとなっていた。

そして月日は流れ、かつての幼い子うさぎは、立派な若いうさぎへと成長を遂げた。
成長したうさぎは、足と顔を黒く塗りたくり、耳を隠し、たぬきのそれによく似た毛皮をかぶって変装した。
行商をしているたぬきになりすまして彼らの住みかに近付き、おばあさんうさぎを突き落とした、あの憎いたぬきを探し出すためである。

憎いたぬきを探して歩き、はや一年が過ぎた頃。うさぎは、山のふもとで子だぬき達が集まって遊んでいるところに出くわした。
この辺りに住んでいるのだろうか。年かさの子だぬきと小さい子だぬきが七つ、合わせて八つもいる。
これだけいれば、あのたぬきについて、何か知っているのがいるかもしれない。
うさぎは声をかけてみることにした。

「やあ、この辺りの子かい?」

善良そうな笑顔で話しかけると、子だぬき達はさっと集まって一斉に警戒した目を向けた。

「誰だよ、あんた」

一番年かさの子だぬきが、年下の子だぬき達を守るように前に進み出てくる。

「ぼくは行商をしているたぬきだよ」
「じゃあ、うちに用はないだろ。うちは貧乏なんだ、何も買えやしねえよ。商売したきゃよそに行けよ」

憎まれ口を叩く年かさの子だぬきと、それにぎゅっとしがみついている小さな子だぬき達。
話を聞いてもらえるような雰囲気ではない。
警戒を解いてもらうにはどうするか……うさぎが思案を始めた、その時。

「おう、お前ら、どうした」

忘れようはずもない声がした。
探しに探して回っていた、あの憎いたぬきの声だ。
うさぎの背中を、雷が落ちたかのような衝撃が走った。

(見つけた……!)

振り向いたうさぎの目は、こちらに歩み寄るたぬきの姿をとらえていた。
あの頃よりも老け、毛皮に白い部分が増えてはいるが、間違いなく、あの時のたぬきだった。

「お父ちゃん、おかえりなさい」
「お父ちゃん、だっこ」
「おんぶして」
「あのねあのね、今日、山ぶどうとってきたの」

子だぬき達はうれしそうに駆け寄って、口々に話しかける。
たぬきはそれを聞きながら、くしゃくしゃと頭をなでてやっていた。
この子だぬき達が誰の子かは、聞くまでもないだろう。
どこからどう見ても、幸せそうな光景だった。

うさぎは、憎しみの感情を顔に出さないようにするのが精一杯だった。

(ぼくのおばあさんを殺しておいて、自分は幸せな家庭を持っているっていうのか!)

うさぎは、そう叫びたくてたまらなくなったが、子だぬき達の見ている前だからと思い直した。
親が悪者だと知らされる時の衝撃は、自身がよく知っていたから。

「なんだ、てめえは」

うさぎに気付いたたぬきは、子だぬき達を自分の後ろに下がらせ、うさぎをにらむ。

「行商だって言ってたよ、親父」

年かさの子だぬきが言うと、たぬきは「ふうん」と一応納得した様子を見せた。

「てめえ、もうじき日が暮れるってのに、これから山を超えるつもりか?」

それから、口調こそ乱暴だが心配するそぶりを見せた。

「やめとけ、ここいらは冷えるぞ。良かったら家に来い。汚えし食わせるもんは何もねえが、山ん中で遭難するよりはましだ」

好都合だとうさぎは思った。
寝ているところを襲ってしまえば、簡単に仇討ちもできるだろう。

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

うさぎは一見、悪意のかけらもないような笑みを浮かべながら、ちらりとふところを気にした。
ふところには小刀が一本納まっていた。
仇であるたぬきを見つけた時のために用意していた物である。

「すぐ近くだ。ついて来い」

そう言ってたぬきは歩き出す。
その後を、誰が誰と手をつなぐかできゃいきゃいと騒ぎながら、子だぬき達がくっついて行く。
ただし、年かさの子だぬきだけは、うさぎのことを探るような目で見上げていた。

「……何だい?」

うさぎと目が合いかけると、年かさの子だぬきは何も答えず、さっと皆の方に駆けて行く。
妙な子だと思ったが、うさぎはそれ以上追求して考えなかった。

今一番考えなくてはいけないのは、仇討ちのこと。
いよいよ待ち望んだ機会が巡ってきたのだ。逃すわけにはいかない。

皆の後ろを歩きながら、うさぎは、ぞっとするような目つきをしていた。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
いよいよ、敵の懐に入りそうですね。
このうさぎの兄弟はいないのかな?
続きはどうなるか、楽しみです!
銀河径一郎
2010/02/02 23:42
うさぎに兄弟がいるかどうかまでは考えてませんでした。
……えー……今から付け足すのめんどいんで、いないってことで(おい)
次回、仇討ちなるか?
乞うご期待!
と次回予告風に言ってみる。
鈴藤 由愛
2010/02/03 21:18
お久です(笑)
私の個人的な嗜好ですが、昔話のアレンジとか動物が登場する話は大好きです。
どんでん返しとか、あるのだろうか。私だったら、こんな展開を考えるなとか……。

あまり野暮なことは言わずに、今後の展開を楽しみにしています^^;
たろすけ(すけピン)
2010/02/03 22:52
昔話とか童話をネタにあれこれ考えるのは私も大好きです。
この場面の裏側はこうなってるかも! とか。
描写の短さがいい感じなんですよねえ。

次回以降も楽しんでいただけるよう、精進しまっす。
鈴藤 由愛
2010/02/03 23:01
うさぎ物語〜かちかち山異聞2〜 プラスマイナス1/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる