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zoom RSS 白地に茶色いぶちのある子猫

<<   作成日時 : 2009/07/05 15:45   >>

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ソファーで昼寝をしていて、ふと息苦しさを感じた。
目を開けると、ソファーの背もたれに一匹の赤トラの猫がいて、俺をじっと見ていた。
……この家には猫はいない。
どこから来たんだろう、と寝ぼけた頭で考えていると、

「少々、よろしいか」

猫の口から、えらくかしこまったしゃべり方の、男の声がした。
俺は思った。
これは夢だ。だって、現実に猫がしゃべるわけがないのだから。
そう思えば、別に恐ろしくもなんともない。夢の中なんて、不条理なことだらけ&へんてこなことだらけでナンボの世界だ。

「なんだよ?」
「これから裁判が行われる。我々の裁判では、常に人間を一人傍聴させている。今回は貴殿を傍聴役として選び出したのだが、無理強いはしない。興味があるならついて来ると良い」

猫の裁判なんて、我ながら変わった夢を見ているもんだ。
俺はのそのそ起きて、猫の後について行った。

猫の案内で到着したのは、草がぼうぼうに伸びた、狭い空き地だった。
そこには白、黒、三毛、キジトラ、サバトラ、白黒ぶち……たくさんの猫がいた。
裁判と言っていただけあって、それらしいような座り方をしている。
白地に茶色ぶちのある四匹の子猫がいて、それを中心に丸く囲んで大勢の猫が座っていた。

……白地に、茶色いぶちのある子猫……。

俺は、なんだか心の奥に引っかかるものを感じた。

「長老さま、連れてまいりました」

赤トラの猫が、黒猫のところへ行ってうやうやしく頭を下げる。

「ご苦労」

黒猫は俺をちらっと見ると、「輪の中心へ」とうながした。

「では、裁判を再開する」

俺が子猫の近くで突っ立ったのを見ると、黒猫がおごそかな声を上げた。

「この子供らが、掟を破り、よその縄張りを荒らしたのは間違いないのだな」

「はい」

黒猫のそばにいるキジトラの猫が答える。
黒猫が、四匹を見つめる。
四匹は心細そうに寄り添いあって震えていた。

「何故、よその縄張りに入った?」

「ごめんなさい」

「あのね、ごはんが、なかったの」

「おかあさん、しんじゃった……」

「おなかすいたぁ」

「長老さま、見ての通り、この子達は親もなく、処世術を学ぶ機会がほとんどありませんでした。ぜひ、寛大な処置を」

赤トラの猫が生真面目な口調で弁護している。

「よその縄張りを荒らした者は、掟により追放と定められている。幼い子供のすることだからと定めを変えていては、他の者に示しがつかん」

「そうだ。お前はいつもそうやって幼い子供の味方をするが、集団というものには規律が必要なのだぞ」

「規律は大事」

「守らぬ者には厳罰を」

「秩序ある社会こそ理想」

周りの猫達が、いっせいにわあわあ声を上げる。
子猫達が、おびえてぎゅっと体をくっつけ合った。

……白地に、茶色ぶちのある子猫。


俺は、ふっと思い出した。

子供の頃、親戚のおばさんからゆずってもらった、白地に茶色ぶちのある、メスの子猫。
だけどその猫は、発情期になった時、俺が開けた窓から飛び出して行ってしまった。
探しに行って、見つけた時には車にひかれて死んだ後だった。
「俺が窓を開けなきゃ、死ななくてすんだんだ」って、大泣きして後悔した。
そのうちに、あまり思い出さなくなってしまった。

白地に、茶色ぶちのある子猫……。

「掟を守れぬやつを置いておくことはできん。早々にこの一帯から出て行け」

黒猫のおごそかな声が響いたその瞬間。
気が付いたら、俺は、手を上げていた。

猫たちの視線が、いっせいに俺に向けられる。


「俺が引き取るっていうのは……あり、なのか?」


――そこで、目が覚めた。

ああ、夢だったんだよな、今の。

俺は起き上がり、ソファーの上に座り込んだ。

……なんだか、胸が痛い。
あの子猫達、一体どうなったんだろう。
夢の中の話とはいえ、気が重い。

「ちょっと! タクロウ!」

そこへ、母さんの大声が聞こえてきた。

「なんだよ〜」

感傷的になっていた俺は、ふてくされながら母さんのところに行った。
母さんは俺が昼寝をしている間に買い物に行っていたらしく、買い物袋をぶら下げて、玄関に仁王立ちしていた。

「あんた、どうしたのよこの子たち! いつの間に拾ってきたの?」

デレデレした顔つきの母さんの足元で、白地に茶色ぶちのある子猫が四匹、ミイミイ鳴きながらぱたぱた走り回っていた。


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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
ネタに困ったときは猫に頼る。
鈴藤 由愛
2009/07/05 15:47
子猫が可愛すぎるっ!大人猫たちの言い分もわかる気もする、でもこれは見過ごせませんよね。
えらくかしこまったしゃべり方の猫が登場したとき、なぜか「今回は猫執事の話か」と思いました。そんな猫、いないかw
シンプルだけどハラハラする展開で面白かったです。
ia.
2009/07/14 01:53
猫執事、良いですね〜。今度何かに使わせてもらいますよ(ニヤニヤ)
ぐだぐだ書く癖がついた気がしたので、今回はシンプルさを心掛けて書きました。えへ。

猫裁判、実は大人猫達が身寄りのない子猫を人間に世話させるために仕組んだ、とも考えられる事に今気付いてたり……。
鈴藤 由愛
2009/07/15 22:05
おそくなりました。

>「少々、よろしいか」
このセリフ、良かったです。赤トラが分別ある猫だということがいっぺんにわかったわ。
ミイミイいう子猫たちも可愛らしい。気づいたら手を上げていた主人公の気持ちもよくわかりました。
困ったときは猫ネタかあ。なるほどね。よく観察しなくっちゃ。
つる
2009/07/25 22:42
どもー。
猫の魅力は気まぐれ&気ままなところと言いますが、こういう謙虚な奴がいたっていいじゃない! ということでこんな設定に。

一説によると、白猫は気が強くて黒猫は優しい&ビビりで、キジトラはワイルドらしいです。
でも、うちの白猫はきゅうり好きの変わり者で、茶色ぶちの猫は繊細で慎重派。

いえ、私が単に猫好きで猫ネタだと気楽に作れるからです。犬好きなら犬を、インコ好きならインコで作ればよいのです、たぶん。<困ったときは
鈴藤 由愛
2009/07/26 11:22
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