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zoom RSS 君の言い分、君のココロ。

<<   作成日時 : 2008/10/18 22:25   >>

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*このお話は、ia.様にリクエストいただいたものです。ia.様、出来に関しては寛大にっ、寛大に……っ!

――今、真夜中。
三日月が、のほほんと空に浮かんでる。

普通なら、人ン家に行くのはご遠慮しましょうね、っていう時間帯。
でも、気にしない。だって相手は幼なじみのアイツだから。

「ナオト〜、開けてぇ〜」

あたしは、わーわーわめきつつマンションのドアを叩く。
酒の力を借りた今のあたしは、怖いものなし。

ご近所さんには申し訳ない、って思うけど。

「……何だよ」

そのうちドアが開いて、寝たばっかりだったのに、って言わんばかりの顔した男が出て来る。

ナオト。あたしの幼なじみだ。

「ナオト〜……あたし、失恋しちゃったぁ〜!」

あたしは、ナオトにしがみつく。

――ナオトの匂い。

胸がきゅっとしめつけられるように痛くなって、甘酸っぱい気持ちがあふれてくる。

「またかよ、おい」

ナオト、完全に呆れてる。

「またって何よ〜!」

「今年に入ってもう三回目じゃねえか。いい加減にしろっつうの! しかもお前酒くさっ」

「中入れて。外寒い」

あたしはナオトの発言無視して、ぐいぐいすき間に体を押し込む。

「おい」

ナオトは、はっきりしっかりくっきり「迷惑だ」って顔してる。

でも、気にしない。
気にしたら、オシマイだから。





「お前、最短記録また更新したな。二日ってありえねえぞ」

散らかってる部屋の中、ちっさいテーブルを囲むあたしとナオト。

あたし、正座。
ナオト、腕組み&あぐら。

「だってえ……相手に彼女いたなんて知らなかったんだもん……知らないで好きになっちゃったんだもん……」

床の上に人差し指でひたすら○を書いて、うじうじした態度を取り続けるあたし。

「本気で好きなら奪え。略奪愛だ」

「無理!」

即答すると、ナオトが顔をしかめた。

「お前なあ……ほいほい一目惚れするくせに、肝心なトコで臆病になってんじゃねえよ。毎回このパターンで失恋してんじゃねえか。そんだけ惚れっぽかったらなあ、惚れた瞬間告白するぐらいの勢い身につけろって」

「ひっどーい! あたし失恋したのよ、ちょっとは優しくしてよ!」

「ああ、俺だってなあ、ごく普通に失恋したんなら優しくするさ。幼なじみだしな」

――幼なじみだしな。

その言葉が、あたしの胸を突き刺す。

ナオトにとっては、あたしなんてそのぐらいの存在でしかないんだ。

ナオトにしてみりゃ、あたしなんか……男にすぐ一目惚れして、告白しないうちに失恋しては毎回泣きついてくる、面倒な幼なじみ。

ただ、それだけなんだ。

……どうしよ。
もう何も考えられない。

頭の中、真っ白。
ナオトが何か言ってるけど、全然頭に入らない。

「聞いてんのか、おいっ」

しびれを切らしたらしいナオトが、ばんっとテーブルを叩く。

「……っく、ひっく……」

あ……涙、出てきた。

「うわっ、な、泣くなって」

泣いてるあたしを見て、ナオトが思いっきりうろたえる。

……ごめんね、ナオト。

ホントはね、失恋なんかしてないの。
そもそも、誰にも一目惚れなんかしてないの。
全部、作り話なの。

「失恋した」はね、アンタの部屋に来る口実なの。

だって、いくら幼なじみって言ったって、今じゃお互い実家出て一人暮らしだし、こうでもしなきゃ、あんたに近付く理由、見つからないんだもん。

……ナオトは気付いてないと思うけど、あたし、小さい時からナオトの事、ずっと好きだった。

でも、ナオトは「もしかしたら」って思えるような態度、一度も見せなかった。
脈はないんだな、って思いながらも……あたし、どうしてもあきらめ切れないまま、今まで「幼なじみ」やってきた。

……こうなったら、思い切って告白するしかないのかな?

だけど……怖い。
ナオトに「ごめん」なんて言われたら……なんて思うと、たちまちハートがぺしゃんこにつぶれる。

「……泣いたらスッキリしたろ。もう帰れ」

タオルを差し出すナオトの声が、ちょっと優しい。
ハンカチじゃないところが、ぶっきらぼうなナオトらしい。

「やだー。失恋したショックで体動かないーっ」

あたしは、丸テーブルにべたっと張り付く。

「あ〜の〜な〜っ」

ぐう。

必殺、たぬき寝入り。

「おい、起きろ。起ーきーろ」

ほっぺたを軽くぺしぺし叩かれるけど、あくまでも寝たフリ。

そのうち、はあ、とナオトがため息ついて立ち上がる気配を感じた。

そのうち、ばふ、と毛布が頭からかぶせられる。
ごつごつしたナオトの手が触れて、あたし、ほんのちょっと幸せ。

「……ったく」

ギシギシとパイプベッドのきしむ音。
薄目を開けてそ〜っと見ると、ナオトはこっちに背中を向けて、ベッドに寝転がっていた。

……ねえ、ナオト。

あたし、がんばるから。
ダメもとで告白できるぐらい、タフな女になるから。

だから、その日まで、幼なじみでいてくれると……うれしいな。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
やだっ!かわゆすぎる!
>今まで「幼なじみ」やってきた。
ここ、ぐっときました。やっぱり一人称はいいな。女心が核心をついてます。彼の自然体もいいです。嘘をつく女の子は好きじゃないけど、これはなんだろ、筆力か?、主人公の嘘に納得して、なおかつ共感できました。
つる
2008/10/19 00:00
久々の恋愛モノで緊張しました。
共感していただけたならうれしいです。
うっしゃーおっしゃーよっしゃーです。

女の一人称は書きやすいですね〜。
同性だからかな?

出会って一年とか二年とかの間柄より、長年友達でした、っていう間柄の方が、告白しづらそうな気がします。
何となくですけど。
鈴藤 由愛
2008/10/19 08:57
すみません、読み逃していました。
男を翻弄するなんて、なんて悪い女なんだ〜。っていうか、隠した思いが切なくて可愛いですね。
それにしてもこの状態でまだ友達扱いとは。ナオトは、よほどニブイのか、性悪なのか(^^
ia.
2008/10/23 22:39
タイトルに一言書いておけば良かったですね、スイマセン。

ナオトはきっとニブイのです。
でなきゃ、夜中に来る女を置いて一人さっさと寝たりせんですよ。
……でもある意味それも性悪?
翻弄しているのはむしろナオトの方かっ!
鈴藤 由愛
2008/10/24 07:46
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