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zoom RSS 足元からの危機(二十三回目)

<<   作成日時 : 2008/09/12 23:36   >>

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「お、オバちゃんが……猿……」

開いた口がふさがらねえ。
そりゃ、あんまりにも強過ぎるオバちゃんだとは思ったけどさ……まさか、若桃の家来の猿だとは……。
事実は小説より奇なりってやつか、うーん。

まあ、これで桃太郎の家来の、犬(タマちゃん)、猿(オバちゃん)、キジ(オカマ)がそろったわけだな。
……いや、そろったから何だ、って言われると困るけど。

あれ?

オレは、ふと違和感を感じた。

「その家来が、何でこんなトコにいるんだ?」

家来っていうと、普通、常に主のそばに控えてるもんだよな。

「私の場合はね、閉じ込められてたのさ」

オバちゃんが、何だか悲しそうに笑った。

「何でっ? あ、中に入ったのを誰も知らなくて、鍵かけられたとか?」

「違うよ。若桃様の命令さ。刑罰だよ」

「刑罰……」

だからってこんな、死体置き場なんかに閉じ込めるのは、陰険過ぎるんじゃなかろうか……。
オバちゃん、よっぽどの事をしたに違いない。

ちょっと、興味が沸いた。

「一体何したんだよ?」

「知りたいかい? 若桃様のお命を狙った、っていう罪状さ」

「えええええーっ!」

なっ……家来なのに、若桃を殺そうとしたのかよ!
とてもそんなことしそうに見えないけど、これはあれか、人は見かけによらない、ってやつか。
恐ろしい……。

「まあ、冤罪(えんざい)なんだけどね」

「へ?」

「無実なんだよ、私は」

オバちゃんの表情が暗くなって、背中が丸くなるのがわかった。

「ど、どういうことだよ?」

「そのくだり、聞きたいかい?」

オバちゃんは、目だけを動かしてオレに聞いた。

……こく。

オレは、その目を見つめてうなずいた。
その話を、聞いておかなきゃいけない気がしたから。

「若桃様は、鬼達とは信頼の絆で結び付いてるって思ってるけど、鬼達の方は違うんだよ。さんざん利用した揚げ句、どこかで切り捨てるつもりでいるの。私はそれに気付いて、キジに打ち明けた。キジにはすぐに信じてもらえたわ。その後、若桃様に進言したの」

だけど、とオバちゃんは声を詰まらせる。

「……肝心の若桃様は信じて下さらなかった。馬鹿な事を言うな、の一点張り。キジと一緒に、何度も説得したけど……駄目だった……」

そういや、キジも「何度言ってもわかって下さらなかった」って言ってたな。

「そんなある日、若桃様がお一人でいるところを、何者かが襲ったの。犯人は若桃様を切りつけただけで逃げたわ。すぐに犯人探しが始まって……私の持ち物の中から、若桃様の血のついた短剣が見つかったんだよ。私は、短剣なんか一本も持っていないのに、どういうわけか出てきたんだ」

オレは、ゾッとした。
その真相について、想像がついたからだ。

「それって――鬼が罠にかけたって事か!?」

「……ああ、そうだよ」

オバちゃんの口調が淡々としてるのが、妙に頭に来る。
どうしてだろう。
よくわからないけど……イライラする。

「まさか、泣き寝入りしたんじゃないだろうな?」

「何度も言ったよ。違う、ってね。でも、若桃様は仕えて来た家来の言葉じゃなく、鬼達の言葉を信じたんだ。それに、目の前に証拠の短剣があっちゃ、どうすることもできなかったわ。若桃様は失望しきった顔で私を見ていた」

そこまで言うと、オバちゃんは泣くのをこらえるように目を閉じた。

「私は無実なんだ。でも、若桃様は私の言葉を信じてくれない。だから私は……若桃様が出ても良いとおっしゃるまで、ここにいようって決めたんだ。無実を証明しようとしてここから脱走したら、それこそ本当に信用をなくしてしまう……そう思ってね」

オレは、がしっとオバちゃんの両腕をつかんだ。

「オバちゃん……もう、大丈夫だから。ここ出ようぜ」

オレの言葉に、オバちゃんが、驚いたように目を開ける。

「どういう事だい?」

「メガネ男……鬼の総大将が、本性出したんだ。若桃に剣を突き付けて、本当の目的をバラしたんだ。若桃はショック受けてたけど、もう目が覚めたと思う」

「何だって!?」

オバちゃんが、心底驚いた顔でオレを見る。
でもその顔は……どこか喜んでいる風にも見えた。

無理もないよな。
だって、ずっとだまされていた若桃の変化を知らされたんだから。

「で、その時オレ、鬼の総大将のこと頭に来たからブン殴ろうとして、グサッてやられた」

オバちゃんは、あきれた顔でため息をついた。

「無茶したもんだねえ……で、若桃様はその後どうなったんだい?」

無茶……だよな、やっぱりな。
オレ、何でもっと慎重に行動できなかったんだろう。

おかげで、オバちゃんにこれ以上教えられる事がない。

「ゴメン。わかんねえ」

「……気にしなさんな。こうなったら、グズグズしてられないね」

オバちゃんが、背すじをスッと伸ばした。
表情が別人みたいにきりっとしてる。

「助けに行かなきゃ。作戦を練るよ」

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
んまあ!男前のオバちゃんだわ。頼もしいな。
つる
2008/09/13 13:21
おばちゃんの伏線、長いわ! すみません、キレまして(笑)かすかな記憶を頼りに確認したら、おばちゃん、第三回目の登場じゃありませんか。
いろいと苦労されたんですね、おばちゃん(泣)
ia.
2008/09/13 13:26
つる様>男前で頼れるキャラが好きなので、オバちゃんをそう設定しました。
小崎くんをガシガシ引っ張ってもらいたいと思いますいやっほう。


ia.様>出す機会がなかなか無かったんじゃ!(何故お前までキレる)
オバちゃんは苦労人ですが、でも一番は小崎くん。
負けるな小崎くん(オバちゃんは何処へ)
鈴藤 由愛
2008/09/13 16:31
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