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zoom RSS 足元からの危機(二十一回目)

<<   作成日時 : 2008/09/10 23:53   >>

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「な、に?」

いきなり何を言い出すかと思えば……死んだ方が良いだの、死んでおけだの抜かしやがって!

カアッと頭に血が上った。

「何でそんな事言われなきゃいけねえんだよ!」

「そりゃ、ご先祖様の親心ってやつだよ」

文吾は、顔色一つ変えなかった。

「何が親心だっ!」

親心があるんなら、死ねなんて言わないだろうがよ!

「親の心子知らず、だあな。お前、弱っちいから、ここで無理くり復活しても、近いうちまた死ぬぞ。二度も痛い思いさせるなんざ、むごいからな」

文吾は、オレの肩に手を置いた。

「それにだ。思い出してみろ。お前、存在消されたろ。親も、友達も、誰一人お前の事を覚えちゃいない。言うなれば、お前は“いない”んだ。死んだところで、誰も悲しまない」

――反論できなかった。

言われてみれば、その通りだ。
オレが死んだところで、父さん母さん、ばあちゃん、サトル……誰も悲しんだりしない。

だって、オレの記憶がないんだから。

「今なら、心おきなくあの世に行けるぞ。寂しいかもしれんが、少なくとも痛い思いはしなくて済む」

何も言えないのが、ひたすら悲しくて悔しい。

オレは、マンガや映画や小説や……お話の中に出てくるヒーローじゃない。
ただひたすらに弱っちい。
そのくせ後先考えず突っ走る。

結局、力不足だったんだよ……オレ。

そう考え始めた頭の中で、電流みたいにビリビリしたものが走った。

――良いのか?

桃太郎と「あんたの息子を止める」って約束したじゃねえか。
それを放り出して良いのか?
力不足でした、って謝れるほど、オレ、頑張ったか?

それに、タマちゃんはどうなるんだ。

「あるじ」であるオレに従って、地下帝国までついてきてくれたタマちゃん。
こんな見知らぬ所に連れて来られて、苦労させられて、とんだとばっちりだ。
このまま大人しく死んだりしたら、見捨てるようなもんじゃないのか?
無責任過ぎないか?

オレ、タマちゃんには責任取らなきゃいけない。
勝ち目とかそういうの考えないでこんなとこ連れて来ておいて、後は自分で頑張れ、なんてわけにはいかない。

だって、「あるじ」なんだから。

――まだ。
まだまだ、やれる事、あるような気がする。
まだまだ、悪あがきできるんじゃないのかって気がする。

「死ねるかよ……」

オレの中で、お湯がふつふつと煮えたぎるようだ。

「オレはまだ死ねない! まだやる事が残ってるんだ、逃げるわけにはいかねえ!」

「……よく言った」

文吾はくしゃっと笑うと、オレの頭をぐしゃぐしゃかき回した。

なんか、妙にホッとする。
自分と同じ顔の、同じ年頃の奴に言われてるのに、ずっと年上のおっちゃんにそうされてるみたいだ。

「だけど、覚悟しろよ。お前、死にかかってんだからな。目ぇ覚めたら、痛いなんてもんじゃないぞ」

……げ。

オレは、ちょっと尻込みした。

「そんなに痛いのか?」

「おう。痛いも痛い。身がよじ切れるほど痛い。お前、絶叫モンだぞ」

文吾が、ニヤリと笑った。

「お……」

そんなに痛いんだろうか。
オレ、注射も歯医者もダメなのに、それを上回るなんて……。

「やめるか?」

「うんにゃ」

オレは、首を横に振った。

一回決めたら、後はグダグダ言わないでつき通せ……ってのは、小学生の時に死んだじいちゃんの言葉だ。
要するに勢いは大事だぞ、という意味だろうけど、オレはこの言葉、気に入ってる。

「……頼んだぞ」

文吾の言葉の直後、辺りを、濃い霧みたいなものが覆い尽くした。
そのせいで、文吾の姿がかすんでいく。

「お、おい、文吾……」

ちょっと不安になって呼びかけた、その時。

「ハッ!?」

強烈な息苦しさが襲ってきて――オレは、目を覚ました。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
なんかエライことになってますねぇ。ここまで凝った桃太郎パロを読むのは初めてですよ。
敵・見方が入り混じって、今後の展開がどうなるのか、気になります。
ia.
2008/09/11 23:00
実は、桃太郎パロディにしようと思ったのは途中からでして、最初はこげな大掛かりな話にする予定じゃありませんでした。
予定は未定ってやつですね。
書くたびに「完結できるんだろーか」と自問自答しとります、はい。
次回、いよいよ猿の登場です!
鈴藤 由愛
2008/09/11 23:36
いいわ、いいわあ。わたしね、実際に強い弱いは関係ないと思ってるんです。ハートですよ。ハート。小崎君のこういうところが好きです。
つる
2008/09/12 00:39
ハートは大事ですよね!
小崎くんは、普段バカタレでもいざとなったら芯の強さを見せるので、逆境に立たせる甲斐があります(おい)
鈴藤 由愛
2008/09/12 12:09
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