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zoom RSS 足元からの危機(三十五回目)

<<   作成日時 : 2008/09/27 23:10   >>

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「ぐ……っ」

鬼の総大将が、苦しそうな声を上げる。
金ピカ鎧からのぞいて見える皮膚の表面が、波打って見えた。

う、うわ……気色悪ぃ。

目をこらすと、皮膚の表面にいくつもの顔が浮かんでは消えてを繰り返しているのがわかった。
波打って見えるのは、このせいらしい。

「いやだ……いやだ……消えるのはいやだ……」

「これは俺の体……」

「痛いのは御免だ……あああ……」

「俺の体を、勝手に使うな……っ」

恨めしげな表情や悲痛な表情を浮かべた顔。顔。顔。
もしかしてこの顔って、取り込まれた兵士達の……?

「返せ……」

「俺の体を返せ……」

「返してくれようぅ……」

次々に上がる訴えに、直立状態で身動きの取れない鬼の総大将が、不愉快そうに顔をしかめる。

「……うるさい……私の一部に過ぎない分際で、意見をするつもりか……お前達に個人の権利などない……っ」

――オレは。

鬼の総大将に取り込まれていく兵士達の姿を見て、無性にむしゃくしゃした理由がわかった。

個人っていう見方をされない、その扱われ方が、ものすっげえ気に食わなかったんだ!
あいつらは間違っても友達なんかではないけど、何かの部品に過ぎないような、そんな価値しかないような奴らじゃない!

「クソ野郎がっ!!」

オレは罵声を投げ付けた。

だが……身動きできない相手に罵声を浴びせるのって、あんまり、良い気はしないもんだな。
結局余計なモヤモヤを抱える羽目になって、オレはチッと舌打ちした。

「若桃殿、あるじを頼みます」

突然、そう言い残してタマちゃんが走り出す。

「え……あっ」

目を向けたオレは、処刑場の端に、オカマを見つけた。
そこから鬼の総大将をはさんだ対角線上に立つ、オバちゃんの姿も。

二人とも、目を閉じて、意識を集中させてる。
その体から、金色の光が湯気みたいに立ち上ってた。

……ゴメンよ二人とも。
逃げてったとばかり思ったんだけど、実は別にやることがあったんだな。

しかし、一体何をしてるんだろうか。
パワーアップするのか、何かに変身でもするつもりなのか?

「キジ殿、猿殿!」

タマちゃんが立ち止まる。
そこは、オカマ、オバちゃんの立ち位置と結ぶと三角形になる地点だった。

タマちゃんが、四つ足を踏ん張る。
たちまち金色の光が全身から立ち上り始めて……。

「霊獣霊鳥の名において、彼のものを封印する!」

オカマ、オバちゃん、タマちゃんが同時にそう唱えた。

途端、鬼の総大将を拘束していた光の糸がほどけて、星マークに似てるけどちょっと形の違う……ああそうだ、陰明師だかで見たことのある、三角形を二つ重ねたようなマークを形作る。
そのマークは、鬼の総大将の腹の辺りに浮かんでいた。

「印!」

オバちゃんが、よく通る声で叫びながら両手の指を組んだ瞬間、そのマークからまぶしい光が溢れ出した。

「うわっ」

オレは、手をかざして目を守った。
サングラスがあったらぜひ使いたいところだ。
こんなまぶしい光、まともに見たら目がつぶれるって。

ぐおおおおぉぉぉ……っ!

ケダモノみたいな叫び声が、こだまする。

ずずずずずっ……と地鳴りが始まって、ホコリだか土だかわからないものがパラパラ降り注いでくる。

……おい。
ここ、『地下』帝国なんだけど、こんな地鳴りが起きて、大丈夫なのか?
ひょっとしたら全員生き埋めなんてことに……?

「おのれぇ……っ……人間どもがあああ!!」

――血を吐くような、鬼の総大将の断末魔の声が、辺りを震わせて。

そのうち、静けさが戻って来て目を開けると、もうどこにも鬼の総大将はいなかった。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
更新、早いですね。
ラスボスに向かって「気色悪ぃ」とか「クソ野郎」とか、言いすぎですよ、オザキくん。しかも「サングラスがあったら」って(笑)どこか脱力系の主人公が、なんだか好き♪
あれ?封印されちゃったの?ラスボスの変身は3回くらいがお約束じゃあ?
ia.
2008/09/28 01:47
脱力系ですね、小崎くんったら。
ラスボスも相手が熱血野郎ならオラオラやりあえて、本望だったろうに……。

だ、だって私、戦ってるシーン書くの苦手なんだもん……(なら何故そんな話を書きたがる)<封印
それまで倒して来たボスキャラが連続で出てきたり、魔王を倒すと大魔王が現れるのもお約束ですよね。<ラスボス

鈴藤 由愛
2008/09/28 07:57
十分戦ってましたよ。こういうシーンは難しいからほんとすごいわ。オバちゃんもかっこいい。あそこ良かったです。三角が重なったようなマーク。映像が浮かびました。
つる
2008/09/29 00:34
わあい!<十分戦ってた
ねー、本当に難しいですよね。何度挫折しかかったことか……(涙)
このメンツの中で一番男前なのは、実はオバちゃんです。
書きやすいから。

五芒星(漢字合ってるかな?)というものなんですが、小崎くんは知ってそうにないので妙な表現にしました<三角が重なったマーク
鈴藤 由愛
2008/09/29 06:58
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