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zoom RSS 足元からの危機(三十三回目)

<<   作成日時 : 2008/09/25 23:35   >>

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「昔を思い出すわね、お猿」

オカマが、槍を片手に不敵に笑う。

「ああ、鬼が島の風景が目に浮かぶよ」

オバちゃんが答えて、棍棒を握り直す。

二人とも、この状況でこの余裕っぷりなら、頼りに出来そうだ。
弱点は知らないって言ってたけど、もしかしたら問題ないんじゃないか?

「お猿、ワンちゃん。わかってるわね?」

「もちろん」

「承知」

ん?

オカマとオバちゃんは仲間同士なんだから、そういう、阿吽(あうん)の呼吸みたいなやり取りがあっても変じゃないけど……なんでタマちゃんまで確認されてるんだ?

「キジよ、一体何をする気だ?」

若桃の質問に、オカマはふっと悲しげな微笑みを浮かべる。

「恐れながら、若桃様……説明している余裕はありません。ですから、これだけお伝えします……」

オカマが、カッと目を見開いた。

「時間が来るまで、奴の攻撃からお逃げ下さい!」

ズガアッ!

その時、メガネ男……の面影のない鬼の総大将が、処刑台に向かってゴツゴツした拳を振り下ろした。

「どうわっ」

オレはその場でひっくり返る。
同時に後ろ頭を思いっきりぶつけて、意識がすっ飛びかけた。

くう〜っ……め、目の前に無数のきらめく星が……っ!

「大丈夫か?」

若桃に助け起こされてなかったら、オレは延々悶絶してたに違いない。

「あるじ。ここはもう長く持たん、降りよう」

タマちゃんに小声でささやかれ、オレは視線を移した。

……全身が凍っていくような気がした。

鬼の総大将の振り下ろした拳が、処刑台の頑丈な厚い床板を簡単に突き破って、床に刺さっていたからだ。
この野郎。全身を鎧で固めてるっていうのに、なんつー素早さとジャンプ力だ。

そのついでに見たものに、オレはさらに衝撃を食らった。
オカマもオバちゃんも、反撃に出るどころかスタコラ逃げていたのだ。

――それぞれ、反対の方向に。

な、何やっとんじゃあー!
受け止めるなり跳ね返すなり、反撃せんかー!

「あ、あいつら何してんだよ」

思わず文句を言いかけたら、

「言ったであろう、時間が来るまでとにかく逃げろと!」

タマちゃんがさえぎって吠えた。

「だから、時間って、何の時間だよ!?」

「今にわかる! あるじは黙って従えば良い!」

今に、って。
しかも「あるじ」に向かって従えって。

ひどくねえか? なあ。

うなだれているオレを、若桃が、何か言いたそうにじーっと見ていた。

「何だよ」

発言を促してやると、言いにくそうに若桃が口を開く。

「お前は、いつもこんな扱いを受けているのか?」

「まあ、だいたい……」

「そ、そうか」

あああっ、気の毒そうな顔すんなよ、おい!

「こしゃくな奴らよ! ちょこまかと虫けらのように……!」

……と、今はこんなことしてる場合じゃない。

鬼の総大将が、若桃めがけて拳を繰り出してきた。

「余が虫ならば貴様は害虫だ!」

若桃は槍で攻撃を受け流したけど……その振動で、壊れた処刑台が本格的にグラグラ揺れだしやがった。

「ぐずぐずするな! 飛び降りるぞ!」

若桃に、乱暴に腕を掴まれた。

何ぃ、と、飛び降りるだあ!?

……ああ、わかりましたよ。
こうなりゃヤケだ、どっからでも飛び降りてやるわい!

覚悟を決めて飛び降りると、そのすぐ後ろでガラガラと派手に処刑台が崩れ落ちた。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
緊張のシーンでかわす、オカマとオバちゃんの会話に連帯感を感じました。
>スタコラ
PCの前で、カックン、しました。こういうのは由愛さんの持ち味ですね。
つる
2008/09/27 00:56
オカマとオバちゃんは家来どうし、信頼の固い絆があるに違いないです。
若桃より付き合い長いですしね。
どうも私、シリアスにはなりきれない性分らしくて……。
実はこのスタコラには意味があるのです!

鈴藤 由愛
2008/09/27 08:58
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