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zoom RSS 足元からの危機(三十回目)

<<   作成日時 : 2008/09/20 22:31   >>

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オレは、槍の刃を使って縄を切ってやった。

「タマちゃん、オレだよ! あるじの顔、忘れちまったのか!?」

生きているのは確かなのに、いっこうに返事をしてくれないタマちゃんに、しつこく呼びかけていると、ふっと、床石に向けていた虚ろな目が、オレに向けられた。

「……何を言っている……あるじは死んだのだろう……鬼の兵士よ、この期におよんで悪趣味な冗談を言うのか……」

ああっ、そうか、頭巾かぶってるからオレだってわかんないのか。

「ほら、オレだよ!」

オレは頭巾を取って見せた。
それを見たタマちゃんの目に、みるみる輝きが戻ってきて……。

「……あるじいいぃぃっ!」

「タマちゃん!」

「あるじ、良くぞ無事で……!」

タマちゃんが勢い良く飛びついてくる。
はっはっは、そんなに振ったら尻尾がちぎれるぞ、タマちゃん。

「この、大馬鹿者がっ!!」

……と思ったら、いきなり怒鳴られた。

「へ?」

な、何故に?
何故ここで怒りをぶつける?

「まったく、無謀にもほどがあるぞ! 武器を持つ者に殴りかかって、勝ち目があると思ったのか? 勇気と向こう見ずは違うのだ、よく覚えておくがいい!」

だあああっ、牙むくな、牙!
文吾と同じこと言わないでくれいっ。

……仮にも「あるじ」なのに、なんでこんなにガミガミ言われるんだろ、オレ。

「何だよ〜。助けに来たっていうのに、そんな言い草ねえだろ」

「やかましいっ。死んだと聞かされ、信じざるを得なかった時の、我の気持ちを考えろ!」

――その時。

視界の端に、何かが降ってくるのがわかった。

「うおうっ!?」

とっさに槍をかざして、ソレを受け止める。
ギインッと耳障りな音がして、腕にビリビリ痛みが走った。

……剣だ。

恐ろしい。
もし行動が遅れてたら、これがオレの脳天に……。

相手は、オレと同じ服を着た、兵士だった。
無言で剣をぐぐぐっと押し込んでくる。
両手で槍をつかんで踏ん張るが……とてもじゃないが、力押しで勝てそうにねえ。

「あるじっ」

タマちゃんが飛び出して、そいつの肩にかみついた。

「ぎゃあっ!」

そいつはタマちゃんを振り落とそうともがきまくってたが、そのうち、剣を持った手に力をこめた。

こいつ、まさか、タマちゃんを切るつもりじゃ!?

――どうすりゃいいか、迷ってる暇はない。
確かオバちゃんは、素人のオレでも力任せに振り回せば大丈夫、っていうような話をしてたよな。

「させるかあ!」

槍をバットみたいに振り回すと、刃のつけ根辺りがドスッとそいつの腰に命中した。

「があっ」

そいつは崩れるように倒れこんだ。

う……肉を叩く音と、手応えがしっかり伝わってきて……正直、嫌な気持ちだ。
おまけに、目の前にはオレの攻撃で苦しんでる奴がいるし……。

オレは、頭を振った。

何言ってんだ、オレ。
そんなこと言ってちゃ生きて帰れないぞ。
鬼の方は、オレを殺すのにためらいなんてないんだろうから。

でも…………。

ちらっと目を動かすと、オカマが槍を、そしてオバちゃんが棍棒二本を使って鬼達と戦っているのが見えた。
二人とも、襲ってくる鬼達をいとも簡単になぎ倒してる。

ようするに、これって慣れの問題なのか?
敵をぶちのめしたり切りつけたり、そういうのって、回数をこなせば慣れてきて、何も気にならなくなるのか?

「死ねぇ!」

考え事してたら、別の兵士が切りかかってきた。

「おりゃあ!」

思いっきり振り下ろした槍は、棒の部分が首のつけ根辺りに当たった。

…………。

慣れて、いいのかな、こういうこと。
オレ、ただの高校生だぜ。

もし元の生活に戻れたとして、こういうことに慣れた状態で、本当に前と変わらない生活、送れんのか?

「オラオラてめえらあっち行けええぇ!!」

今は、じっくり考えて答えを出せる状況じゃない。
せめて、これ以上槍でぶん殴らなくてすむように、できるだけ追い払っておくか。

ぶんぶん槍を振り回して兵士を追い払っていると、若桃が見えた。
若桃は、ぼさっと突っ立ったまま、身動き一つしない。
オカマとオバちゃんが、その周りで必死に戦ってるのに、注意すら向けようとしない。

……ぶちっ。

オレの中で、何かが切れた。

「おいっ、何ボケッとしてんだよ。一般人だって頑張ってんだぞっ! あんた強いんだろ、なんとかしろよ!」

オレが叫ぶと……若桃は、精気のない目をのろのろとオレに向けてきた。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
緊迫する戦闘シーンの中で、小崎君がキレる気持ちがわかります。かなりテンション、あがったね、ガンバレ!
つる
2008/09/21 13:02
今回はものすごくスムーズに書き進められました。
小崎くんの一般人らしい躊躇や葛藤も書けたし。
テンション維持して頑張りまっす!
鈴藤 由愛
2008/09/21 15:37
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