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zoom RSS 足元からの危機(二十九回目)

<<   作成日時 : 2008/09/19 23:41   >>

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わああああ……っ。

処刑台に続く通路を走っていると、いきなり降り出した雨みたいに、野太い歓声が上がった。

「始まったか!」

オバちゃんが、チッと舌打ちする。

「何が?」

……本当は、黙ってようかなと思った。

だってさ、重い槍なんか持って走ってんだぞ!
しゃべったら余計疲れるじゃん。

それでも質問したのは……やっぱり、不安だったからだ。
何が起きてるかを知ってれば、それだけ不安の材料も減るってもんだろ。

「公開処刑だよ! まずはさんざん拷問にかけて、いたぶり倒すんだ!」

「げっ!」

拷問っつうと、あれか。
鞭でベシベシ叩いたり、爪をはがしたり、正座させてひざに重い石を載せたり、ひたすら口に水をダバダバ注ぎ込んだり……。

うわあああ、ターマちゃーんっ!
今行くから、今行くからなああっ!

「公開処刑は見せしめにやるものだからね。鬼達の中にいる反乱分子に、逆らったらこうなるぞ、って脅しをかけるのさ」

……ん?

オレは、オバちゃんの口ぶりに引っかかった。

「え、鬼って全員結束してるんじゃ……」

人間は、性格とか信条とか色々違っててまとまりきれないけど、鬼達の場合、地上を支配するっていう共通の目的があるんだし……。

「ハッ。どこの組織だって、一枚岩じゃないものさ」

……鬼達にも、色々あんのかな。

その時、前の方にチカッと明かりが見えた。

――出口だ!

おっしゃ、ラストスパート!

オレは、しびれた太ももに力をこめた。

うおりゃああああっ!

オレとオバちゃんが処刑台に飛び出すと、野太い歓声でいっぱいだったのが、水を打ったように、しいぃぃんと静かになった。

「な、なんだ、お前ら!」

処刑執行人らしい奴が、オレ達を見て騒ぎ出す。
だが、今のオレに、弁解やら言い訳やらごまかしやらをする余裕はない。

ぐ、ぐええ。
重い槍なんか持って全力疾走したもんだから、息が続かない……。
肺が痛い……。

だが、へたばってる場合じゃないっ!

槍を杖にして、どうにか踏ん張る。

タマちゃん……タマちゃん、どこだ!?

まず目についたのは、あちこちすり切れた黒っぽいつなぎみたいな物を着た、後ろ手に縛り上げられてるオカマ。
そしてそのそばに、見たことない奴がいた。
オレとそう年の変わらない、背が高くて引きしまった体つきの、切れ長な目の黒髪の男だ。

……こいつ、誰だ?

わからないんだったら放っておいて、さっさとタマちゃんを探せば良いのに、オレはそいつをじっと見つめたまま、動けなかった。
前にどこかで見たような、懐かしいような、そんな気がして……。

「若桃様っ!」

そう言ってオバちゃんがそいつに駆け寄ったので、オレは槍を落としそうになった。

何ぃ、こいつが若桃だあ!?
どう見たって、オレと同じぐらいの年にしか見えんぞっ。
そりゃ、声は若いと思ってたが……。

桃太郎、ホントにいつ子供作ったんだ?

……って、どうだっていいわい!
タマちゃんはどこだ、タマちゃん!

探していると、四つ足を縛られたタマちゃんが、床に転がされているのを見つけた。

あちこち傷付いて血のにじんだ白い毛皮。
虚ろに床石を見つめる瞳……。

「タマちゃんっ!」

オレは駆け寄ると、覆いかぶさるようにしてタマちゃんを揺すった。
温もりのある白い毛並みの感触に、涙がにじんでくる。

「タマちゃん、助けに来たぜっ、しっかりしろよ!」

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
タマちゃん!オザキがショボくて、助けに来るのが遅れてゴメンねぇ。こいつめ、こいつめ。
・・・ってくらい、ホッとしました(笑)
昔話って結局、おじいさんとおばあさんが子供作る話なのよねぇ、と改めて思う。
若桃、強そうですね。戦力になりそう。
ia.
2008/09/20 01:37
小崎くん、土下座してタマちゃんに謝っときなさい。

そういえば、昔話は子供のいない老夫婦がよく出てきますわね。
そのほうがウケが良かったのかしら。

若桃は……強いだろうけど、今心が折れてるだろうなあ。
鈴藤 由愛
2008/09/20 06:49
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