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zoom RSS 足元からの危機(ニ十七回目)

<<   作成日時 : 2008/09/16 23:59   >>

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死体置き場を背にして進んで行くと、その先が二手に分かれていた。

「ここは……右だね」

悩む前に、オバちゃんが断言した。

「詳しいんだな」

「私は、刑罰を受けるまでは長いこと地下で生活してたんだよ? どこを通りゃどこへ出るかぐらい、把握してるよ」

あ、なるほど。

「で、これからどこに行くんだ?」

「兵士の詰め所さ。動向を探っておきたいし、もしかしたら情報が得られるかもしれないからね」

「……兵士がいっぱいいる所に行くのかぁ」

正直、気が重い。

オレ、演技力ないし、ごまかしきれるほど肝もすわってねぇもん。
自信ないんだよな、実は。

「なんだ、不安かい」

「だって、それだけボロが出る可能性高くなるじゃん」

ボロが出たら、もうオシマイだ。
そこからどんどんボケツ掘っていく自分の姿が、目に浮かぶ……。

「頑張りな。私もできるだけ助け舟出してやるからさ」

どんよりしてたら、背中をポンと叩かれた。

「あ、新入り! お前らまだいたのか!」

ぎくっ!

そこへいきなり声をかけられて、オレは飛びあがりそうになった。
見ると、通路の向こうに同じ服装の奴がいて、こっちに走ってくるところだった。

反射的に逃げ出そうとして、オレはがしっとオバちゃんに腕をつかまれた。

「しっかりしな、逃げてどうすんだい。目立つような行動を取るんじゃないよ」

小声でオバちゃんに怒られた。

うう……だって、足が勝手にぃ……。

「お前ら、伝令聞いてなかったのか? 早くしろよ、他の奴らは全員移動したぞ」

「すいません、死体置き場に行っていたので……」

オバちゃんが、低い声で答える。
声だけ聞くと、別人みたいだ。

「ああ、あそこにいたのか。じゃあ聞いてないよな。陛下直々のご命令だったんだよ」

「陛下っ!?」

陛下って、若桃のこと……だよな、確か。
他にそう呼ばれてる奴っていないと思うし。

でも、変だな。

若桃は確か、メガネ男……鬼の首領に裏切られて、剣を突き付けられてたよな。
無事に開放されて、なおかつ『陛下』の地位を取り上げられてないなんて、考えにくい。
それがどうして直々に命令なんてできるんだ?

「おい、どうした?」

考え込んでいたら、そいつがオレをじっと見つめてきた。

ヤバイ、もしかして怪しまれてる!?

「いえ……こいつ、ちょっと寝不足らしくて、さっきからこんな調子なんです。それより、伝達された内容というのは?」

オバちゃん、ナイスフォロー!

「公開処刑場に集まれってさ。公開処刑なんて久々だろ、早く見たいよな」

……え?

頭巾に覆われた顔の、露出している目の部分。
そこから見える目が、ギラギラと怖い光り方をしていた。

「誰が処刑されるのです?」

「決まってるだろ、あいつだよ」

あいつ……?

「今日はいい日だよなあ、あのいけすかない人間を、やっと排除できるんだから。利用するためとはいえ、人間ごときを上役にして崇めるなんて屈辱、もうしたくないぜ。しかも桃太郎の息子なんざ担ぎ上げなきゃいけないなんて、毎日が屈辱だったぜ。あいつには、せいぜい醜態を見せた挙句に死んでもらいたいな」

ここまで言われたら、オレにもわかった。

あいつって、若桃のことだ!

……あれ? でも、さっきは『陛下』って言ってなかったか?

「そうそう、あいつの配下のキジと、侵入してきたとかいう馬鹿な神犬の末裔も一緒に公開処刑だとさ。いやあ、スカッとしそうだぜ」

そいつは、ゲラゲラと楽しそうに笑い出した。

――頭巾をかぶっていて、良かった。
必死に歯を食いしばっているのが、隠れるから。

目の前のこいつを、ぶん殴ってやりたい。
公開処刑を……タマちゃんが殺されるのを楽しみにしているこいつを、今すぐぶん殴ってやりたい。
謝っても土下座されても泣かれても、そこから十発は余計に殴ってやる。

黙れ。笑うな。
それ以上タマちゃんを侮辱すんな。
タマちゃんは馬鹿なんかじゃない。
オレが行くって言ったから、お供としてついて来てくれたんだ。

後ろに隠した右手を、ぐうううっと力を入れて握りしめる。

「じゃあ、確かに連絡したからな。早く移動しろよ、良い場所がなくなっちまうぞ」

完全に浮かれた調子でそう言うと、そいつは足取りも軽く去っていった。

――だんッ!

そいつの姿が見えなくなってから、オレは壁を思いっきり叩いた。
痛いだけで、ちっとも胸のもやもやが消えない。

「くそったれ……くそっ……くそ……ッ……」

頭を壁に押しつける。
ぐいぐい、すり切れそうなほど押しつける。

消しゴムみたいにこすりつけて、このやりきれない気持ちと怒りを削り落とせたら、どんなに良いだろう。

「落ちつきな。今ここで取り乱したら、それこそ命取りだよ。助けたいって思うなら、冷静になりな」

そう言うオバちゃんの声だって、震えてる。
オバちゃんだって、大切な主君と同僚が殺されるってことなんだから、辛いのは一緒なのに……オレとは違って、必死に感情を押さえこんでる。

「オバちゃん、あいつの言ってた陛下って誰のことなんだ? 若桃のことか?」

オレは、気持ちを切り替えるために質問をした。
何とか声は出せたけど、まだ顔を上げられない。

まだ、何かの拍子に大声を上げそうだったから。

「あいつらにとっての『陛下』ってのは、鬼達の首領のことだよ」

吐き捨てるような、オバちゃんの返事。

それを聞いて、オレは悟った。

……この地下帝国には、若桃の居場所なんて、本当になかったんだ。
本人だけが気づかない、うわべだけの信頼関係。
利用するために築かれた、偽物の絆。

キジと、このオバちゃんだけが、あいつにとって唯一の拠り所だったんだ。
最後の砦になり得る所だったんだ。
なのに、あいつはそのことに気付かなかった。
鬼の言葉にだまされて、唯一の拠り所を自分でつぶしてしまったんだ。

――馬鹿野郎!

「考えてるひまはない、急ぐよ!」

オレは、走り出したオバちゃんの後ろを追いかけた。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
うーん。この2人、熱いわー。
そう、急いで!そして、鬼たちをバッタバッタとやっつけておやり!
つる
2008/09/17 01:49
いよいよ山場に差し掛かってまいりました!
熱い展開にするぞー叫ぶぞー暴れるぞー!
……実は「うわあああと一分で明日になっちまうだよー!」って急いで書き上げました。えへ。
鈴藤 由愛
2008/09/17 07:59
バイオレンスな展開になってきましたね。
私も気持が上がってきました!
行け、オザキ!仲間を救うんだ!
……だ、大丈夫かなぁ?
ia.
2008/09/17 23:08
男が主人公なんだし、やっぱり暴れないと終われないよねぇ、ということで、いよいよ大暴れな展開にしてみました。
心強い味方(オバちゃん)もいるから、大丈夫です!
ピンチに見舞われるだろうけど、大丈夫!

オザキック、炸裂ッ!

…………寒っ!(自分で言っといて)
鈴藤 由愛
2008/09/18 00:09
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