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zoom RSS 足元からの危機(二十五回目)

<<   作成日時 : 2008/09/14 23:00   >>

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カツン、カツン、カツン……。

靴音が、だんだん近付いてくる。

「あのガキ、くたばったかな」

「さすがに死んだんじゃないか? さっさと片付けよう」

やって来るのは男二人らしい。

ふっ、お二人さんよ、悪いがオレは生きてるぜ。

「あーあ、何度やっても気の滅入る仕事だな」

「全くだ、やっと役目をもらえたと思ったら、死体を捨てる仕事なんてな」

「おかげで飯がまずくてしょうがねえよ」

「肉は当分食いたくないな」

こいつら、やる気がイマイチなんだな。
ぺちゃくちゃ雑談してるもん。

……弱い奴だとありがたいんだけどな。

オレとオバちゃんは、お互いを見てうなずくと、それぞれの行動に開始した。

オバちゃんは忍び足で扉に近付き、ぺたりと両側の壁に背中をつける。
オレは「横向きに転がして置いてった」というオバちゃんの話を元に、横向きに寝転がって息を殺す。

ようするに、死んだフリだ。

石の上に寝転がるのって、痛いんだな……おまけに冷たいし。
耐えろ、オレ。
全ては、ここに来る兵士の制服を奪い取るためだ。

「兵士の制服を奪い取ってそいつらになりすます」というオレのアイディアを、オバちゃんは「制服を奪うまでは上手くいくだろうけど……」と言いながらも、具体的な作戦を練ってくれた。

まず、オレは死んだフリをする。
死体を捨てるために来た奴らだったら、オレが死んでるとなれば、運び出す作業のために入って来る。
奴らが入って来たら、扉側に身を隠していたオバちゃんは扉を閉めて、奴らを攻撃して気絶させて、それから制服をはぐ、っていう寸法だ。

しかし、死体役を演じる日が来るとわかってたら、オレ、演劇部に入って腕磨いたのにな……。

……なんて言ってもしょうがないか。

ガチャガチャと鍵をいじる音がして、そのうち、ガタン、と扉が開く音がした。

「おーい、ガキんちょ、死んでるかー?」

オレは「ガキんちょ」呼ばわりされるほど子供じゃないっつーに。
高校生だぞ高校生。

……いやいやいかん、大人しく死んだフリしないと。

「死んでたら返事しろー」

「バーカ、死体が返事するかよ」

「引っかけだ、引っかけ」

だから、そんなのに引っかかるほど子供じゃねえっつうの……。

「……死んでるみたいだな」

「ああ」

「じゃ、作業に移りますか」

靴音がだんだん近付いてくる。
もう少し、もう少し……。

ガンッ!

扉を乱暴に閉める音が、オレの鼓膜を突いた。

頼むぜ、オバちゃんっ!

「な、何だっ!?」

「でえあっ!」

気迫のこもったオバちゃんの声のすぐ後、ぶうんっ、とオレの頭上を何かが飛んで行った。
目を開けて見ると、

「がっ」

兵士の一人が、壁にぶち当たってずるずると床に伸びるところだった。

……なんだ。
兵士っていうからマッチョな奴を想像してたのに、案外普通の人間と変わらない体つきだな。
さっきの会話の感じからいくと、どうも下っ端らしいし……そのせいかもな。
ってことは、今までに会ったあのマッチョな奴らは、ひょっとしてエリートなんだろうか。

「ンの野郎っ!」

残ったもう一人が、腰にぶら下げていた棍棒みたいなものをつかむ。
そいつで攻撃するつもりなんだろう。

「ハアッ!」

ただ、オバちゃんの手刀が、そいつの首に振り落とされる方がずっと速かった。
そいつは床に叩き付けられ、そのまま動かなくなった。
手から棍棒みたいなものが転がって、カランカランと音を立てる。

……これで、二人とも片付いたわけだが……。

「……し、死んでねえか?」

ちょっと怖くなっておそるおそる聞いてみると、オバちゃんは首を横に振った。

「いいや。言ったろ、気絶させるだけだって。服が欲しいだけだからね、命までは取らないよ」

「オバちゃん、すげえな」

オレの言葉には、感嘆も感動もこもってない。
実にぎこちなーく笑いながらの台詞だ。

だって、本音を言うとちょっと怖いなーと思ったから。

「私は鬼が島で戦ったんだよ。一人や二人、わけもないさ」

オバちゃんは不敵な笑みを浮かべつつ、拳を突き出して見せる。

「ほら、ぼーっと見てないで、残ってる奴から服を脱がしな」

「は、はいぃっ!」

……オレ、オバちゃんだけは怒らせないようにしようっと……。

気絶してる兵士から制服をはぎ取りにかかってるオバちゃんの後ろ姿を見ながら、密かに誓った。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
うん、うまくいってよかった。現実にもいますよ、味方につけたら心強いけど、敵にまわしたくない奴。
つる
2008/09/16 00:48
何とか上手く行きました。
オバちゃんがいてくれたからですねハイ。
私は、そういう人は遠くからそっと観察することにしています。<敵にまわしたくない奴
鈴藤 由愛
2008/09/16 07:55
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