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zoom RSS 霊界探索之十八(最終話)

<<   作成日時 : 2008/09/01 23:46   >>

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……よし。
ここまで来たら、もがこうが何しようが逃げられないんだから、腹を決めなきゃ。

「ミチルさん」

決意を固めてると、カラスが私の顔を見つめた。

「何よ」

「セーブポイントに戻りたい、ですか?」

…………。

「何よアンタ、いつからロープレやるようになったの!?」

カラスがそんな事言うなんて、ビックリだわ。
思わず思考止まっちゃったじゃないの!

「いや、ロープレって何かはわからないですけど、この言葉、大事な曲面にふさわしい言葉なんですよね?」

「ま……まあね」

間違いではないわよね、うん。
正しいとも言えない気もするけど。

……あ、大事な事忘れてた。

「閻魔様、助けてくれてありがと」

閻魔様がいなかったら、ナツメちゃんのお母さんを見つけ出せなかっただろうし、あの塊をどうにかなんて出来なかったもんね。

「い、いや、別に……」

はっはっは、顔赤いよ閻魔様。
まだまだ若造だねえ。

「……そ、そうだ。俺も見送りに行ってやろう」

閻魔様が、赤い顔で咳ばらいをした。

「ええ? 仕事は?」

閻魔様の仕事って、誰かが代われるものじゃないんだし、早く戻った方がいいんじゃ……。

「ああ、もうしばらくはごまかせ……」

「閻魔様ー!」

その時、ずどどどどど……っと地響きを立てて、大勢の男がこっちに向かって突っ走って来た。
全員同じ服で……って、顔や体つきまで一緒!?
パッと見、クローン大襲来っていうタイトルが似合いそうな光景だ。

「げっ」

それを見た閻魔様が、露骨に嫌そうな顔をする。

「閻魔様、職務に戻っていただきますっ」

走って来たクローン達(?)は、同じ声で、びしっとそろえて発言した。

な、なんか迫力あるぅ。

「も、もう少し良いだろう」

閻魔様、腰が引けてるわよ。

「何をおっしゃいますか! 約束の時間をとっくに過ぎておりますよ!」

言うなり、閻魔様を胴上げよろしく全員で持ち上げると、クローン達はわーっと御殿の中に走って行った。

……この状況、黙って見送るしかないじゃん、ねえ?

「……あの人達、何?」

「御殿で働いている者達です」

ああ、霊界に抱いてた、神聖で厳かなイメージが、ガラガラ音を立てて壊れていくわ……。

「では、行きましょう」

カラスの後に続いて、私は歩き出す。

……もう、こんなことをするのも最後なんだ。

「ねえねえ、地獄ってどんなトコ?」

歩きながら、知りたかったことをカラスに聞いてみる。

「う〜ん……行ったことないから、詳しくは知らないです」

まあねえ、行ったら戻って来れないんだろうし。

「でも、ミチルさんなら大丈夫じゃないですか。針山で針に刺さっても平気そうだし」

「おい」

私はサイボーグかいっ!

「あ、あのさ、血の池地獄ってあるじゃない。あれって吸血鬼が見たら喜びそうだね」

「吸血鬼は地獄に来ないと思いますよ」

「あ、そっか」

そんな具合で、他愛もない話をしながら歩くうち、私達は錆びた鉄の門の前に到着した。

「ここ?」

「はい、ここです」

うーん、中をちょっとだけ見てみようかな。

開けようとしたら、ギイイイ……と勝手に門が開いた。
誰か出てくるのかと思ってたら……いきなり、物凄い勢いで中に吸い込まれそうになって、私は慌てて門にしがみついた。

「ちょっ、や、きゃああああ〜〜っ!!」

今ならわかる!
掃除機に吸い込まれるゴミ達の気持ちが!
痛いほど、よくわかる!

「早く入って下さい」

カラスが、門にかかっていた私の手を足の爪で蹴飛ばす。

「あいたっ」

チクッと痛かったので、私は、パッと手を離した。

……どうなるか、決まってるわよね。

私は、掃除機……じゃない、門の中にスポーンと吸い込まれた。

「ミチルさん、がんばって下さいね〜」

「カぁラスぅぅぅ〜っ!」

おのれ、覚えてろ〜っ!
地獄の底から呪ってやるううーっ!





……気がつくと、私は花畑の中にいた。

ここは……地獄?

あれ……地獄って案外きれいな所なのね。
てっきり、岩だらけの暗ーい場所だと思ってたのに。

「ああ、いたいた!」

立ち尽くしてると、女の人が駆け寄って来た。
黒髪をきれいに結い上げて、淡い色の着物の上に、羽衣っていうのかな、薄布を巻き付けてる。

「早く行きましょ。いろいろ説明しなきゃ」

女の人は、私の腕を取って、ぐいぐい引っ張って行く。

「あの……どこへ?」

わけわかんないまま引っ張られて歩いてると、

「何言ってるの〜、あなた、私の後任になったんでしょ!」

女の人がとんでもない事を言い出した。

「へ?」

誰が?
何の後任?

「あら、聞いてないの? 幼くして死んだ子供達の魂を、生まれ変わる日まで見守る役目よ。私がそろそろ引退するから、後を任せられる人を探しておいてって頼んでたのよ〜」

な、な、な、何ですとー!?
だーれもそんなこと言ってなかったわよ!

「先代の閻魔様直々のご推薦なんて、あなたが初めてだわ。頑張ってね」

にこ、と笑ってポンと肩を叩かれた。

あ……だからカラスの奴、「がんばって下さいね」なんて言ったのか……。

しかし、誰だろう。先代の閻魔様ってのは。

「あの、先代の閻魔様って……?」

「今の閻魔様のお父様よ。とっても素敵な方なの。あなた、一体どこで知り合ったの?」

「え? えー……?」

閻魔様のお父さん……誰だあ?
それっぽい人になんて、会ったかなあ?

……わかんない……。

「で、その役目って、大変なんですか?」

「そりゃあもう! でもねえ、子供達の笑顔見てると、とってもやりがいを感じるわよぉ」

ずんずん突き進む先には、やがて一本の大きな木が現れて。
その下で、小さな子供達がキャーキャー遊び回っていて。
その子供達の中に、いつか見た面影のある女の子が二人いて。

……まあ、いいか。

私は、その役目とやらを引き受けてやろう、と思った。






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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
おいおい、掃除機って(笑)地獄といってもお仕事だったんですね。ってことは閻魔様とその後ロマンスも?
由愛さん、ミチルちゃん、お疲れさま。カラス、好きだったよ〜!もちろん閻魔様も。
子供や動物の痛い話は苦手なので、爽やかで楽しい仕上がりのこの作品には、とっても楽しませてもらいました。
ia.
2008/09/02 01:55
ありがとうございます〜。
なんだかんだで、当初考えていたのとは違った話になりました。
戦う予定もなかったし、ミチルが地獄へ向かいながらカラスとしゃべるシーンで終わる予定でした。
仕事をさせようと決意したのは、愛着ゆえです。
地獄になんて落とせません。
作者としては、ミチルが行ったのは極楽でも地獄でもない第三の場所的なモンだと思ってます。
閻魔様とのロマンスはご想像に任せます(にや)

鈴藤 由愛
2008/09/02 08:33
お疲れ様でした。
楽しませていただきましたよ♪
閻魔様代替わりしたんですね〜
閻魔様もいて、保母さんのようなお仕事だし
なんかちょっとミチルちゃんのこれから
楽しみですね。
その後とか書きません?(ウソです)

2008/09/02 18:39
ありがとうございます〜。
あ! 誤解させるような描写してる自分!
違います、今の閻魔様のお父さんのことですっ、まだ代替わりしてませんっ!
若いんだしまだまだ続けてもらわなきゃ、ということで、一部書き換えておきました。
本当にすいません!(土下座)

その後の話は……まあ、気が向いたらということで。
鈴藤 由愛
2008/09/02 23:14
了解です!
読みが浅くてこちらこそごめんなさい。
これでよくわかりました。

2008/09/03 08:18
そうだったのかー。
前コメで、当初の予定と違ったことを知りました。もっと短かったんだ。そうかあ。
ミチルはもちろん、登場人物の皆に好感が持てたから最後まで楽しめました。
「第三の場所的なモン」ていうのがいいですね。
連載、お疲れさま!
つる
2008/09/03 23:45
ありがとうございます。
はいー。いざ書き始めたらキャラに愛着が沸いて、過去の設定とかくっつき始めて長くなったんですよー。
最初の裁定を無視して極楽に行かせるわけにもいかないし、だからって地獄には絶対やりたくない!という作者のわがままです。えへ。<第三の場所的なモン
鈴藤 由愛
2008/09/04 00:17
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