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zoom RSS 霊界探索之八

<<   作成日時 : 2008/08/21 23:51   >>

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……ヒマだ。
途方もなく、ヒマだ。

私は、何度目かのあくびをした。

今いるのは、御殿の一角にある部屋。
中には、私の身長ぐらいもある大きな鏡があるだけで、がらんとしてる。
丸型で、金と赤の装飾に縁取られた、足つきの鏡だ。
カラスの話だと、この鏡を通り抜ければ、現世に行けるっらしいんだけど……にしてもカラス、遅い!

カラスの奴、私達をこの部屋まで連れて来ると、「閻魔様と話をしてきます」ってどっかに行っちゃったのだ。

まーったく、話ならこの部屋に来る前に済ませておきなさいっての。

「……ナツメちゃん、遊ぼっか」

……こくん。

ナツメちゃんがうなずいてくれたので、私は膝をついて目線を同じにした。

「えーと、おちゃらかほい、って知ってる?」

ふるふる。

ナツメちゃんが首を横に振る。

……知らないか、そうか。

「じゃあ教えてあげる。あのね、まずは手をこうして」

私は、細い手首をそっと握った。

何気ない風を装いつつ、様子をうかがってみる。

……怖がってはいない。

よし、続けよう。

「せっせっせーの、よいよいよい、って言いながら、こうやるの」

握った手首を上下に軽く振って、交差させて、トントントン。

「……迷ったのかね?」

う!?

いきなり男の人の声がして、私は顔を上げた。

「失礼。普段は誰もいない部屋なのでね、気になって見に来たんだ」

見ると、白髪交じりの黒髪をオールバックにした、灰色の浴衣を着た四十代ぐらいのおじ様が、部屋に入って来るところだった。

うーん、渋い。
大人の魅力っていうものを感じるわ。

でも誰だろう、この人。
ここで働いてるのかな?

「あ、いえ……迷ったわけじゃなくて、その、待ってるところなんです」

私は、ナツメちゃんの手をそっと離して立ち上がった。

「待っている?」

おじ様があごに手をかける。

「はい。今から、この子のお母さんに会いに行くところなんです。私は、付き添いで……」

ホントはね、「さっさと地獄へ行け!」って閻魔様に言われたんだけどね。
「見届けるまでぜってぇ行かん!」ってごり押しして、付き添わせてもらうことになったの。
だいいち、ナツメちゃん、私から離れなかったしね。

「ほう……」

おじ様が、ナツメちゃんに視線を移す。
びっくりしたのか、ナツメちゃんは私の後ろに隠れてしまった。

「あ、そうだ。聞いて下さいよ! 閻魔様ったらひどいんですよ! こんな小さい子を、怨霊になるからって問答無用で消滅させようとしたんですよ! あんまりだと思いませんっ?」

私が、閻魔様のしたことを暴露すると、

「確かに、無慈悲なことだ」

おじ様は、静かにうなずいてくれた。

なんて話のわかる人だ!
感動しちゃったよ、私。

「安心しなさい。おじさんは味方だからね」

にこ、とナツメちゃんに微笑むと、おじ様は部屋を出て行った。

はあ……素敵な人……。
生きてるうちに、あんな人に出会いたかったわ……。

「お待たせしました〜っ」

しんみりとウットリが混じった繊細な気持ちを、慌ただしい羽音がぶち壊してくれた。

カ、カラスめ〜!
もう少し感傷にひたらせてよ!

「もうっ、遅いよ」

思わず不機嫌になる私。
……ちと大人げない?

「話が長引いたんです。これでも急いで来たんですからっ」

カラスが鏡の前に舞い降りて、むにゃむにゃと呪文らしいことを呟く。
途端、鏡が淡く光り始めた。

「さあ、行きますよ。鏡の中に入って下さい」

「入れって、どうやって?」

「そのままの意味ですよ。鏡に向かって進んで下さい」

言うなり、カラスは鏡に向かって羽ばたいて行った。
後ろ姿が、溶け込むようにして、鏡の中に消える。

い、痛かったり熱かったりしないのかしら……。

手を入れてみると、鏡は水面のように私の手をあっさり受け入れた。

痛いとか熱いとかは、ないみたい……。

「……行こっか」

私は、ナツメちゃんの手を引いて、鏡に向かって前進した。

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コメント(4件)

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なんか想像できます。
よく映画とかでありますよね。
鏡の中からす〜って出入りする感じ。
鏡がくにょ〜ってゆがんで
って言うか水面みたいにゆら〜って
ってここでなんで私が解説を(笑)

やっぱりやっぱりごり押しして着いてきちゃったんだ(爆)
お母さんとの対面が気になります。
さ〜次へGO!

2008/08/22 08:38
感想ありがとうございます。

まさしく! です<鏡
ナイスな解説サンキュです。

もはやミチルにとって閻魔様は怖いものじゃなくなってますね。
中ボスからちょっと強いザコクラスになった感じ。
頑張れミチル、閻魔様を倒す日は近い!(え)

次は……明日書きます(ぱたり)

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤 由愛
2008/08/22 23:33
いよいよ鏡の向こうの現世に行くのね。カラスもついてくるのか。
渋いおじ様が気になります。も、もしかして?
つる
2008/08/23 00:58
感想ありがとうございます。

ええ、カラスも一緒です。
責任者になった以上、とても待ってらんないでしょうから。
……今、「カラスと一緒に帰りましょ〜」っていう童謡が頭をよぎったのは内緒です。

おじ様の正体は……んふふ。
当たりだといいですねえ。

よろしければ、またおいで下さいませ。

鈴藤 由愛
2008/08/23 07:36
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