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zoom RSS 霊界探索之七

<<   作成日時 : 2008/08/20 22:18   >>

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「連れて行け」

閻魔様が命令すると、両脇の奴らが、ぐいっとナツメちゃんを引っ張って連れて行こうとした。

ナツメちゃんが、ちらりと私を振り返る。

――不安そうな、怯えた目。

私の心が、ズキリと痛む。

ねえ、自分。
このまま黙ってサヨナラできるの?
本当にできるの?
後悔しない?

……ぜってぇ無理だ!

「ちょっと待ったあ!」

気付くと私は、大声を張り上げていた。
ナツメちゃんを両脇からつかんでいる奴らが、足を止める。

「何だ」

黙ってろ、とばかり、じろりと閻魔様に見られた。

ううう……負けてたまるかいっ。

「おかしいでしょ、それ! 納得いかないわ」

「ミ、ミチルさん……」

カラスが翼で顔を覆って「あっちゃ〜」って言ってるけど、気にするもんか!

「お前に、口をはさむ権限はないぞ」

閻魔様、あきれ顔。

「しかも自分のではなく、他人の申し渡しに文句をつけるとは。お前は馬鹿か、それとも阿呆か」

「だってナツメちゃん、自業自得で死んだわけじゃないでしょ? なのに、どうして極楽に行けないの? そんなのってあんまりじゃない!」

はあ……。

閻魔様がため息をついて、頭をかいた。

「……現世に、怨みや悔いを残して死んだ魂は、いずれ怨霊になってさまようのだ。怨霊になったが最後、消滅するまで厄災をばらまき続けるぞ」

怨みや、悔い……。

私は、ナツメちゃんを見つめた。

捨てられた子犬みたいに怯えて、震えてる。

やせ過ぎな体。
腕や足のアザ。
ヤケドの跡。

――怨みは、あるのかもしれない。
ない、なんて考える方が、きっとどうかしてる。

でも……でも!

「じゃあ、最後に一つだけお願いごとを聞いてあげたって、いいじゃない!」

私の口から、勝手にそんな言葉が飛び出した。

おお。自分でもビックリだ。
でもナイスアイディア。

「な、何ぃっ?」

閻魔様は目を丸くしてるけど。

「いいじゃない、一つぐらい! それとも、そんなささやかなことすら許せないほど、閻魔様っていうのはせっまーい心の持ち主なわけっ? それとも無理なわけっ? あ、さてはできないんだー。できないんでしょー」

「ああもうっ、くそやかましい女だっ!」

閻魔様がイライラした口調で叫んだ。

「いいだろう、いいだろう、いいだろう! そこの小娘の願いを一つだけ聞いてやる。ただし、叶えられないものもあるからなっ」

腕を離されたナツメちゃんが、私の所に走って来て、ぎゅっとしがみついた。
私は、その頭をなでなで。

うんうん、怖かったねえ。

「ナツメちゃん、何かお願いごと、ある?」

ナツメちゃんは、私の太ももに顔を押し付けたまま、なかなか言おうとしない。

「遠慮しなくていいのよ、ほら、何でもいいから言ってみなよ」

……私、また余計なことしたのかな。
実はありがた迷惑なのかな……。

「よ、よろしいんですかあ、閻魔様〜……お父様に知られたら絶対タダじゃ済みませんよ〜……」

カラスめ。
人が大事な話をしてるそばで、情けない声出してんじゃないわよ。

「問題ない」

閻魔様がきっぱり断定した。

ひょっとして、責任は俺が持つから、とかそういうこと?

…………。
ごめんなさい、閻魔様。
心のせまい男だなんて言っちゃって。

……と思ってたら。

「カラス、この一件はお前に任せる。もし何かあったら、責任を取ってもらうからな!」

「そっ、そんなあ〜っ」

……前言撤回。
閻魔様、そんなに立派な奴じゃなさそうだ。

「……い」

その時、かすかに、ナツメちゃんが何かを言った。

「ん?」

耳をすませてみると、

「……あいたい」

ナツメちゃんは、確かにそう言った。

「誰に会いたい?」

「……おかあさん」

私は、ハッとした。

そうだ。
ナツメちゃんは、まだ小さいんだ。
お母さんを恋しがって当たり前なんだ。

……胸が、苦しくなった。

「ナツメ……おかあさんに、あいたい」

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
うーん、この二代目の閻魔様め。カッコいいと思わせて、なにげに食わせ者だわ。
ミチル、よく言った!
ナツメはお母さんに逢えるのか?どんなお母さんなんだろ。
つる
2008/08/21 00:14
お父さん閻魔さまの代わりに
今日は裁きをつけているのかしら?
それにしてもかっこいいのは姿だけ?
カラスも迷惑な話だよねぇ。
ナツメちゃんはお母さんに会いたいのか〜
そうだよね。まだ小さいんだもんね。
あって何か言いたいのかしら?

それにしても偉いぞ!ミチル!
あんたならたとえ地獄に落ちても
強く生きていけいるよ(笑)

2008/08/21 08:49
感想ありがとうございます。

つる様>閻魔様は若造ですからねえ。ケツが青いのでしょうなあ(え)
「自業自得で死んだわけじゃないでしょ」は絶対言わせたかったので、書けて満足です。

舞様>おし、閻魔様はお父様に後々叱ってもらいましょう。
私もそう思います。ミチルなら血の池地獄も針山も動じなさそう。<強く生きて行ける

よろしければ、またおいで下さいませ。

鈴藤 由愛
2008/08/21 10:02
いつの間にかたくさん更新されてる♪
「ちょっと待ったあ!」ミチルちゃん、相手が中ボス程度と見て、大きく出ましたね(笑)
若閻魔さま、パパにお仕置きされるのかな?カラスも災難ですねぇ。
ia.
2008/08/21 21:56
感想ありがとうございます。

「うおー書けねーもう書けねー」とか言いつつ、今のところ毎日更新してます。

中ボスくらいなら力押しで何とかなりますよね。
ストーリー後半にさしかかったあたりだとだんだん無理出てきますが。(何の話だ)
閻魔様には覚悟しててもらいましょう。むふ。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤 由愛
2008/08/21 23:28
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